聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
41 / 120
第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや

13.赤の皇国①




ザカザカ。
ザカザカザカザカ。
ザカザカザカザカザカザカザカザカ…………(以下略)

「貴………ヒローニャ様!ヒローニャ様、お待ち下さいませ!!」

廊下を歩く俺を、後ろからレネットが呼び止める。
ちなみに、ヒローニャはあらかじめ決めてた偽名。

「何?」
「何ではなく……もう少しゆっくり、楚々そそと歩かれませ。姫君はそのように乱暴に、裾を跳ね上げて歩かれません!」
「面倒くせ………」
「姫君とはそういうものにございます」

ボソッと呟いた俺に、レネットが整然と返す。
止むを得ず女装こんな格好したが、袖はヒラヒラするし、裾は足に纏わり付いて歩きにくいし、顔を覆うベールは視界が効かないし、施された化粧も、耳や首や手首やら、あちこち飾るアクセサリーはシャラシャラ鬱陶しい。唯一、足元だけはぺったんこな靴にして貰ったが、わずらわしい事この上ない。

「そうは言うけどさ。早く、用意された部屋に行きたいんだって!こんな格好見られたくねぇの!」

露出も少なく、顔はベールで隠れてるとはいえ、女装は女装。人に見られるなんざ羞恥で憤死ものレベルだ。

「ヒローニャ様、お言葉が」
「無理だって!女の子じゃねぇんだから」
「では、発するのをお控えに」
「……………………」

レネットは悪くない。けど、苛々すんのは仕方ない。
元々、自分が蒔いた種だ。俺が嘘ついて、血脈を利用しなければ、今のこの状況にはなってない。
いわば、自業自得だが………

女装こんなのあるって分かってれば……嘘なんかつかなきゃ良かった……」
「ヒローニャ様?」
「なんでもね。早く、行こ?」

ザッと歩き……かけ、思い直して歩みを緩める。
姫君って。女の子って大変なんだな。
チラッとレネットを見る。そこまで高くはないが、レネットも軽くヒールがある靴を履いてる。
会った時は、確か、今俺が履いてるようなぺったんこだった気が……
それに……

「レネット。無冠の侍女って何?カイザーが言ってたんだけど……」
「無冠の侍女は位が一番下の侍女の事ですわ。雑事が主な役割で、下級士官や使用人の子が殆どです。白い花の飾りを付けるのが目印です」

花飾り。レネットが今付けているのはピンク色。花の中心に、それより少し濃い色の石が付いている。

「今は違うんだな」
「貴人様のおかげです」
「へ?」

聞き返す俺に、レネットがニコと嬉しそうに微笑む。

「最下層の地位にある無冠の侍女に過ぎない私めを、貴人様はなんの躊躇いもなく庇って下さいました。虐げられるのが当然とされ、どんな扱いを受けようと見向きもされなかった私を……お計らいにて、花冠の位を賜わりました」
「その色が、花冠?」
「はい。中級侍女の証です。本来、この位では皇太子様にお仕えはできません。でも、貴人様のおかげでお仕えを許されました」

はにかむ笑顔が可愛い。
俺は、ただ単に、女の子に暴力振るう野郎が許せなかっただけで、庇ったと言っても、あの馬鹿兄皇子を止めたのもいさめたのもカイザーだ。最終、動いてくれたのもそうだし、感謝されるような特別な事はしてない。
そう言えば、レネットが静かに首を振る。

「いいえ。確かに、動いて下さったのは近衛騎士隊長様です。でも、貴人様ほどの方が、私に目を向けて下さったからそうなったのです」
「そんな大層なもん?俺なんて、その~……ただ、血脈、、、の血をひいてるとかなんとかいうだけで、敬われるようなモノじゃ……」
「何を仰いますか!血脈とはこの大陸に於いては大変稀有なるもの!大層なモノにごさいますわ!!」
「そ、う?」
「でも……」

頬を染め、レネットが更に笑みを深めた。

「貴人様は……稀有であるなしに関わらず、とても尊くお優しい方です。たとえ、血脈が関係しておらずとも、貴方様のような方なれば、人は動く。そう、思いますわ」

そんな手放しで褒められると、身体中こそばゆくてしようがない。
ベールしてて良かった。
多分、俺、今、顔、絶対赤い。

「あ~……え、っと、部屋、早く、行こ?」

照れ隠しに、サッサと踵を返す。
そのまま、前を見ず、廊下の角を曲がりかけた俺の体が、何かに当たりバランスを崩す。
視界が効かない上に、不意で踏ん張れず、倒れる体を自分でもどうもできない。
思わずギュッと目を閉じ、痛みに備える俺の手首が掴まれ、思いかけず、力強い腕に引き寄せられた。










感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。