聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 異世界転移でてんやわんや篇

5.選択の余地なし、なれば、進め。




鋭くて、でも、深く吸い込まれそうな紺碧の光。
お互いが見つめ合ったまま無言が続く。

「痛い……んだけど?」
「あ……あぁ、すまない」

グッと掴まれた肩に指が食い込み、その痛みで我に返って小さく抗議した。
そっと肩から手が外される。掴まれた肩は軽くジンジンしていて……片手でそっと触れると、まだ寒いと思われたのか、カイザーがローブを被せてきた。

「着ていろ」
「ぁ………」

礼を言う間もなく、カイザーがさっさと視線を外してしまう。
人を犯罪者扱いしたかと思えば、気遣ったり……よく分からない。
問うておきながら、俺の返事も聞かないし。
まぁ、聞かれたところで答えようもない。
「何者」と聞かれたって、俺は自分が「何者」になった覚えもないし、なったつもりもない。

「一度、騎兵舎に戻りましょう。さすがに、ここにいつまでも居るのはなんですし、その者から話も聞かないとですわ」
「そうっすね!ここ、暗いし寒いし?騎兵舎でゆっくり話しましょうよ?」

ジディの提案に、キリアンが乗り、お互いがそれに対してフン!と鼻で吐き捨てソッポを向く。
それに対し、もはや何も言う気が起きないらしく、カイザーが小さく溜め息のみつく。

「シュライン、イライザー」

カイザーの呼びかけに、二匹のワンコが素直に従い、俺の足元から離れる。
ちょっと残念だけど、主人はカイザーだからしょうがない。
キュルっと鳴いて、若草色の鳥が俺の頬に一度擦り寄り、呼ばれる前にジディの肩に飛んでいく。

「リーシャ。こっちおいで?」

俺の腕に残ったニャンコを、キリアンが呼ぶ。
ジッと主人を見つめた後、プイと顔を背けたニャンコが俺の胸元に甘えるようにスリスリ。
情けないくらいに、キリアンの眉が下がる。

「リ~シャ~~……ひどくない?主人、俺よ?」

哀れっぽく訴えるキリアンを尻目に、ニャンコ、リーシャが俺の頬をペロペロ舐めた。
舌ザリザリして痛いけど、可愛い♡
益々意気消沈。ガックリ項垂れるキリアンは気の毒だが…

「嘆かわしいわ…普段からの”聖獣”との関係性が疑われるわね」
「うるっせぇな!!関係性は良好だっての!確かに、額に輝石持つ猫カーバンクル・ケットシーは気紛れだし…リーシャもちょい我が儘だけど。主人を無視するなんて今まで一度も………」

眉尻下げたまま、寂しそうにリーシャを見つめるキリアンが可哀想で、ちょっと申し訳なくなるが、当のリーシャは俺にべったり。
離したほうがいいとは思うが、キュルンとした目で見上げてこられたら………

「なんか……ごめん?」
「ははっ……いいよ。気にしないで?何か、もう、ね…リーシャ、今俺の言う事聞く気ないみたいだし?それに、抱っこしてると温かいでしょ?抱っこしてて」

フラフラと肩を落として力なく笑うキリアンを見ても、リーシャは動こうとしない。
ヤバい……マジで気の毒だ。
それと同じくらいに、俺の中で不安も募る。
キリアンが言う通り、リーシャは温かくて……でも、温かいという事は、さっきの痛みや寒さもひっくるめ、今の現状が現実ということ。

「騎兵舎に戻る。歩けるか?」

カイザーに言われ、無言で頷く。
あの男たちの仲間ではないと納得はしてくれたが、疑いは完全に晴れた訳じゃない。
それに、俺自身、今の状況があまりに突飛すぎて整理が追いつかない。
胸に抱いたリーシャの温かさ、足の痛み、時間と共にどんどん溜まっていく不安……
進むのが怖い。けど、立ち止まってる訳にもいかない。
否応なしに一択しかないそれに従うべく、促されるままに足をゆっくりと踏み出した。









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