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序章 異世界転移でてんやわんや篇
8.女の子を殴るとは何事か⁉︎(怒)
「何だ、貴様は!!」
「うるっっさいッッ!!俺が誰かなんて、今、関係ねぇだろ⁈いいから、謝れっ!!」
「謝れ、だと⁈何にだ?」
何にって、こんにゃろう!!
目の前に泣いてる女の子がいるだろうが⁉︎
お前の目ん玉はガラス玉か⁈ニセモノなんだったら、抉り取ってしまえ!
「女の子殴っておいて、あんた何様だ⁈身の程を知るのはあんたの方だし、無礼なのもあんたの方だろうがッ!」
「なっ!貴様ーーーー!!私はこの国の皇子だ!皇族に逆らうなど、不敬罪で処罰してくれるッッ!」
睨み据える俺に向かい、第一皇子が腰から抜き取った鞘ごとの剣を振りかざしてきた。
あんなモンで打たれたら痛いのは分かりきってる。でも、今逃げたら侍女がもっと酷い目に遭う。
ギュッと目を閉じて、痛みと衝撃に備えた。
構えた割に、何も起こらず、閉じていた目を開ける。
目の前に立つ長身。青銀色の髪の後ろ姿。
カイザー!
振り下ろされた第一皇子の剣が、カイザーの翳された腕に受け止められていた。
「何の真似だ⁈カイザー!!」
「お言葉なれど、貴人を護ったまでです」
「なんだと?どういう事だ!」
「この者は、皇太子殿下より託された貴人。皇太子殿下の命がかかりし者。いかな、貴方様とて、害為す事は許されない」
毅然としたカイザーの態度と言葉に、第一皇子が息を呑み、悔しそうに唇をギリギリ噛みしめる。
フン!と鼻息も荒く吐き捨て、剣を引いた。
「白けたわ!警護の件も、もうどうでもよい!!だがな、カイザー!弟と私、どちらに付くのか…それだけは考え直した方が身の為だぞ?」
半ば脅すような第一皇子に、カイザーは揺るぎなく首を振る。
「私はどちらにお仕えするか…とうの昔に、定めました。もはや、変えるつもりも、変えたいとも思わない」
「はっ!!後悔せぬよう、精々、覚えているがいい!」
「つ、、ッッ!!」
捨て台詞と共に、第一皇子が鞘の剣でカイザーの頬を殴って去っていった。
不意打ちだ!
どこまでも卑怯な奴!!
ムカムカする気持ちを抑えつつ、侍女の女の子の傍に膝をつく。
「大丈夫?」
「貴人様!なりませんわ。どうか、お立ちに!私のような下賤な者の為に御御足をつかれるなど……お召し物が汚れます!お手を触れるなど、貴人様が穢れます!」
「は?げ、せん??」
涙に潤む目で、侍女が慌てたように言い離れた。
涙を拭き取り、ニコッと可愛らしく微笑み深々とお辞儀をされた。
「貴人様。先程は、私のような身分卑しい者の為にありがとうございました。急ぎ戻り、やらねばならない仕事がございます。謝罪とお詫びはまた後ほど伺います。不作法とは存じますが、この場は失礼いたします」
パタパタと慌てて走っていく侍女。
「ど、いう事?」
「着けていた花飾りが白だ。おそらく、”無冠の侍女”」
「みかん??」
「……………………無冠だ」
聞き間違えただけじゃん……そんな、呆れた目で見なくたって…いろいろ聞きたいけど、聞きづらくなる。
はぁ~…っと溜め息をつかれる。
今更ながら、カイザーの頬が赤くなっているのに気づく。
俺を庇い、あのイケ好かない皇子に打たれたのを思い出し慌てた。
「あ、の………」
「皇太子殿下のご威光があったからよかったものの…皇族にあんな事をしでかせば、普通ならその場で不敬罪で斬り殺されても文句は言えんぞ?」
いきなり説教で、ムッとなるが、二回も庇われているのを思い出す。
近衛騎士で怪我をする事は多いだろうけど、痛くないわけじゃない。
自分の為に怪我をしたと思えば、腹立ちが消えた。
「ごめん……」
小さく謝る俺に、カイザーが軽く目を瞠る。
なんだよ?俺だって、悪いと思ったらちゃんと謝る。それこそ、あの、馬鹿皇子みたいに開き直ったりしない。
フッと微苦笑し、カイザーが目を細めた。
「そう思うんなら、次からは後先考えてくれ?」
「分かってるけど……」
そんな事言われても、思わず行動、思わず言ってしまった。自分だって無鉄砲なのは自覚している。が、自覚してたらコントロールできるかどうかはまた別物で……
皇太子から頼まれたんだから、カイザーが俺を護るのは当然!……なぁ~んて思えるほど、俺だって傲慢じゃないし、そこまで図太くもなれない。
ちらっと見ると、まだ叩かれた場所は赤い。
「痛い?」
「いいや…彼の方は騎士隊のように鍛えてもない。特に……」
言っているカイザーの言葉が止まる。
俺も止まる。
無意識に、カイザーの頬に触れた俺の手に熱が伝わる。
戸惑うような紺碧色の瞳と黒の瞳が交錯し、互いに揺れた。
先に揺らぎの治まった紺碧が、ゆっくりと力を込めていき……………………
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