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第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや
19.心と心の距離
視界いっぱいの顔。間近で鑑賞に耐えうる美貌。
睫毛長い……
何て!悠長に考えてる場合じゃない。
あまりの状況に、内心パニック起こして硬直する俺に構わず、カイザーの唇が、俺のそれを柔らかく食んだ。ピクッと小さく震える肩を、カイザーがやんわり抱き寄せ………た、ところで、
「隊長~?こっち、拘束終わり……」
開け放たれた扉から、間延びしたキリアンののんびり声が聞こえた。
ビクッと俺とカイザーの体が同時に戦慄き、バッとお互い素晴らしい速さで離れる。
我に帰ったのか、居心地悪そうにソワつくカイザーを横目に、俺も気不味くて口元を手で覆い、二人から顔を逸らす。
状況を察したのか、キリアンがあ~、う~と小さく唸りながら、ポリポリと頬を指で掻く。
「すんません…あー、、、俺、邪魔でしたね?あっち行くんで、続き~……いだーーーーーーッッッ⁉︎」
急に痛みに呻き、キリアンが前のめりにたたらを踏んだ。背後にいるジディが腕組みし険しい顔。
蹴りを入れたらしい。
「いってぇなッ!!何しやがる⁉︎」
「うるさいですわ!お黙りなさい!」
すわっと目を剥くキリアンと、くわっと目を怒らせるジディ。二人してお互い睨み合う。
「少しは空気を読んだらどうなんですの?これだから本能で物言う無神経男と思われるんですのよ⁈」
「だから引こうとしてんだろ⁈何で、蹴るんだよ!!意味、分かんねぇ!!それに、誰が無神経男だ⁉︎」
「あなたですわ!!」
お互いがお互い、一歩も譲らない。
変な空気誤魔化せたのは助かるが、これはこれで場が騒がしいだけだ。
本気で喧嘩してるようで、この二人がお互い嫌ってないのは知ってる。だから、特に仲裁しようとは思わないが、、空気無視して戯れ合うのはやめて欲しい。
「隊長、申し訳ありません。ここは私が采配致しますので、マヒロ様を連れてお戻り下さい。馬鹿男も一応、居ますから大丈夫ですわ」
「おい!なんか変な言葉入れてんだろ⁈」
「任せていいか?」
「お任せ下さい!!」
「無視かッ⁈二人して無視かッッッ⁈」
喚くキリアンをガン無視して、カイザーとジディで話がつく。
「行けるか?マヒロ」
「大、丈夫……あ、れ?」
促され、歩き出そうとした足がカクンと膝が折れた。ガクガクと震えだした足に混乱した。
今頃になって帰れなくなるかもしれない恐怖が襲ってきたらしい。
あのまま、ジオフェスに眠らされてたら、恐らくここにはもう……
そこまで考え、ハタとなった。
あれ…?俺が帰りたかったのは………
別の混乱が襲い、愕然となる俺を暫し無言で見やった後、カイザーがおもむろに横抱きにしてきた。
「へ??」
思わずぽけっとなる俺に構わず、カイザーがジディに向かい口を開いた。
「屋敷に戻るから、何かあればそっちへ来い」
「かしこまりました」
状況を見えてないわけないのに、至極普通に振る舞うジディに、我に帰った俺の顔と体が一気に熱くなった。
よりによって、ジディがいる前でお姫様だっこ⁈
恥ずかし過ぎる!!
「お、降ろせ!カイザー!自分で歩け…「ないだろ?暴れるな。落ちるぞ?」
「~~~~~~~~~~!!」
しれっと言うな!
歩き出しながら言うカイザーを見上げて訴えるが全く意に介されない。
「重いだろ⁈」
「いいや、全然。むしろ、軽すぎる。下手すればジディより軽いんじゃないか?」
「ジディ抱き上げた事あるわけ⁈」
「いや……ないが」
ジディとまさかそういう事がと、思わず問う俺に、カイザーが応え、返答に知らずホッとした。
ホッとしてからハッとなり、思わず狼狽える。
何だよ……ホッとって、、、
「最低…ないのにそういう事言うなよな?セクハラだぞ?それ……」
「せく?何だ??」
「何でもない…それより、降ろせってば。女の子じゃねぇんだから、歩ける……」
「女とか男とか関係ないだろ?弱ってる時は素直にしてろ。それに、この方が早い」
「そ、、だけど…でも」
「嫌なら仕方ないが?」
「そ、、、!な、、、!!」
その聞き方はズルい!!
そういう言い方されたら答えらんない。
「屋敷に帰ったら……悪いが、話さなきゃならん事、聞かなきゃならん事がある。休ませてはやれん。今の内に少し休んでろよ」
「分かった……」
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