聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
59 / 120
第2章 聖獣妃

3.危険な接触 君子危うきに近寄らずとは言うけれど…③




部屋の扉を叩く。
カチャリと音がし、淡いスミレ色の髪の青年が出てきた。

「お入り下さいませ」

促され入室する。
ソファに座り、優雅にカップを傾ける者の前に立ち、臣下の礼をとった。

「お呼びと伺い参りました。皇太子殿下」
「そ。ご苦労様」

口元に笑みを浮かべ、カップをテーブルへ置く。
金色に輝く髪に、同じく金の光彩を放つ瞳。白く抜ける肌の美貌を惜しげもなく晒す。優しげな風貌でありながら、その実、目の前の青年が見た目通りでないことを知っているだけに惑わされる事はない。
ツイと視線を向けられる。

「赤の……あれはなんて名だったかな?」
「ジオ…ジオフェスにございますか?」
「そうそう。上手く使えば役立ちそうだし、腕も相当立つみたいだからさ。とりあえず、しつけの意味で隷属印課して、傍に置く事にしたよ」
「…………簡単に屈するに無き者にございますれば、手懐けるは困難かと…」
「さすがは、相手をよく知るだけあるね?幼馴染とか?」
「古き縁です……」

国が二つに分断する前には親しくしていたし、お互いを高め合う為一緒に腕を磨きもした。が、国が別たれたあの時から……

「面白い話を聞いたよ?」
「ジオが何か……ッ!」

ズンと重く鈍い音とともに、軽い痛みが肩に走る。
鞘に収まったままの剣が、肩にのしかかる。
皇太子の証しである剣。

「カイザー。私に何か報告は?」

ふんわりと柔らかく、どこまでも柔和な笑みを浮かべる皇太子。
これは、かなり怒っている。と、いうか盛大に拗ねている。
原因は分かっている。
おそらく、が耳に入ったのだろう。話を吹き込んだのはあの男だろう。
マヒロとの約束もあり話すつもりはなかったが、知れてしまったならこれ以上隠し立てもできない。
ハァっと溜め息をつく。

「まだ、そうと決まったわけではありません…」
「そういう片鱗へんりんがあったなら報告すべきだろう?何にもないのに、こんな話が出てくると?」
「ジオが勝手にそう申しているだけで…」
「カイザー」

話の途中で名前を呼ばれる。ふんわりと柔らかく、語気も穏やかだ。威圧されたわけでもないのに、言葉を途切れさせられた。

「話の途中で遮るのは、些か、不調法にございます」
「血脈は希少だ。マヒロがそうなら喜ばしい。が、もし、マヒロが聖獣妃ならそれは血脈以上。それ以上はないくらいに素晴らしい事だ」

少し前なら…まだ、マヒロとまみえた直後なら、自分もそう思っただろう。
が、今は、素直には認められない。
マヒロは血脈ではないと分かっているし、自分がそれ以上の存在とも思っておらず、尚且つ、皇国間の争いごとや、軍事力に利用されるのを良しとしていない。
自分の居た場所に戻ることを願ってもいる。
蒼の皇国に仕える身なら、聖獣妃の可能性が極めて高いマヒロは、本人の意思に関係なく留めおき、囲い込むのが騎士として正しい在り方なのだろう。
勿論、するつもりは毛頭ない。
たとえ、国を裏切ることになろうとも、マヒロを裏切るつもりはない。
求める気持ちに全力で蓋をしてでも、マヒロの望みを叶えるつもりだ。

「少しでも変異あれば報告…何においても手抜かりないカイザーにしては、らしくないよね?マヒロに関しては、わざと隠したがっている……と、いうより」
「別に他意は……」
「失礼いたします」

言い募ろうとした言葉の途中で、スミレ色の髪の侍従の青年が声をかけてきた。

「皇太子殿下。貴人様を狙う派閥が動いたようにございます」
「やれやれ…赤を片付けたと思ったら、今度はまた別の騒動?いよいよもって、マヒロはその可能性が高くなる一方だね」

苦笑する皇太子に、俺は逆に頭が痛くなるのを感じて溜め息をつく。
屋敷に置いておけば大丈夫だと思ったが、無駄だったようだ。

「派閥の中心は?」
「第一皇子殿下ですね。ですが、彼の方にそのような知恵と実行力がお有りとは思えませんので、おそらく、企てた者は別に居るかと」

中々に毒舌な侍従だ。遠回しとはいえ、仮にも皇子殿下を馬鹿呼ばわりだ。
俺の無言の視線を受け、侍従が軽く目礼をして引き退る。

「兄上にも困ったものだ。権力への執着が捨てきれないと見える」
「だからといって、貴人への狼藉ろうぜきは許されません」
「聖獣妃を手にしたなら、皇太子を軽く抜いて一気に、それこそ蒼の皇国この国を手中に収めることすら容易いだろうね」
「縁起でもないことを仰らないで下さい」
「事実だよ。それに………むしろ、私は、兄上の欲の幾ばかりかでもいい。カイザー、お前に持ってもらいたい」
「リステア様……そ、れは」
「権力があっても、欲しいものを必ず手にできるわけではないんだけどね…だけど、権力がなければ、欲しいものを手にすることすらできないのもまた事実」

言葉をなくす俺に、皇太子がニッコリと笑う。

「兄上にはそろそろ引いて頂こうか。カイザー、私の期待を裏切らないことを願うよ?」

この件をきっちりと治めろという意味なのか?
それとも、、、









感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。