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第八章:騒動再び
第90話 ハルカへの花束
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「とにかく、邪魔はしないで」
ハルカが怒りながら言うと、アーネスが肩を竦めた。
「今、邪魔をしないでいつするんだい」
むっとハルカが二人を睨むと、イアスは後ろめたそうに視線を逸らした。一方でその兄は平然としている。
イアスのような生真面目さをアーネスに期待するのは無理だと、カレヴィは熟知していた。
「おまえらは後に付いてくるな」
「それなら一緒に行けば問題はないわけだね」
カレヴィの苦情に屁理屈とも言える返しをしたアーネスにカレヴィとハルカは唖然とした。
「わたしはカレヴィと二人で庭園を巡りたいの! そんなこと言うなら嫌いになるからね!」
──よく言った、ハルカ。
カレヴィが心の中でハルカに讃辞を贈っていると、アーネスが苦笑してきた。
「……それは困るね」
ハルカが怒鳴ったことで、ようやくアーネスとイアスがこの場を引く気になったらしい。
「こんな方法は逆効果だよ。それにわたしが好きなのはカレヴィなんだから」
「それでも、まだ婚礼は挙げていない。だとすればまだ我々にも日の目はある」
二人とも両思いなのは明白なのだから、いい加減諦めればいいものを。
「しつこいぞ」
カレヴィの言葉にハルカも頷いた。
「ここで引いていたら成就するものもしない。だとしたら行動しない手はないだろう?」
成就もなにも、ハルカはもう己のものだ。図々しいにもほどがある、とカレヴィは憤った。
「ハルカは渡さん。諦めろ」
「カレヴィ……」
カレヴィの言葉に、ハルカが感動したように彼に抱きついてきた。
「ハルカ」
カレヴィもお返しとばかりにハルカを抱きしめる。
「目の前でいちゃつかないでくれないかな」
アーネスが馬鹿力でカレヴィ達を引き裂いた。
「人のデート邪魔しに来ている時点で言う台詞じゃないと思うけどっ」
「そうだ。嫌なら俺達に近づくな」
それにハルカは同意するように頷いた。
「もう、お願いだから邪魔しないで」
胸の前で手を組み合わせてハルカは二人に懇願した。
切実な様子でハルカに言われてアーネスとイアスは顔を見合わせた。
「そう言われてしまいますと、困ってしまいますね」
「まあ、あまりしつこくして嫌われたら元も子もないからね。この辺で失礼するか」
「……うん、そうして」
ようやく邪魔者達が去ってくれそうなので、カレヴィはほっとした。
「それではハルカ様、お邪魔いたしました」
「ではね、ハルカ。今度は二人きりで会いたいものだね」
「それはないから」
ハルカがアーネスの言葉に反論したが、彼はまったく気にしていない様子だった。
二人はハルカに貴婦人への礼をとると、退散していった。
二人の気配がなくなって、カレヴィとハルカはほっと息をつくと、抱き合って口づけを交わした。
カレヴィ達はしばらく桜の下でいちゃいちゃしていたが、カレヴィはハルカに花を贈りたいと思いつき、そう言ってひとまず離れた。
そこでカレヴィが選んだのは、クリーム色と淡いオレンジ色の薔薇。それを基調にして、ハルカをイメージして花束を作れと庭師に命じた。
カレヴィにとって、ハルカは暖かい、癒しの印象だった。
ハルカが嬉しそうに頬を染めて花束が出来る様子を見つめている。
やがて納得できるものが出来、カレヴィは庭師に頷いた。
「ハルカ、ほら」
カレヴィが花束を渡すと、ハルカは慌てたように受け取った。
「可愛くて綺麗だね。本当にありがとう」
花束の香りを吸い込みながらハルカが礼を言ってくる。
「おまえが気に入ったのなら良かった」
カレヴィはそれに満足しながらハルカを愛しさをこめて見つめる。
すると、侍女の一人がカレヴィの傍に寄ってきて小声で呟いた。
