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第2章 聖獣妃
3.危険な接触 君子危うきに近寄らずとは言うけれど…②
動くなら、動いた方がいい。
それに、神殿があんな事になってしまった以上、もうそれしか方法はない。
そう。あの男に、直接聞くしかないのだ。
「絶対、何か知ってる!じゃなきゃ、あんな事言わないはず…」
聞いて、帰り方が分かれば良し。分からなければ分からないで、あの意味深な言葉と、変なメモ。何故、俺の居た世界の言葉で書かれていたのかは聞きだす。
帰り方……聞いて分かったら、俺、どうすんだろ?
神殿に招かれた辺りまでは絶対、帰る気満々だった。
でも、今は?
考えがどんどん深まりそうになり、慌てて首を振り、考えを振り払う。
「今はそれは後回し!とりあえず、レーヴェに会って、話聞いてからゆっくり考えよ!」
深呼吸し、気持ちを鎮めた。
差し当たっては、屋敷からどうやって抜け出すか?
「あんな事の後だしな…絶対、何もないわけ、、、ないよな?」
「ないね」
「だよなぁ……ッッッ⁈」
呟きに返された言葉に応えてから、ハッと我に帰る。
バッと振り返る俺が叫ぶ……前に、口が手で塞がれた。見開いた目に、苦笑する整った顔。
また⁉︎
眉を顰めて睨む俺に、手で口を塞いだまま、ジオフェスが指を立てた。
「2回目。静かにね?」
目を怒らせ、思いっきりガンつける俺に、ジオフェスが溜め息をつく。
溜め息つきたいのは俺だ。
「どうしてここにいるのだとか、どうやってだとかは説明するから。騒がないでくれる?」
今となっては、こいつに関しての信用性は、ゼロどころかマイナスだ。
本音で言えば、騒いで兵を呼んでもらい突き出してやりたいが、先に言われた二つに関しては確かに気になる。
赤の皇国に関しては、それなりの沙汰が下ったはずで、今現在、その当事者であるジオフェスがここに居るのは腑に落ちない。
ジッと見つめてみるが、ジオフェスがこの状態でそれ以上何か言うつもりはないらしい。
静かにゆっくり頷くと、手が外される。
「安心して、と言っても無理か?まぁ、心配しなくても、もう何かするつもりないから大丈夫だ。というか、できないんだけどね」
「どういう事だ?」
「これ」
と言って、ジオフェスが自分の右手首を見せる。青色の複雑で凝った紋様が、ぐるりと手首を一周し、ブレスレットのように見える。
「何、これ?」
「隷属印。蒼の皇国の持ちものの証。これがある限り、俺は蒼の皇国に仕える者。特に皇族や、それに属する者に害は為せない」
手枷だ。ペナルティ付きの手錠みたいなもの。
「何でそんなモン付けられてんだよ?」
「元々、赤の皇国から密命受けてさ、それ実行する為に来たんだけど失敗したからな。まぁ、失敗したのは、俺が欲出したせいでもあるし?自業自得なんだろうけど。成功して、血脈を手に入れれば良し。失敗すれば切り捨てられるは当然。だから、赤の皇国は俺を政治犯扱いして切り捨てたわけ。でもって、俺の家、ラインハルト家も、俺とは無関係って絶縁ね。赤の皇国に不利益になる俺は、あの国の領土に一歩でも足を踏み入れれば、その場で殺されても文句は言えない。投獄されてさぁ。帰る場所なくして、これからどうするかなぁって考えてたら、蒼の皇太子に腕を買われて、しばらく隷属して大人しくするなら引き立ててくれるっていうから?まぁ、悪い話じゃないしで乗ってみました」
「……………………」
呆れて二の句が継げない。
言える事はただ一つ。
あの腹黒皇太子!何してくれてんだ⁉︎ーーーーだ。
ヤバい…あまりの事に、頭がクラクラする。
「で?その、あんたが何でここに?最初もそうだけど、どうやって入ったんだよ?」
「あぁ、それは」
ジオフェスが笑い、その肩に白い蛇が現れる。
「あんたの聖獣?ルーウェンだっけ?」
「そ。ルーウェンは聖獣なんだけど、魔物の性もあるんだ。空間を移動する力を持ってるんだよ」
「魔物……」
そういえば、カイザーが魔物の中にはそういう力を持つものがいるって言ってたような?
ジッと見つめる俺に、ルーウェンが色違いの目で俺を同じく見つめる。邪悪な気配は感じない。どちらかと言えば、澄んだそれで、白い鱗に覆われた体はツルツル綺麗。
思わず出を伸ばした俺の腕に、ルーウェンがジオフェスの肩から降りて絡みつく。
俺の肩に移ったルーウェンが、頬にスリスリしてくる。きめ細やかな鱗は肌に引っかかる事もなくつるつるスベスベ。
蛇と思ってちょっと怖かったが、ヤバい。可愛い……
自分に構わず、主人でもない俺に甘えまくるルーウェンに、ジオフェスが苦笑する。
「そういうの見たら、マヒロはやっぱりって思うなぁ」
「………俺は、違うって!だって、、、」
「そうなら、そうじゃなくても、マヒロは魅力的だよね。カイザーのモノって分かってても、諦めるのは惜しいなぁ」
「俺は……」
カイザーのモノという言葉に、心臓がドキとなる。
カイザーの事は好き。でも……
「マヒロ?」
「何でもね……それより、ジオフェス。頼みがある」
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