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第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや
18.血より価値有りし①
カッと目を見開き、ガバッと飛び起きた。
立派な天蓋付きベッド。城でも、カイザーの屋敷でもない。見慣れないそこに寝かされていた。
「ここ……は?」
この世界に来てから何度目だ?
意識をなくして目覚めると、見知らぬ場所にいる。
展開が目まぐるし過ぎてついていけない。
城で最後に見た、スミレと翡翠の光。
妙な声の主との会話。
夢と現実がごっちゃになる。
ずん、と軽く重怠い頭の痛みに、片手で顔を覆い溜め息をつく。
ふと自分を見下ろし、知らずまた溜め息がもれた。
「また着替えさせられてるし…」
城で着ていた服じゃない。
濃い紫と黒を基調としたゆったりとした服は、着せられていた女物とは違いちゃんと男物だ。
ただ、どことなく優美感漂い、あきらか上質な感じがして居た堪れない。
チリと、耳元から小さな金属音。腕や指にも知らないアクセサリーがつけられていて、もはや諦めの溜め息すら出ない。
「何で…どいつもこいつも、人を飾り立てようとすんだよ?」
「綺麗なものはより美しく。そう思うのは、人として当然の欲だろう?」
ふいにかかった声に、俯けていた顔を上げる。
ギリっと睨む俺にも一切怯まず、声の主、ジオフェスが歩み寄ってくる。
「人を拐って着せ替え人形?あんたの悪趣味に付き合う気ないんだけど?」
「人形遊びも、そんな趣味もないな。まぁ、拐った事実は認めるけどね」
「嘘つき野郎!あんたの言うことなんか信じるかよ!」
「嘘つき?あぁ……何もしないって言った件に関しては、確かに嘘つきかもね」
クスと微笑するジオフェスを睨む。
開き直りやがった。マジ、ムカつく!!
油断なく構えながら、周りをチラと見回す。
逃げたいけど、場所が特定できなきゃ、闇雲に逃げてもどうにもならない。
「ここが何処か探ってる?心配しなくても、まだ、蒼の皇国内だよ」
「……………………あっさり教えていいわけ?」
嘘の可能性もある。
信用するわけじゃないが、問いかける俺に、ジオフェスが何が楽しいのかクスクス笑う。
「大丈夫だろ?逃げれないし。俺は、マヒロを逃がすつもりないし?」
俺が逃げれるとは微塵も思ってない。
飄々として得体が知れない。
見えない糸に雁字搦めにされてるような気持ち悪さが拭えない。
「目的はなんだよ?」
「目的?あらら、それ、聞く?分かりきった事だと思うけど?」
愚問だねと笑われたが、構わず口を開く。
「血脈を欲してるのは知ってる…だから」
「血脈……血脈、ねぇ」
「?」
何がおかしいのか、ジオフェスが笑い出す。
「どうでもいいなぁ~」
「はっ⁈」
吐き捨てられた言葉に耳を疑った。
俄かには信じられないそれに、戸惑い言葉に困る俺に、ジオフェスがニッコリ微笑む。
「赤の皇国にとったら重要だろうな。でも、俺個人にとっては、血脈なんかどうでもいい。マヒロは、赤の皇国の、それこそ俺にとっての今の地位や権力、財力全て、、かなぐり捨ててでも手に入れるべき存在だ」
「な、、、に、言っ……」
「マヒロにはそれだけの価値があるって事だよ?」
意味が分からない。
何もかも捨てても手に入れたい存在?
悪いが、俺は俺自身、自分がそんな価値ある存在だとは思わないし、思えない。
ジオフェスが何をもってそう言うのか?
あまりに意味不明で、突拍子もない言葉に、困惑を隠しきれない。
「まぁ、赤の皇国に属する軍人としては、命には従わざるを得ない。だから、マヒロは赤の皇国に連れ帰るけどね。本国の国の重臣の玩具にする気は更々ないな。マヒロは、俺自身が手に入れる」
「な、にを……ッッ」
泰然と構えるジオフェスの肩に、白いモノが現れ纏わりつく。
白銀に輝く鱗。赤い舌をチロチロさせ、スミレ色と翡翠色の異色の双眸が俺を見据えた。
白い蛇。
背には、薄く水色がかった透明な虫のような羽根がある。ただ、片一方だけ千切れたようにスジだけが残ってる。
「城でも見たよな?俺の聖獣。ルーウェン」
名を呼ばれた白蛇、ルーウェンがジオフェスの頬に擦り寄る。
目を閉じて、優しく体を撫でてやるジオフェス。
それだけ見たら、とても根っからの悪い奴じゃないとは思うが、だからと言って、このまま黙っていいなりになる気はない。
「とりあえず、マヒロにはもう一度眠って貰う。確証を得る為にも、もう一回試さなきゃならないし…」
あれはたまたまか?だの何だの、ぶつぶつ呟くジオフェスを睨みつけたまま、俺は寝台をジリジリ下がる。
「やなこった!!誰か言う事聞くかよ!」
「悪いけど、マヒロが聖獣妃である可能性が高いと分かった以上、俺も引く気はないよ」
「え……っ?」
告げられた言葉に目を見開く。
言葉の意味を問うより早く、眼前にルーウェンの異色の双眸が向けられる。
ギュッと目を閉じて顔を背けた。
もう一度眠らされたら、次はどうなるか分からない。
目覚めたら赤の皇国かもしれない。
蒼の皇国に二度と戻れなかったら?
脳裏に浮かぶ姿に、胸の奥がギュッと掴まれたみたいに痛む。
心の内で、今一番欲する名を呼んだ瞬間、体の奥が一気に熱を持ち、驚愕に目を見開くと同時に、周りが真っ赤に染まり上がった。
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