「……残念ながらもう執務の時間らしい。ハルカ、悪いがこれで帰ろう」
「……そうなんだ。もうちょっと一緒にいたかったけど、それなら仕方ないね」
そしてカレヴィ達はおつきの魔術師の移動魔法によって、ハルカの部屋に送られた。
「ハルカ様、花束を生けさせていただきます」
「あ、うん」
侍女がハルカにそう言うと、彼女は花束を侍女に渡した。
それを待ってカレヴィがハルカの体を攫う。
そしてカレヴィは何度もハルカに口づける。ハルカはそれをうっとりと受けながら、カレヴィの背に腕を回した。
……だがそんな時間も長くは続かなかった。カレヴィには執務が待っていたのである。
「……それではな」
「うん、執務頑張ってね」
名残惜しい気持ちでハルカを見つめると、彼女もカレヴィをじっと見つめてきた。
そしてカレヴィはハルカの部屋を出ると、王の義務を果たすために、彼の執務室に向かったのである。
そのしばらく後に、カレヴィはハルカに大変なことが起こったと知らされてきた。
あの後ハルカの部屋を訪ねたシルヴィが、ハルカに贈った花束を花瓶ごと駄目にしたらしい。
そして、ハルカは花を拾おうとして手を花瓶の破片で切ったらしいのだ。
「ハルカ!」
カレヴィがハルカの部屋に飛び込んだときには彼女の衣装は血だらけになっていた。
見れば部屋にはイアスとアーネスもいる。
「カレヴィ」
ハルカはカレヴィの顔を見てほっとしたらしく、その場に座り込みそうになっていた。
「危ないですよ」
そこをイアスが支えて割れた花瓶の破片から彼女を守った。
「ありがとう、イアス。汚れちゃったね、ごめん」
「いえ、洗えばすみますから」
そんなことを言っている二人にじれて、カレヴィはハルカの手を取って彼の胸の中に閉じこめた。
「ハルカ……、兄王」
呆然とシルヴィが呟くのが聞こえたが、カレヴィは無視した。
「汚れちゃうよ、カレヴィ」
「おまえのものなら、かまわん」
そしてハルカをぎゅっと抱きしめる。
「花束ならいくらでもやる。無茶をするな、ハルカ」
「うん、ごめんね」
そう言うと、ハルカは一粒涙をこぼした。
ハルカが怒りながら言うと、アーネスが肩を竦めた。
「今、邪魔をしないでいつするんだい」
むっとハルカが二人を睨むと、イアスは後ろめたそうに視線を逸らした。一方でその兄は平然としている。
イアスのような生真面目さをアーネスに期待するのは無理だと、カレヴィは熟知していた。
「おまえらは後に付いてくるな」
「それなら一緒に行けば問題はないわけだね」
カレヴィの苦情に屁理屈とも言える返しをしたアーネスにカレヴィとハルカは唖然とした。
「わたしはカレヴィと二人で庭園を巡りたいの! そんなこと言うなら嫌いになるからね!」
──よく言った、ハルカ。
カレヴィが心の中でハルカに讃辞を贈っていると、アーネスが苦笑してきた。
「……それは困るね」
ハルカが怒鳴ったことで、ようやくアーネスとイアスがこの場を引く気になったらしい。
「こんな方法は逆効果だよ。それにわたしが好きなのはカレヴィなんだから」
「それでも、まだ婚礼は挙げていない。だとすればまだ我々にも日の目はある」
二人とも両思いなのは明白なのだから、いい加減諦めればいいものを。
「しつこいぞ」
カレヴィの言葉にハルカも頷いた。
「ここで引いていたら成就するものもしない。だとしたら行動しない手はないだろう?」
成就もなにも、ハルカはもう己のものだ。図々しいにもほどがある、とカレヴィは憤った。
「ハルカは渡さん。諦めろ」
「カレヴィ……」
カレヴィの言葉に、ハルカが感動したように彼に抱きついてきた。
「ハルカ」
カレヴィもお返しとばかりにハルカを抱きしめる。
「目の前でいちゃつかないでくれないかな」
アーネスが馬鹿力でカレヴィ達を引き裂いた。
「人のデート邪魔しに来ている時点で言う台詞じゃないと思うけどっ」
「そうだ。嫌なら俺達に近づくな」
それにハルカは同意するように頷いた。
「もう、お願いだから邪魔しないで」
