聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや

13.赤の皇国③




「な、に言って……⁈」

掴まれた手を振りほどこうと、力を込める。
相変わらず、大して力を込めてる風でもないのに手は外れない。
肘を曲げ、力を込めたままベール越しに睨みつける。見えないのは承知だが、睨まずにはいられない。

「怒ってる?刺々しい空気が感じられるね?」

先程までの口調が、元の砕けたものに戻り、何が楽しいのやらクスクス微笑むジオフェスに、苛立ちしか湧かない。

「美貌って……」
「うん?」
「見てもないくせに何を………」

根拠にと続く言葉は、ジオフェスの嬉しそうな笑みに消えた。

「あ!見せてくれるのかな?ベール取っていい?」
「ッッッ⁉︎」

よくない!!
軽く伸ばされた手から逃れるように顔を逸らす。
堪え切れないとばかり、ブッと吹き出すジオフェスに、益々苛立つ。
馬鹿にされてる揶揄われてるとしか思えないんですけど⁉︎ギリギリ歯軋りしそうなくらい腹が立つ俺とは裏腹、ジオフェスの笑みが益々深くなる。

「可愛いなぁ~!でも、駄目だよ?正体隠すのが目的なら、何言われても平然としてなきゃ」

ニコと笑われ、絶句する。
こいつ……!どこまで分かってるのか?
下手に口を開けず戸惑う俺と、同じく言葉をなくすレネットに、ジオフェスが飄々ひょうひょうと応える。

「『何で?』って思ってる?」

問いかけには答えない。
むっつり黙り込む俺に、が、ジオフェスが構わず口を開く。

「姫……かどうかは分かんないけど、少なくとも、女の子じゃないよね?」

黙ったままの俺に、ジオフェスが肩を竦める。

「体、硬くなった。合ってるみたいだ」

駄目だ……
この男。見た目も言動もチャラついてるのに……

「声はベールで篭ってるから何ともだけど、気づいたのは手、かな」
「手……」

手首を掴んでいた手が、俺の手に這わされる。
見ず知らずの男に手を触られる。
ハッキリ言って、不快以外何モノでもない!

「細くて長い指。肌は驚くほど滑らかで吸い付くみたいだ。だけど、皇族の姫君にしては、若干がたってるかなぁ。これが、町や村の娘なら気付かなかったかもしれないけどね?」

レネットが念の為と言って塗り込んでくれた香油は、この男の前には気休めにもならなかったらしい。
バレているなら、これ以上足掻いても滑稽なだけだ。
ハァッと、一つ大きく溜め息をつく。
掴まれた手を振ると、アッサリと離れた。

「今の状況で、正体を隠さないとならない。答えは一つ、だよね?」

ムカつくくらいに自信満々な様子に、腹が立ってしようがない。

「何が目的だ?」
「目的?」

つっけんどんに言う俺に、ジオフェスが首を傾げて見せた。
とぼけてんのか、演技か……白々しい!!

「蒼が血脈の力を手に入れた。赤はその事実確認しに来た。目的はそれに他ならないと思うけど?」

ジオフェスの答えは最もだ。
ただしーーーーー

「血脈の力は、どの国も欲しがってんだろ?ただただ確認するだけなら、わざわざ来る必要ない筈だ!何をしようってんだ⁉︎」
「あらら!意外と聡いんだね?」

わざとらしく、驚いた風を装うジオフェスにムカムカが収まらない。

「馬鹿にすんな!!」

意外とって何だ⁈
俺の事なんか知らないくせに!!
チャラさではキリアンと張るが、少なくとも、キリアンには苛立ちは感じなかった。

「言葉、普通になったね?そっちがかな?」
「質問に答えろよッ!」

煙に巻くようにはぐらかすジオフェスに食ってかかる。
怒れば相手の思うツボだが、どうにもこうにも怒りが収まらない。

「う~ん……何をって、、、」
「ッッッ!!!!」

体に衝撃を感じた時には、既に壁に押さえつけられた後。
しかも、ベールが外され、ジオフェスの顔と正面に見合わされた。
あっという間の出来事に、言葉が出ない。
固まる俺に、ジオフェスが軽く目を瞠る。

「血脈は美人揃いって聞いてたけど、ほんとだな。化粧は余計な気がするけどね?」

クスと笑うと、俺の唇が少し強めに擦られる。指に移った色にジオフェスが口付けた。

「なっ!」

ゾワっと背中に走った悪寒に、全身に鳥肌が立つ。

「き、き、き……」
「き?」
「気色悪いことすんなッッッ!!!!!」

喚いた俺に、ジオフェスが一瞬、ポカンとした後、ブッと吹き出す。

「初すぎでしょ?何、これ?可愛いすぎ」
「可愛い言うな!離せよッ!近いッッッ!!」
「そぉんな、嫌がられたら傷つくなぁ~」
「男に迫られる趣味はない!!」
「そう言われたら、益々……」

ジオフェスの言葉が、笑みと一緒に止まる。
首筋と肩に当てられた鞘に入ったままの剣。ジオフェスの肩の向こうで剣呑に光る紺碧。触れただけで斬れそうな研ぎ澄まされた気配に、俺の体から力が抜けた。
安堵すると同時に、自分でも情けないくらいに震える声が出た。

「カイザー……」










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