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1.たとえそれが、、、①
しおりを挟む何時からだったろう?
何時から、、、自分の瞳は………………ーーーーーー
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「きゃあああーーーーーーーーーーーーー!!!」
あがった悲鳴に思わず苦笑だ。
つい先だってもこんな事あったなぁなどと、呑気な事を考えていると、目の前にふと影が落ちた。
顔を上げると、手が頬に当てられる。
ふんわりと優しいその手は大きくーーーーーゴツい。
「いやーーーーーーーッッ!!なんなのよーーーーー!これぇーーーーー⁉︎」
あがる悲鳴はだが低くて野太く、僕の目の前に立ち塞がる体もがっしり逞しい。
引き締まり逞しい筋肉に覆われた大柄な体。
その一見引いてしまいそうなほど立派な体の見かけによらず、目の前の人は優しく繊細だ。
「やだやだ!腫れてるじゃないのよーーーーー!!」
目の前の、どこから見ても筋肉ムキムキの大柄な男の口からあがる女性っぽい話し方。
最初はかなり面食らい戸惑ったが、今はもう慣れた。
「ルース様。あの、、大丈夫ですから」
大柄な男、ルースが、僕の言葉に顔を顰める。
「どこが大丈夫なの⁉︎こっっっっっっっんなに!真っ赤に腫らして!!やったのね⁈あいつでしょ⁈あンの、クソ親父!!こっっっっんな、かぁわいい顔になにしてくれてんのよっっっっ!!」
僕の頬に負けず劣らず、顔を怒りで真っ赤に上気させ、ルースが吠える。
叩かれた頬に、痛まし気な視線を向けられ小さく苦笑。
ルースが言うところのクソ親父とは、僕の父親の事。事実だけど言わない。
あの人の話はしたくない。だから、それには触れないように、やんわり話を逸らしていく。
「ちゃんとすぐ冷やしましたから……痛みもさほど」
「そういう問題じゃないでしょ⁈体の痛みは引いたって、エリィの心はそうじゃないでしょ!」
違うのよーッ!っと更に吠えるルースに、実際はまだジンジンして火照っていた熱と痛みが和らぐ。
自分を取り巻く環境が変わった。
自分の周りにいる人たちも変わった。
変化にも慣れた。
でも………
まだ、これには慣れない。
自分へ純粋に向けられる優しく温かい感情。
嬉しくて、体の中がふわふわしてくる。
向けられ慣れてないそれに、どうしていいか分からず毎回戸惑う。
「あああああっっっ!あたしの可愛いエリィの顔がぁ!!」
「ルース様……」
「うるさいぞ?馬鹿弟子が。エリオはお前のものではない!正確には儂の侍従じゃ!」
「お師様!ズルいわ!これ見よがしに強調しないで下さい!あたしだって、エリィみたいな子が侍従になるって知ってたら立候補したのに~~~!!」
「お前は不真面目すぎるんじゃ!真面目に侍従を探そうともせず、面倒くさがるから好機を逃す。儂は知らん!」
「悔しいーーーーーーーーーーー!!」
顔を顰めながら、魔導士長のファンガス様が割り込み、ルースがキーキー喚く。
「もう、いいですーーーーーっだ!ささっ、エリィ。意地悪なお師様は放っておいて、その可哀想な頬っぺ冷やしましょ?」
「放っておいてとはなんじゃ!儂は師じゃぞ⁈まったく!可愛くない弟子じゃ!!」
今の僕はファンガス様の侍従。
これでも、下級ではあるが貴族の出で、ここへ来る前は宰相閣下の侍従だった。
紆余曲折の上、今はここにいるのだが……
トクンと小さく波打った胸の奥に、ハッと息を呑む。
「エリィ、どうかした?やっぱり痛むの⁈」
「あ……いえ!違います、大丈夫です!」
慌てて頭を振り、ふと息を吐く。
ふいにズキッと痛んだ別の痛みに、そろとルースから離れる。
「ファンガス様。書室へ行ってまいります」
「母御の命日参りから戻ったばかり…あまりな仕打ちを受けておるのだし、無理は要らぬぞ?」
「そうよぉ!だから、行くことないって言ったのよ?行って大丈夫なのかって、あたし言ったじゃない!」
2人から言われたが、曖昧に誤魔化して部屋を出た。
扉を背にして深く息を吐く。
これ以上自分の事で2人に心配をかけたくない。
ズキッと、先程より強く痛みだしたそれに顔を顰める。
やはり早めに痛み止めを飲んでおけばよかったと考えつつ、歩み出す。
書室へ行く前に自室へ寄り、飲んでバレないようにしようと考え込んでいた体が、手首を掴まれ後ろへと強く引っ張られた。
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