胸の前で手を組み合わせてハルカは二人に懇願した。
切実な様子でハルカに言われてアーネスとイアスは顔を見合わせた。
「そう言われてしまいますと、困ってしまいますね」
「まあ、あまりしつこくして嫌われたら元も子もないからね。この辺で失礼するか」
「……うん、そうして」
ようやく邪魔者達が去ってくれそうなので、カレヴィはほっとした。
「それではハルカ様、お邪魔いたしました」
「ではね、ハルカ。今度は二人きりで会いたいものだね」
「それはないから」
ハルカがアーネスの言葉に反論したが、彼はまったく気にしていない様子だった。
二人はハルカに貴婦人への礼をとると、退散していった。
二人の気配がなくなって、カレヴィとハルカはほっと息をつくと、抱き合って口づけを交わした。
カレヴィ達はしばらく桜の下でいちゃいちゃしていたが、カレヴィはハルカに花を贈りたいと思いつき、そう言ってひとまず離れた。
そこでカレヴィが選んだのは、クリーム色と淡いオレンジ色の薔薇。それを基調にして、ハルカをイメージして花束を作れと庭師に命じた。
カレヴィにとって、ハルカは暖かい、癒しの印象だった。
ハルカが嬉しそうに頬を染めて花束が出来る様子を見つめている。
やがて納得できるものが出来、カレヴィは庭師に頷いた。
「ハルカ、ほら」
カレヴィが花束を渡すと、ハルカは慌てたように受け取った。
「可愛くて綺麗だね。本当にありがとう」
花束の香りを吸い込みながらハルカが礼を言ってくる。
「おまえが気に入ったのなら良かった」
カレヴィはそれに満足しながらハルカを愛しさをこめて見つめる。
すると、侍女の一人がカレヴィの傍に寄ってきて小声で呟いた。
「……残念ながらもう執務の時間らしい。ハルカ、悪いがこれで帰ろう」
「……そうなんだ。もうちょっと一緒にいたかったけど、それなら仕方ないね」
そしてカレヴィ達はおつきの魔術師の移動魔法によって、ハルカの部屋に送られた。
「ハルカ様、花束を生けさせていただきます」
「あ、うん」
侍女がハルカにそう言うと、彼女は花束を侍女に渡した。
それを待ってカレヴィがハルカの体を攫う。
そしてカレヴィは何度もハルカに口づける。ハルカはそれをうっとりと受けながら、カレヴィの背に腕を回した。
……だがそんな時間も長くは続かなかった。カレヴィには執務が待っていたのである。
「……それではな」
「うん、執務頑張ってね」
名残惜しい気持ちでハルカを見つめると、彼女もカレヴィをじっと見つめてきた。
そしてカレヴィはハルカの部屋を出ると、王の義務を果たすために、彼の執務室に向かったのである。
そのしばらく後に、カレヴィはハルカに大変なことが起こったと知らされてきた。
あの後ハルカの部屋を訪ねたシルヴィが、ハルカに贈った花束を花瓶ごと駄目にしたらしい。
そして、ハルカは花を拾おうとして手を花瓶の破片で切ったらしいのだ。
「ハルカ!」
カレヴィがハルカの部屋に飛び込んだときには彼女の衣装は血だらけになっていた。
見れば部屋にはイアスとアーネスもいる。
「カレヴィ」
ハルカはカレヴィの顔を見てほっとしたらしく、その場に座り込みそうになっていた。
「危ないですよ」
そこをイアスが支えて割れた花瓶の破片から彼女を守った。
「ありがとう、イアス。汚れちゃったね、ごめん」
「いえ、洗えばすみますから」
そんなことを言っている二人にじれて、カレヴィはハルカの手を取って彼の胸の中に閉じこめた。
「ハルカ……、兄王」
呆然とシルヴィが呟くのが聞こえたが、カレヴィは無視した。
「汚れちゃうよ、カレヴィ」
「おまえのものなら、かまわん」
そしてハルカをぎゅっと抱きしめる。
「花束ならいくらでもやる。無茶をするな、ハルカ」
「うん、ごめんね」
そう言うと、ハルカは一粒涙をこぼした。
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