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第19話 イルーシャ、騎士達に会う
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「あ、きいす、いらっしゃーいっ」
イルーシャの部屋を訪ねてきたキースを見て、イルーシャは嬉しそうに彼に駆け寄った。
「ねー、ねー、きいす。ぱぱとままはいついるーしゃをむかえにくるの?」
突然イルーシャにそう尋ねられたキースは一瞬絶句すると、それでもすぐに気を取り直して言った。
「ごめんね、きみのパパとママはとても忙しいみたいで、それはもう少し先になりそうなんだ」
「……そーなんだ」
目に見えてしょんぼりするイルーシャにキースは良心の呵責を感じたが、こればかりは真実を話すわけにもいかなかった。
「ぱぱとまま、いるーしゃのことわすれてないかなあ」
「大事な君のこと、忘れるわけないじゃないか」
「うん……」
キースが慰めたが、イルーシャは沈んだままだ。どうしたものかと思案したキースは、イルーシャを彼女のお気に入りの場所に連れていってみることにした。
「ところでイルーシャ、サクラ見たくないかい?」
「……さくら! うん、みたい!」
エーメの花が大好きなイルーシャは、その言葉でぱっと顔を輝かせた。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
キースはイルーシャを抱き上げると、エーメの並木道まで移動した。
イルーシャとキースがのんびりと花見をしていると、見知った人物から声をかけられた。
「イルーシャ様ではないですか」
「あー、ぶらっど!」
どうやら、城からの帰りらしい。今日はヒューイは一緒ではないようだ。
イルーシャはブラッドレイのところまでとてとて歩いていくと、「だっこー」と要求した。
ブラッドレイがイルーシャを抱き上げると、イルーシャは嬉しそうに彼にしがみついた。
「イルーシャ、僕とサクラを見てくれるんじゃなかったのかい。ひどいなあ」
イルーシャの関心がブラッドに移ったのを見て、キースが苦笑しながらぼやく。
「う、ぶらっどもいっしょじゃだめ?」
「イルーシャ様、これからわたしは宿舎に戻るのでご一緒に花見はできませんよ」
地位の高いキースに遠慮して、ブラッドが言う。
「しゅくしゃってなあに?」
聞き慣れない言葉にイルーシャが首を傾げる。
「わたしのような騎士や兵が大勢生活している場所ですよ」
「えー、いるーしゃ、みたい!」
「いや……、イルーシャ様が来るような場所ではないですよ。男ばかりでむさくるしいですし」
「えー。おにいちゃんいっぱい? みたーい、みたーい」
遠回しに断ったブラッドレイの言葉はよけいにイルーシャの好奇心を刺激したようだ。
「ねーねー、きいす。いるーしゃ、ぶらっどのしゅくしゃみたい」
今度はおねだりを始めたイルーシャに、キースは苦笑した。
「イルーシャがこう言ってるんだから、仕方ないね。ブラッドレイ案内を頼むよ」
「……分かりました」
ブラッドレイも苦笑して、キースに頷いた。
基本的にイルーシャに甘い二人だ。イルーシャのお願いをはねのけることは難しかった。
キースの移動魔法で一気に紅薔薇騎士団の宿舎の前に来た三人は建物の中に入る。その途端、騎士達がブラッドレイに気安く声をかけてきた。
「おおー、なんですか団長、その可愛い娘は」
「まさか隠し子じゃないですよね」
ブラッドレイは隠し子発言をした騎士を小突きながら、そんなわけないだろうと苦笑した。
「この方はイルーシャ様だ」
ブラッドがそう言うと、場が騒然となる。
「イ、イルーシャ様!?」
「た、確かに面影はありますが……」
騎士達に注目されて、イルーシャは大きな瞳をこぼれそうなくらい見開く。
「若返りの魔法薬を被ってこうなったんだ。もうしばらくすれば元に戻ると思うけど」
キースがブラッドの言葉を補うように言うと、騎士達は納得したようだ。
「……そうなんですか。それは大変なことになりましたね。でも、この姿のイルーシャ様もとても愛らしいですが」
「確かに可愛いなあ」
「えへへ、ありがとう」
騎士達の言葉に、ブラッドの腕の中のイルーシャがはにかんで笑うと、恥ずかしそうにブラッドにしがみつく。
「うおお、本当に可愛いっ!」
イルーシャのその殺人的な愛らしさに騎士達が悶絶する。
「イルーシャ様、なにか飲まれますか? ああ、菓子も用意させましょう!」
「いるーしゃ、じゅーすがいい」
「分かりました!」
最近騎士になったばかりの者が速攻でイルーシャをもてなす準備をさせるよう部屋を飛び出していく。
「おまえら、このイルーシャ様にも同じような態度なんだな……」
