聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 異世界転移でてんやわんや篇

12.聖獣と聖獣妃①




「ここ、どこ??」

またあの森にいるわけではない。
カイザーに連れられ、屋敷だという家に連れて来られたが、これは……

「え?これ??家?」
「それ以外、何に見えると?」
「何にって……」

敢えて言うなら、城?
さっき行った本当の城に比べたら、確かに小さい。が、どでん!と目の前にそびえ立つのは、そうと言っても差し支えないくらいのでかさで。
唖然と見つめる俺をさておき、カイザーがさっさと中へ入る。

「おかえりなさいませ。旦那様」
「わざわざ出迎えなくてもいいぞ?ハリス。夜も遅い。休んでいればいいのに…」
「そうはまいりません。主人をお迎えするは、この屋敷を仕切る者、私めの大切な役目にて」

白髪頭の、ヒゲを蓄えた初老の男性が恭しく出迎えた。
執事ってやつかな?
マジマジと見る俺に、男性が丁寧に腰を折る。

「ようこそ。おいで下さいました。貴き血脈の貴人様」
「あ、っと…マヒロといいます。よろしくお願いします」
「マヒロの事を?」
「先刻、城より殿下の御使が参りまして、委細伺っております」

根回しバッチリ!
ここまで至れり尽くせりされると、逆に不安になるな。帰る方法が見つかったとしても、雁字搦がんじがらめにされて逃げらんなくなりそうだ。
慎重に動かないと……

「お食事はいかが致しましょう?」
「俺は軽くつまめる物を部屋へ。マヒロ、腹は?」
「あ~……」

そういえばと、応えようとした俺の腹がぐぅ~っ!と鳴る。
うわ!!めっちゃ、恥ずい!!
顔が熱い。絶対、真っ赤になってる。
腹で返事とか、俺、どんだけ……
顔が上げられない俺に、軽く笑み混じりのカイザーと執事さんの声が届く。

「用意してくれ?」
「かしこまりました」
「支度できるまで、マヒロ、部屋へ。まだ、話があったはずだから行くぞ?」
「………よろしくお願いします」

            *
            *
            *
            *
            *

「最初から話そう。まず、マヒロはこことは違う場所から来た。それは違いないか?」
「うん。俺が住んでいたのはここじゃない」

カイザーの部屋だと言う場所に移動し、勧められたソファに座る。
目の前には湯気の立つカップ。いい香りがするそれは、城でも出されたお茶に似ていた。

「鎮寂の森に居た委細は?」
「分かんねぇよ。自分の家の蔵……えっ、と、使わない物とか普段入れとく建物でいいのか?まぁ、そういう建物があって。そこで、探し物してたんだ。で、何かを手に取って、何かを呟いた………みたいなんだけど」
「何かとは?みたいってのはなんだ?」
「それも…………」

分からない。
俺が最後の記憶として覚えているのはそれだけ。記憶喪失になったわけではない。自分が誰でとか忘れてはおらず、が、蔵の記憶は、何故か、その部分だけが白く煙がかったように曖昧で、何があったのかまったく思い出せない。まるで、煙に部分的に隠されたようで気持ち悪い。

「……………………時渡りの影響か?」

ブツブツ呟くカイザーに、俺は黙ったままお茶のカップを手に取る。

「あの、さ?その、時渡りっての?知らない場所から人が連れて来られるって……あんた達は、聞いてもあんま驚かないんだな?」
「……………そういう記録物がないわけではない。あまり一般的ではないが、邪道下法の魔導は存在を知られている」

一瞬、ムスッとした後、カイザーが応える。
まただ。

「あの……なんで、おこ」
「その、髪色と目の色は本物か?」
「へ?」
「アルシディアの末裔を偽り、染める者も少なくない」

今度は俺がムスッとする。
あいにく、この髪と目の色は本物。友人つれの中には染めたり、カラコン入れたりしてる奴はいるけど…俺は染髪剤でカブれた事があり嫌いだし、カラコンも目に異物入れるのが怖くてした事ない。だから、間違っても、アル何ちゃらいう奴の家族を偽るつもりは毛頭ない。
本当なら無関係だ!って、ハッキリ言ってしまいたいけど、何回も言うが、放り出されるのは困る。

「分かんないけど…少なくとも、この髪も目も、弄ってない。そもそも、その、人の末裔?だっけ?偽る事に何のメリット……得があるわけ?」
「アルシディアの血脈は、アーケィディアで最も力ある血族だ。一国に留まらず、各国がこぞって手に入れたがる程の強大な力を持つ。女神の力に加え、他の属性魔導を制する力。大なり小なりとはいえ、血脈の者は皆、比類なき力を持っていると聞く。その力、血は、一国の王より重く貴いとまで言われる程だ」

う~ん…、、聞いただけじゃ、何が凄いのか分からんが、国の一番偉い人より偉くて、皆んなが欲しがる何かの力?とやらを持ってるってのは分かった。

「あれ?でも、それってさ。アー……大陸の話だろ?その大陸で力持つ奴の血を受ける人を手に入れて、この国が喜ぶって何で?この大陸には関係ないじゃん」
「血脈を手に入れれば、女神の血が王家に入る。強大とされる力も手に入る。アーケィディアとの繋がりもできる。良い事づくめだ」

要は、要るのはネームバリューだけって事?
人の意思を完全無視してるとしか思えず、眉を顰めて黙りこくる俺に、カイザーが苦笑する。

「誤解するなよ?もちろん、血脈持つ者の意思は尊重する。無理強いはできんし、するつもりもない。そもそも、女神の力を持つ血族だ。縛りなんぞは効かん」
「俺がそうだとして、俺が嫌だって言えば、解放してくれるって事?」
「そうだ……少なくとも、俺は…お前の意思を無視し、縛り付けるつもりはない」
「あんたになくても…皇太子さんとか、この国の偉い人は分かんないじゃん」

優しそうな見た目をしていたが、あの皇太子。かなりクセ者っぽい何かを感じた。

「殿下は確かに多少クセがおありだが、人の道理に背くような事をなさる暴君ではない。まぁ、いざとなれば、俺がお諌めする」
「信じていいわけ?」
「騎士の誇りに誓って、貴人を傷つける事は決してない!」

きっぱりハッキリ言い切るカイザーに、これ以上はさすがにクドくなるから俺も黙る。

「そもそも、なんで大陸違いの力とやらを欲するんだよ?」
「……聖獣妃せいじゅうひが消えたのが主な原因だな」
「せいじゅうひ?」








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