47 / 120
第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや
15.間違えた!!!!!
しおりを挟む「マヒロ………」
カイザーが呆然となる。
「”きす”とは何だ?」
?
???
?????
ーーーーーーーーーーーーーーーーきす?????
”きす”って……………………
「ッッッッ!!!!!」
一瞬、言われた言葉の意味が分からず、俺も同じく呆然とし、ゆっくりと考えてから一気に爆発した。
ま、ま、ま………………………
間違えたぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!
何をトチ狂ってんだ、俺は!
触れられて、嫌悪感を感じればただ勘違いになると考えた。故に、抱きしめるか何かをして貰おうとし、が、間近に迫ったカイザーの顔、唇を見つめていたが為、無意識に口走ってしまったようだ。
キス………通じなくて良かった。
「マヒ……」
「何でもないッ!!」
「何でもない事は……」
「気のせい気のせい!!」
「おい、、」
言葉をことごとく遮る。
冗談じゃない。
本気でキスなんかされ、それで嫌悪感すら感じなかったらマジで洒落にならん。
なかった事にしようと、ひたすらはぐらかす俺に、カイザーがしばし無言で見つめてきた後、深く溜め息をつく。
「意味不明な言葉の事はもういい。だが、話はさせろ」
「………する必要があるのか?」
「しない方が良くないだろ?」
質問に質問で返された。
話をしたいかしたくないかで言えば、正直言ってしたくない。さきほどの流れで気まずいし、ハッキリ言って居た堪れないから蒸し返したくない。
「別に…俺、気にしてないし」
「じゃあ、なんで怒った?」
「それ、、は!」
慌てて顔を上げた俺を、カイザーが真剣な顔で見つめる。
「確かに。血脈であるお前を、俺たちは利用しようとしているのかもしれない。お前の意に染まぬ事だ。不愉快なのは分かる」
そっちか。
カイザーの口から出た言葉にホッとして、少し落胆した。
キスについて言及されなかったのも、俺が怒ったのが、自分を利用されようとしたからだと思われた事に……
「お前を全力で守ると言ったのも、意に沿わない無理強いも、誰であろうとさせん!それは、今も変わらない」
「カイザー……」
俺が、カイザーも他の奴らと一緒と言ったあの言葉に対してらしい。
半ば癇癪起こして言ったようなものだが、そういう思いがまったくなかったわけでもない。
守るとは言っても、カイザーだって人に仕える身だ。ましてや、主人はあの腹黒皇子。優しいなりして、手の内を見せないあの皇子に命じられれば、カイザーだって……
「自分が言った事は守る。もう一度言うが、たとえ殿下であろうと、お前に無体な真似はさせない」
「本気?下手すりゃ、皇太子だけじゃない。俺を狙う奴らみんないっぺんに相手する羽目になんじゃねぇの?」
「それでも、だ。俺は、騎士だ。この国で頂点に立つ騎士隊長としての自負も、自信も意地もある」
真摯な視線に見とめられ、気持ちがザワつく。
好きか嫌いなら、俺はカイザーが好きなんだろう。まだまだ恋愛感情とは断定して言うには抵抗あるし、そういう意味で同性を見た事がないから、ハッキリとは言えない。
でも、胸に抱えているのは好意だ。
それは認めるしかない。
でも、、、じゃあ、カイザーは?
俺が何に対して怒ったのか今一分かってはいない。
けど、それでも全力で俺を守ると言ってくれている。
それはどうしてだろう?
俺が血脈だから?俺が貴人だから?
ジッと無言で見つめた後、そっと小さく息を吐き静かに目を伏せた。
前にも言われた筈だ。俺を守るのは近衛騎士隊長としての義務だと。
同じ答えを二度も聞く必要はない。
俺に対して、特別な感情を持ってるワケじゃない。
だったら、そうかもしれないというだけのこの感情を言うべきじゃない。
俺のこれがそうだったとしても、カイザーはそう返してくれる事はないだろう。
フゥッとゆっくりと息を吐き、気持ちを鎮める。
「マヒロ?」
「ごめん……落ち着いたから」
肩にかかったままだったカイザーの手にやんわり手を当て外した。
離される事を望んだのに、手の温もりを失くした肩がひんやりと冷えていく。
そっとその肩に目をやり小さく自嘲した。
『意味、分かんねぇ…!何がしたいんだよ⁈』
カイザーに投げつけた言葉。
俺自身にピッタリだと苦々しく思いながら…ーーー。
48
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる