聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 異世界転移でてんやわんや篇

11.片鱗




突如起こった逆巻く風の本流。

「マ、ヒロ様⁈大丈夫ですか⁉︎」

物凄い風圧で目が開けられないらしく、ジディが声を張り上げる。
俺はその風の中、目の前をただ呆然と見つめた。
旋風の塊と化したそれと、炎の塊とが激突し、爆音を立てて霧散した。

「きゃあ!!」

ジディの悲鳴で、俺の目が焦点を結ぶ。
風が治まり、ピルルルと鳴いたがこちらへ飛んで来る。
淡い若草色の……
ジディの肩にちょこんととまり、可愛らしく首をかしげる。

「ジディの……」
「……シェ、リ?」

俺とジディの声が重なる。
風を起こし、炎の塊を消し飛ばしたのは、ジディの連れてた鳥。

「た、すかった……そっか、ジディがその子にさせてくれて……」
「えっ?……あ、……ッ??」

フッと肩の力を抜いた俺に、ジディが戸惑いながら、俺と自分の鳥とを見比べた。

「マヒ、ロ様……あなたは…」
「?」
「マヒロ!!ジディ!!二人とも、大丈夫かッ⁈」

カイザーが慌てたように走ってきた。その後ろで、キリアンが状況把握と、被害などの対応を行なっている。

「ケガは?」
「ないよ。ジディが助けてくれたから」
「そうか……すまない、ジディ。執務室の方にいたから遅れた」
「い…いえ、、大丈夫ですわ。あの、隊……」
「隊長~、原因、鍛錬の炎魔導が暴走したらしいっスよ!」

ジディが言い終わる前に、キリアンに連れられ、騎士らしき青年が慌てて走ってくる。

「申し訳ありません!魔導量の加減、ちょっと間違えて…!おケガはありませんか?」
「平気。どこもケガしてない」
「良かった…黒の貴人にケガさせたかと……」
「や、そんな、大袈裟な……」
「とんでもありません!!」

ガシッと手を握りこまれる。
いっ⁈
熱っぽく見つめられ、目を白黒させる俺に構わず、青年騎士が熱く語り出す。

「黒髪黒目、アルシディアの血脈といえば伝説の語り草。強大な魔導に、素晴らしい能力の数々。それに、話によれば見目麗しい方々ばかりと……噂に違わず、貴人様も…」

そこまで言った青年と、俺の手が、間に割り込まれた体で離された。
厳しい顔をしたカイザー。途端、青年騎士が、ピッと背筋を伸ばし直立不動。

「はいは~い!!とりあえず、誰もケガなかったのは幸いだね。事後処理は俺がしますんで。いいですよね?隊長」
「は……?あ、あぁ。頼む」

キリアンの仕切る声で、全員、ハッと我に返った。
カイザーは軽く視線を彷徨わせた後、ふぅっと息を吐く。

「あ、の…隊長?」
「悪かった。だが、貴人にケガを負わせていれば、大変な事態になったのは確かだ。魔導はもう少し慎重にやれ。あと、貴人に気安く触るものではない…………不敬だ」

バツが悪そうに、妙に歯切れ悪く言うカイザーに、青年騎士が、直立不動の姿勢で礼をとる。

「も、も、申し訳ありません!き、貴人様も、大変、しし、失礼を致しました!」
「や、そんな……別に。気にしなくていいよ?」

う~ん……、、確かに、急に知らない男から手を握られたのは微妙だったが…失礼に値するかどうかは、いまいち、よく分からない。
戸惑う俺に、キリアンが苦笑する。

「他はどうか知らないけど、ミネルヴァは厳格な身分制が強く根付いてるんだよ。だから、下位の者が上位の者に少しでも失礼な事をすれば不敬罪とされる」
「俺が、このお兄さんからされたの、手を握られただけだけど?たった、それだけで……」
「貴人の体に無断で触れれば、よくて鞭打ち五十回。悪くて禁固十年」
「ひっ!!し、し、失礼しますッッッ!」
「あっ!ちょっと⁈」

カイザーの言葉に、顔面蒼白になった青年騎士が慌てふためいて逃げていった。
ちょっと、可哀想なくらい慌ててる。
あ、コケた………!

「脅すなよ?あんたの部下だろ?」
「別に脅してない。事実だ」

呆れて言う俺に、カイザーが憮然として応える。

「なんであんたが怒ってんの?」
「怒ってない」

いや、そんなムスッくれた顔で返されても、全然、説得力ないんですけど?
意味不明に不機嫌なカイザーに、眉根を寄せる俺に、キリアンがクスクス笑う。

「何?キリアン。なんで、笑ってんの?」
「いや~?ん~……コレは、アレだね?うん、中々……」
「は?意味、分かんない」

一人訳知り顔でニヤニヤ笑う。

「マヒロ。屋敷へ帰るぞ」
「へ?いや、でも、まだ話……」
「俺がする事は終わった。聞きたい事の残りは俺が答える。二人とも、頼んだぞ?」
「はいは~い!了解で~す!!」

気安く応えるキリアンを尻目に、さっさと歩き出したカイザーを慌てて追いかける。
貴人だとかなんだとか言うわりに、カイザーの態度はぞんざいな気がする。初対面での遣り取りがアレだったからだろうが……
まぁ、俺自身も、カイザーが隊長と知れたからと言って、態度を変えるつもりはないけど。

「とげとげしさが消えただけマシかな?」

独りごちて後を追った。

            *
            *
            *

「さぁてと!仕事すっかな!ジディ?どうした?」

う~んと伸びをしながら、ふと、自分の聖獣を見つめたまま、始終無言だったジディに気づき、キリアンが声をかけた。

「マヒロ様は………」
「うん?マヒロちゃんがどうかしたか?」
「……………………何でもありませんわ」
「???」

口を開きかけ、躊躇ためらい、小さく首を振り応えた。訝しむキリアンにかまわず背を向ける。

何でそうなったのか。

何が起こったのか。

分からないし思い出せない。

一つだけ、確かなのは…………………………………

風が逆巻いたあの瞬間、、、聖獣の存在がほんの瞬きでマヒロの中へ移り、有り得ないくらいの強大な力を有して、一瞬で戻ってきたという事のみ。
















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