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第5話 意外な肩書き
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「私、実は『縁結び屋』なんだよね」
仕事帰りに職場の同僚と居酒屋で飲んでいると、彼女がおもむろに切り出した。
「縁結び屋?」
「依頼を受けて、片思いとか復縁とか叶えてあげるの」
「ちゃんとした仕事なの?」
私が問うと、同僚は手作りの名刺を鞄から取り出して、カウンターの上に置いた。
肩書きには確かに「縁結び屋」と書いてあった。
「意外だね。でも儲かってるの?」
「ううん。だって、まだ始めたばかりだし」
同僚はごまかすように、名刺をつまんで小さく振った。
「出会いが欲しかったら言ってね。女の子同士、特別割引してあげる!」
「うん、ありがと」
同僚から差し出された名刺を、私は大人しく受け取った。
「いらっしゃいませ~。お一人様ですか?」
「は、はい。あの、カウンターがいいんですけど」
店員と男性のやりとりが聞こえたあと、同僚の近くにその男性が座った。
「あれ? もしかして、この間の!」
男性は同僚の顔を見るなり、爽やかな風貌で笑いかけた。
「あ~、あの時の! 偶然ですね!」
同僚は一瞬驚いたが、すぐに綺麗な笑顔で会釈をした。
「まさかまたお会いするとは! このお店、僕の行きつけなんです」
「そうなんですか! 初めて来たんですけど、いいお店ですよね!」
二人が盛り上がるのを、私は横目で見ながらお手洗いに立った。
『ご依頼の縁結びサービスは以上になります。
報酬は指定の振込先までお願いいたします。』
トイレでSNSにメッセージを打つと、私は急用があると同僚に告げて外に出た。
彼女の隣ですっかり打ち解けた男性が、私に何度も頭を下げた。
私は首をすくめて、ダウンジャケットの襟を風よけにした。
まだ肌寒いけど、春はもうすぐだ。
実力を示せれば、肩書きなんて必要ない。
本日の勝利の美酒代わりにと、私は自動販売機で月桂冠マークの日本酒を買った。
(了)
◎お読みくださり、誠にありがとうございます。
私に肩書きはありませんが、精一杯頑張りたいと思います。
仕事帰りに職場の同僚と居酒屋で飲んでいると、彼女がおもむろに切り出した。
「縁結び屋?」
「依頼を受けて、片思いとか復縁とか叶えてあげるの」
「ちゃんとした仕事なの?」
私が問うと、同僚は手作りの名刺を鞄から取り出して、カウンターの上に置いた。
肩書きには確かに「縁結び屋」と書いてあった。
「意外だね。でも儲かってるの?」
「ううん。だって、まだ始めたばかりだし」
同僚はごまかすように、名刺をつまんで小さく振った。
「出会いが欲しかったら言ってね。女の子同士、特別割引してあげる!」
「うん、ありがと」
同僚から差し出された名刺を、私は大人しく受け取った。
「いらっしゃいませ~。お一人様ですか?」
「は、はい。あの、カウンターがいいんですけど」
店員と男性のやりとりが聞こえたあと、同僚の近くにその男性が座った。
「あれ? もしかして、この間の!」
男性は同僚の顔を見るなり、爽やかな風貌で笑いかけた。
「あ~、あの時の! 偶然ですね!」
同僚は一瞬驚いたが、すぐに綺麗な笑顔で会釈をした。
「まさかまたお会いするとは! このお店、僕の行きつけなんです」
「そうなんですか! 初めて来たんですけど、いいお店ですよね!」
二人が盛り上がるのを、私は横目で見ながらお手洗いに立った。
『ご依頼の縁結びサービスは以上になります。
報酬は指定の振込先までお願いいたします。』
トイレでSNSにメッセージを打つと、私は急用があると同僚に告げて外に出た。
彼女の隣ですっかり打ち解けた男性が、私に何度も頭を下げた。
私は首をすくめて、ダウンジャケットの襟を風よけにした。
まだ肌寒いけど、春はもうすぐだ。
実力を示せれば、肩書きなんて必要ない。
本日の勝利の美酒代わりにと、私は自動販売機で月桂冠マークの日本酒を買った。
(了)
◎お読みくださり、誠にありがとうございます。
私に肩書きはありませんが、精一杯頑張りたいと思います。
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