平凡以下な僕は幼馴染を守るために、初級魔術だけでも頑張っていきます。

気ままに

文字の大きさ
5 / 29
序章ー人生の分岐点

第3話「アイリ=ノイルロット」

しおりを挟む
「オーデンス、今日も修行に来ないわけ?」

その少女の名はアイリ=ノイルロットだった。
今最も会いたくない人が来てしまった。

「なんだ、悪いのか?今お腹が痛いから後にしてくれないか?」

僕はその場でとっさに思い付いた嘘を言った。
だが、

「悪いわよ、あとそれ噓でしょどうせ」

長く一緒にいるだけはあるな。
すぐに見破られる。
いや多分本当にお腹が痛くても信じてくれないだろうけど。

「ほう、悪いのか」

「ええ、悪いわ。せっかく英雄養成学校に通えるから張り切って修行しようと思ったのにオーデンス来ないんだもん。とってもつまんないわ!」

そんな理由かよ。
英雄養成学校さん、本当にこんなやつでいいんですか?
今ならまだ間に合いますよ!

「つまんないって…。はあ、いいから今は一人にしてくれ」

アイリといるとなぜか胸の中のモヤモヤが強くなる。
本当にどうしてしまったんだ僕。

「いやよ!一緒に修行するわよ!あと私まだ祝福の言葉もらってないんだけど!まだオーデンスだけには祝ってもらえてないのよ!」

祝福なんてできるわけないだろこんな状態で。
やばい、これ以上近くにいるとどうにかなってしまいそうだ。

「わかったよ…。おめでとう…」

「なによそれ!まったく祝福している人の顔じゃないんだけど!オーデンス、なにかあったのなら言って!」

言えるわけないだろ、お前のことで悩んでるなんて…。
お願いだもうどっか行って、…!?

「ねえオーデンス、なんかあったなら言ってほしいな」

アイリの顔は僕のすぐ近くに来ていた。
近い…、なんかいい香りするし。あれ、なんかすごいドキドキしてる?
と、とにかく早く離れないと!

「ち、近すぎるだろ!別になにもないから離れてくれ!」

俺は少し強い力でアイリを押してしまった。
そしてアイリは地面に座り込んでしまった。

「あ…ごめんアイリ」

アイリの目にはみるみる涙がたまっていた。
罪悪感がすごい。

「もういい!オーデンスなんて知らない!オーデンスが謝るまで話してあげないんだから!」

そしてアイリは走って帰ってしまった。
やってしまった…。
アイリを守れと父さんには言われていたのに…。
逆に傷つけてしまった。
とにかく謝らないと。

でもただ謝ってもまた同じ過ちを繰り返してしまうだろう。
謝るよりも今はモヤモヤの正体を突き止めないと。
そしてまた一人で考え事を始めた。
ただ一向に答えは出ず、ただ時間が過ぎていった。
そこでまた誰かが僕の目の前に来た。

「よう、オーデンス」

「あ、農家のおじさん」

そう農家のおじさんであった。
ここの周辺は畑だらけであり、ほとんどがおじさんの畑だったのだ。

「どうしたんだ?こんなところで一人でいて」

「別に、ただ考え事をしていただけ」

「どうせまたアイリと喧嘩でもしたんだろ?」

どうせとはなんだ、どうせとは。
まあ間違ってはないんだけど。
僕は農家のおじさんは嫌いではなかった。
むしろ好きの部類には入るだろう。
こうしてアイリと喧嘩をしてはここにきて不貞腐れて、そのたびに農家のおじさんが話を聞いてくれていた。
とても話しやすい存在だ。

「ま、そんなとこ」

「まったく、いつも懲りねーなお前らは。アイリはもうすぐ旅立つんだろ、最後は仲良くして送ってやればいいじゃねーか」

「わかってるよ。今回は僕が全面的に悪い」

「おお、やけに素直じゃねーか今日は」

「うっせ」

僕らはこんな感じでなんでもない出来事を語り合った。
近所の子供たちが最近悪さしてるからお灸をすえてやったとか、おいしい果物が収穫できたから今度やるよとかだ。ほんとうに他愛もない会話である。だけど僕はそれが心地良くも感じていた。

「そういえばアイリの入学祝いパーティはいつやるんだろうな」

え、?

「入学祝いパーティってもうやったんじゃないの…?」

「いーや、やってねーよ。なんでかはわかんないがアイリがまだやりたくないと言い張っているらしい」

どういうことだ。
あの日アイリの父さんは今日やるって言ってたじゃないか。
そういえば、あの日からもう何日たっている…?
3、4…、5、もう5日だ。
いつの間にかもうそれくらい経っていた。

「なんで…」

「俺の考えはこうだ。お前らが喧嘩してアイリはお前からの謝罪を待っているんじゃないか?」

「そうなのかな…」

ありえる。
あの頑固なアイリなら。
あの日あんな別れ方をしてしまったんだ。
それでこじらせてしまったに違いない。
あいつ…、俺が謝罪しないとパーティをする気も王国都内に行くつもりもないわけじゃないよな…。

「オーデンス、お前本当にそれでいいのか?このままで後悔しないか?」

「後悔は…すると思う」

だけど、このモヤモヤの正体がわからないとまた同じことを繰り返してしまう。

「はあ、まあお前のことだ。謝りたいとは思っているがなかなか行動に移せないんだろ」

この農家のおじさんナニモンだ。
さっきから僕の心の中見透かされているのか?これが経験の差というものなのか…。

「まったく…、農家のおじさんには敵わないね」

「はは、当然だ。なめてもらっては困る」

「あとな、オーデンス…」

「ん?」

「何かを守るときは、守らなきゃじゃない、守りたいと思うことが1番力を発揮できるんだ」

な、なんで急にそんなこと…?

「急に何言って…」

「じゃあな。俺は他に予定があるからもう行く。さっきの言葉ちゃんと肝に銘じとけよ」

おじさんは僕の質問に答えてくれず、立ち去ろうとする。

「ちょっと待ってよ!どういうことか教えてよ!」

おじさんは僕の子のモヤモヤの正体に気が付いているんじゃないのか?
そう思わずにはいられなかった。

「その答えはお前自身が見るけるべきだ。今日もありがとな、楽しかったぜ」

そして立ち去ってしまった。
僕は追いかけることもできたがなんとなくこれは自分自身で答えを見つけないといけないような気がした。
だから考えた。
だけど答えは見つからなかった。

「あーあ、やっぱり追いかけるべきだったかな」

そう思い至り追いかけなかったことに後悔した。
もう空は夕焼け色だ…。

「もうこんな時間か…」

今日は帰ろう、そうして帰路につくのであった。

こうして僕が悩んでパーティや都内にいくのが遅れても申し訳ない。
ここは一旦謝ってちゃんとパーティにも参加するべきだ。
俺個人の理由で多く人を困らせてしまうのはいけない。
村の皆は言わないが、心の中ではアイリの祝福パーティをしたいはずだ。

そうだな、早いほうがいい、今からでもアイリの家に行って謝りに行こう。そう思い、進行方向を変えてアイリの家の方向へ向かった。




この頃は知らなかった。まさかこの先で悲劇の事件が起きようとしていることを…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

処理中です...