ブラッドが呆れたように言うのを当のイルーシャはきょとんとして聞いていた。
イルーシャの部屋を訪ねてきたキースを見て、イルーシャは嬉しそうに彼に駆け寄った。
「ねー、ねー、きいす。ぱぱとままはいついるーしゃをむかえにくるの?」
突然イルーシャにそう尋ねられたキースは一瞬絶句すると、それでもすぐに気を取り直して言った。
「ごめんね、きみのパパとママはとても忙しいみたいで、それはもう少し先になりそうなんだ」
「……そーなんだ」
目に見えてしょんぼりするイルーシャにキースは良心の呵責を感じたが、こればかりは真実を話すわけにもいかなかった。
「ぱぱとまま、いるーしゃのことわすれてないかなあ」
「大事な君のこと、忘れるわけないじゃないか」
「うん……」
キースが慰めたが、イルーシャは沈んだままだ。どうしたものかと思案したキースは、イルーシャを彼女のお気に入りの場所に連れていってみることにした。
「ところでイルーシャ、サクラ見たくないかい?」
「……さくら! うん、みたい!」
エーメの花が大好きなイルーシャは、その言葉でぱっと顔を輝かせた。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
キースはイルーシャを抱き上げると、エーメの並木道まで移動した。
イルーシャとキースがのんびりと花見をしていると、見知った人物から声をかけられた。
「イルーシャ様ではないですか」
「あー、ぶらっど!」
どうやら、城からの帰りらしい。今日はヒューイは一緒ではないようだ。
イルーシャはブラッドレイのところまでとてとて歩いていくと、「だっこー」と要求した。
ブラッドレイがイルーシャを抱き上げると、イルーシャは嬉しそうに彼にしがみついた。
「イルーシャ、僕とサクラを見てくれるんじゃなかったのかい。ひどいなあ」
イルーシャの関心がブラッドに移ったのを見て、キースが苦笑しながらぼやく。
「う、ぶらっどもいっしょじゃだめ?」
「イルーシャ様、これからわたしは宿舎に戻るのでご一緒に花見はできませんよ」
地位の高いキースに遠慮して、ブラッドが言う。
「しゅくしゃってなあに?」
聞き慣れない言葉にイルーシャが首を傾げる。
「わたしのような騎士や兵が大勢生活している場所ですよ」
「えー、いるーしゃ、みたい!」
「いや……、イルーシャ様が来るような場所ではないですよ。男ばかりでむさくるしいですし」
「えー。おにいちゃんいっぱい? みたーい、みたーい」
遠回しに断ったブラッドレイの言葉はよけいにイルーシャの好奇心を刺激したようだ。
「ねーねー、きいす。いるーしゃ、ぶらっどのしゅくしゃみたい」
今度はおねだりを始めたイルーシャに、キースは苦笑した。
「イルーシャがこう言ってるんだから、仕方ないね。ブラッドレイ案内を頼むよ」
「……分かりました」
ブラッドレイも苦笑して、キースに頷いた。
基本的にイルーシャに甘い二人だ。イルーシャのお願いをはねのけることは難しかった。
キースの移動魔法で一気に紅薔薇騎士団の宿舎の前に来た三人は建物の中に入る。その途端、騎士達がブラッドレイに気安く声をかけてきた。
「おおー、なんですか団長、その可愛い娘は」
「まさか隠し子じゃないですよね」
ブラッドレイは隠し子発言をした騎士を小突きながら、そんなわけないだろうと苦笑した。
「この方はイルーシャ様だ」
ブラッドがそう言うと、場が騒然となる。
「イ、イルーシャ様!?」
「た、確かに面影はありますが……」
騎士達に注目されて、イルーシャは大きな瞳をこぼれそうなくらい見開く。
「若返りの魔法薬を被ってこうなったんだ。もうしばらくすれば元に戻ると思うけど」
キースがブラッドの言葉を補うように言うと、騎士達は納得したようだ。
「……そうなんですか。それは大変なことになりましたね。でも、この姿のイルーシャ様もとても愛らしいですが」
「確かに可愛いなあ」
「えへへ、ありがとう」
騎士達の言葉に、ブラッドの腕の中のイルーシャがはにかんで笑うと、恥ずかしそうにブラッドにしがみつく。
「うおお、本当に可愛いっ!」
イルーシャのその殺人的な愛らしさに騎士達が悶絶する。
「イルーシャ様、なにか飲まれますか? ああ、菓子も用意させましょう!」
「いるーしゃ、じゅーすがいい」
「分かりました!」
最近騎士になったばかりの者が速攻でイルーシャをもてなす準備をさせるよう部屋を飛び出していく。
「おまえら、このイルーシャ様にも同じような態度なんだな……」
ブラッドが呆れたように言うのを当のイルーシャはきょとんとして聞いていた。
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