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プレゼントの選び方
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しおりを挟む「……という感じで、上手く行ってるみたい」
「それはよかったです」
笑みを浮かべつつ、お碗を手渡してくれる佐藤君。今夜のお味噌汁はしじみらしい。
「うん、本当に。四谷さん、前よりしあわせそうだし」
「上手く行ってないとか言われたら、心配になります」
「心配?」
「だって、そしたら瑞希さんに目が行くかもしれないじゃないですか」
「……」
彼はどうやら本気で心配しているらしい。恋とは、恐ろしいものだなと思う。
「瑞希さん。年末年始は、どんなふうに過ごされるんですか?」
ごはんを咀嚼してから、口を開く。
「うーん、ここ数年はおうちでまったりかな。初売りには行くけど……」
ふいに、僕は気づいてしまった。お母さんを亡くした佐藤君にとって、今年の年末は、家族のいない初めての年末となるのだと。
もし家族と過ごしたいと彼が望むのなら、兄の家に行くという手もあるにはあるが、兄は佐藤君のお母さんの代わりにはなれない。誰も、そのひとの代わりにはなれない。
「瑞希さん?」
「あ……、ごめん。何?」
「どうかしましたか?」
「ううん、何でもないよ」
代わりには、なれないけれど。彼が寂しいときや悲しいときには、側にいられたらいいなと思う。
「俺、おせちつくってもいいですか?」
「え、おせち? 作れるの?」
彼の女子力の高さには幾度となく驚かされてきたが、おせちに至っては、女子力というよりもむしろ。
「主婦……」
「違いますって」
そう言って笑う佐藤君。
「これまでは母と一緒につくってたので、ひとりで作るのは初めてです。だからちゃんと完成できるかどうかは分からないんですけど」
忘れたくないんです、と彼は言った。切なく、美しい表情で。
「覚えていたいんです、ずっと」
僕は彼の頬へと手を伸ばした。理由らしい理由があったわけではない。ただ、触れたくなったのだ。
僕の手を包み込むようにして、佐藤君が手を重ねる。その手首には、僕がクリスマスに贈った時計が嵌められていて。女性にアクセサリーを贈る男性の気持ちが、少しだけ分かったような気がした。
「佐藤君」
「はい」
「今度、一緒に旅行に行きませんか」
「え……」
「えっと、無理はしなくていいから。忙しくなければだけど」
「行きます」
「ほんと?」
「村上さんからそういうお誘いがあるとは思ってなかったので……。ちょっと驚きました」
「ああ、今日四谷さんと話してて」
四谷さんの名前を出した途端、彼の表情が固くなる。
「瑞希さん……」
「何?」
「後で、お仕置きします」
「何でっ?」
食後に寝室に連れ込まれ、佐藤君の謎のお仕置きを受けた僕は、そのまま眠りに就いてしまった。
夢の中で、僕は佐藤君と旅行に出かけていた。きらきらと輝く海が、とても綺麗で。佐藤君、と思わず呟くと。
耳元で、くすっと笑う声を聞いたような気がした。
end
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