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第一章
005 検証される俺
正直、その場の空気は最悪だった。
執事は青ざめたまま俺を見ているし、辺境伯様は完全に思考停止してる。
「……とりあえず、執事さん大丈夫そうだし」
俺がそう言うと、執事は慌てて頭を下げた。
「も、申し訳ありません……っ。ですが……本当に、異常です」
「異常って、俺が?」
「ええ……旦那様の魔力に、まったく影響を受けていない人間など初めて見ました」
さらっと怖いこと言われた。
「それ、普通はどうなるの?」
聞くと執事は少し言いにくそうに視線をそらす。
「……近づくだけで衰弱します。長くいれば、最悪、命を落とします」
「え、じゃあ俺」
思わず辺境伯様を見る。
「さっきからずっと近くにいるけど」
「……そうだ」
辺境伯様は低く答えた。
「だから、おかしい」
いや、それ俺のセリフ。
「検証、させてほしい」
唐突に言われた。
「……何を?」
「お前が本当に、どこまで平気なのか」
その言い方が妙に真剣で、背筋が少し寒くなる。
でもここで拒否したところで、俺には行く場所もない。
「……まあ、死なないならいいけど」
軽く言ったら、辺境伯様の眉がぴくっと動いた。
「軽く考えるな」
「だって、今さらだろ」
異世界に落ちて、呪われた領地にいて、魔獣に襲われて、ここで死んだら、それまでだ。
開き直り半分、本音半分だった。
辺境伯様は、しばらく俺を見つめてから静かに言った。
「……少し、近づけ」
「はい?」
「俺に、もう少し近づけ」
さっきまで「来るな」って言ってた人が?
内心ツッコミつつ、一歩、距離を詰めた。
何も起きなかった。
息も普通だった。
頭も痛くならなかった。
むしろ、辺境伯様の方が、わずかに呼吸を乱した。
「……どうだ」
「どうだって言われても、普通」
「……触れても」
「え?」
「……触れても、平気なのか」
一瞬、沈黙。
触れる、って、その、どこに?
心の中で動揺してるのに口から出たのは、やけに冷静な言葉だった。
「試す?」
レオニスの目が、わずかに見開かれた。
俺は、ゆっくり手を伸ばした。
指先が、彼の外套の袖に触れた。
何も起きなかった。
……ほんとに、何も。
でも。
レオニスの肩が、びくっと揺れた。
「……っ」
まるで、触れられること自体が、予想外だったみたいに。
「大丈夫そうだけど」
そう言った瞬間、手首を掴まれた。
思ったより強い力。
「……離すな」
「え?」
「……今、離れるな」
低い声。
さっきまでの冷静さが、どこにもない。
視線が、俺の手に釘付けになっている。
その様子を見て、ようやく気づいた。
この人。
俺が平気なのを喜ぶより先に――怖がってる。
失うのが、怖くて。
だから、確かめたくて。
そして、多分もう。
手放す気なんて、ない。
執事は青ざめたまま俺を見ているし、辺境伯様は完全に思考停止してる。
「……とりあえず、執事さん大丈夫そうだし」
俺がそう言うと、執事は慌てて頭を下げた。
「も、申し訳ありません……っ。ですが……本当に、異常です」
「異常って、俺が?」
「ええ……旦那様の魔力に、まったく影響を受けていない人間など初めて見ました」
さらっと怖いこと言われた。
「それ、普通はどうなるの?」
聞くと執事は少し言いにくそうに視線をそらす。
「……近づくだけで衰弱します。長くいれば、最悪、命を落とします」
「え、じゃあ俺」
思わず辺境伯様を見る。
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「……そうだ」
辺境伯様は低く答えた。
「だから、おかしい」
いや、それ俺のセリフ。
「検証、させてほしい」
唐突に言われた。
「……何を?」
「お前が本当に、どこまで平気なのか」
その言い方が妙に真剣で、背筋が少し寒くなる。
でもここで拒否したところで、俺には行く場所もない。
「……まあ、死なないならいいけど」
軽く言ったら、辺境伯様の眉がぴくっと動いた。
「軽く考えるな」
「だって、今さらだろ」
異世界に落ちて、呪われた領地にいて、魔獣に襲われて、ここで死んだら、それまでだ。
開き直り半分、本音半分だった。
辺境伯様は、しばらく俺を見つめてから静かに言った。
「……少し、近づけ」
「はい?」
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さっきまで「来るな」って言ってた人が?
内心ツッコミつつ、一歩、距離を詰めた。
何も起きなかった。
息も普通だった。
頭も痛くならなかった。
むしろ、辺境伯様の方が、わずかに呼吸を乱した。
「……どうだ」
「どうだって言われても、普通」
「……触れても」
「え?」
「……触れても、平気なのか」
一瞬、沈黙。
触れる、って、その、どこに?
心の中で動揺してるのに口から出たのは、やけに冷静な言葉だった。
「試す?」
レオニスの目が、わずかに見開かれた。
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何も起きなかった。
……ほんとに、何も。
でも。
レオニスの肩が、びくっと揺れた。
「……っ」
まるで、触れられること自体が、予想外だったみたいに。
「大丈夫そうだけど」
そう言った瞬間、手首を掴まれた。
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「……離すな」
「え?」
「……今、離れるな」
低い声。
さっきまでの冷静さが、どこにもない。
視線が、俺の手に釘付けになっている。
その様子を見て、ようやく気づいた。
この人。
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だから、確かめたくて。
そして、多分もう。
手放す気なんて、ない。
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