聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
8 / 120
序章 異世界転移でてんやわんや篇

6.謎多き時渡り③




「不可解な事って……?」
「魔導波動の揺れを感知したと言ったはずだけど、普通なら、時渡りほどの魔導が使われれば、もっと大きな揺らぎを感じる筈なんだよね。だから、妙なんだ」
「鎮寂の森に入った時にも、そんな波動は感じませんでした」

カイザーも応える。
別の世界からこの世界に来たなら、言うところの時渡りってやつなんだろうが……
この点は、この世界の常識や知識のない俺には分からない。

「よくよく調べる必要がありそうだね」
「こちらでやりますか?」
「いや……カイザーは動かなくていいよ」
「殿下?」

訝しむカイザーに、皇太子がニッコリと優雅に微笑む。

「マヒロはアルシディアの血脈。それこそ、誰に狙われるか分からないからね。だから、護衛兼保護者として、カイザー、頼むよ?」
「え?」
「殿下⁉︎お待ち下さい。私は、近衛騎士で警備が……!」
「重要な貴人を護る事も騎士の大事な、お・し・ご・と!」
「~~~~~~~~!!!」

茶目っ気たっぷりに言う皇太子に、言われたカイザーは言葉を継げずに口をパクパクさせるのみ。
子供のお守りじゃないんだから、俺一人でも大丈夫と言いたいが、この世界に不慣れな上、何も分からない状態で一人になるのは確かに不安。皇太子が言ったように、誰が俺を狙うとも思えないけど、言葉には従ったほうがよさそうだ。
しばらく無言の後、重苦しく溜め息をつき、カイザーが頭を下げる。

「承知致しました……」

迷惑そうな態度はあまり愉快じゃないが、この際、我慢。元の世界に帰れるまでの辛抱だ。

「屋敷はカイザーのところだね。じゃあ、しっかり頼んだよ?」

Noの選択肢はないとばかりな皇太子に、カイザーはもはや反論もせず、黙って一礼し、俺と連れ立って部屋を出た。

「あの……」
「なんだ?」

冷たくはないが、素っ気ない。
こういう態度とられると、言いたくなくなる。ムスッとしたまま、フイと顔を背けた。

「やっぱ、いい」
「言いかけてやめるな。聞く態勢を整えた相手に失礼だろう?」

…………………………………………
キッと睨みつける。

「あんたのその態度は失礼じゃないわけ?」
「何?」
「俺より、あんたの態度のがよっぽど失礼じゃね?迷惑なら断りゃいいじゃん!」

つけつけ言ってやると、カイザーが目を瞠り、ハァ~っと溜め息をつく。
溜め息つきたいのはこっちだってぇの!!

「俺は近衛騎士だ」
「だから、何だよ?」

言いたい事が分からない。訝しむ俺に、苦虫を噛み潰したようにカイザーが顔を顰める。

「皇太子殿下は主君だ。主人、お仕えする方。それよりも皇族!命に背くなど、天地がひっくり返ってもあってはならない!迷惑だからと断れるわけないだろう!!」
「何だよ、それ……俺なら、嫌なもんは嫌だ!」
「そういうわけにはいかないんだっていうのに……まったく!どういう育ちをしてるんだ⁈子供か⁉︎」
「うっさいなぁ!そんなもん、知るか!第一、俺は子供じゃない!!」

嫌々付かれるくらいなら、一人でいい。突っ撥ねる俺に、カイザーも負けじと返し、廊下のど真ん中で言い合いが始まる。
最初に会った時も酷かったし、今も全然優しくない!誤解とはいえ、俺は何やら特別な存在らしいのに、気遣うそぶりすらない。
睨み合い、やがて、カイザーが先にふぅっとゆっくり溜め息をついた。一度目を閉じ、ゆっくり開ける。

「こんな所で騒ぐべきじゃない。聞きたい事とやらは、屋敷に帰ってから聞く。いいな?」
「……………………」

言葉……………………返せない。
明らかに、カイザーが譲った。大人な、分別をつけた。
これじゃ、俺、ほんとに………
悔しいし、情けない。

「悪かった……不安を感じてる相手に、その、俺の配慮が足りなかったかもしれない。だが、護ると言っても、考えなきゃならん事がいっぱいあるんだ。あ~……だから、少し、考えに没頭し過ぎた感はある」

髪をガシガシ掻き、つっかえつつ、カイザーが謝ってきた。

「迷惑なら迷惑って言えば?面倒だろ?」

あ~………俺、ほんと可愛くないよなぁ。自分で言って、凹んでるし?ほんと、ヤダ……
拗ねたようにそっぽを向く俺に、カイザーが微苦笑した。

「面倒じゃないかと言われれば否定できんが、迷惑じゃねぇよ」

言葉が若干砕けた。迷惑じゃないの言葉に振り向く。
紺碧色の瞳と視線が交差する。

「それ……ほん、、、」
「カイザー=ユグドラジェルっっ!!」

俺の問いの言葉を遮るように、突然、声が響いた。








感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。