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第2章 聖獣妃
4.解放
『ーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!』
*
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ヒュッと勢いよく息が喉に流れ込んだ。
カッと目を見開き、飛び起きると、盛大に咳きこむ。
ハァハァッと、肩で息を吐き、額に手を当てる。
直前に何かの記憶のようなものを見ていた気がするが、まったく思い出せない。
この世界に来てからおかしな夢や断片的な記憶をよく見るが、身に覚えもない。
「一体、何なんだよ?……俺の、なのか?だんだん酷くなるし……」
ふぅっと息を吐いてから、ハッとして顔を上げた。
見慣れない調度品の一室。カイザーの屋敷じゃない。
また、部屋が変わった。
「また?」
思ったその言葉に首を捻る。
何故、そう思ったのか、自分でも分からず狼狽えた。カイザーの屋敷からどこかへ向かおうとしていたのはたしかだ。だが、それが何処なのかが分からない。
「ここ、、は?」
俺が向かおうとしていた場所だろうか?
必死に考えても分からないし思い出せない。
何故、こんな場所で眠っていたのかも分からない。ぼんやりと浮かぶのは、誰かに会っていたという事。
「だ、めだ……分かんない。俺、何して…?」
「目が覚めたようだな?」
「!?」
不意にかかった声に、バッと振り返る。
1人掛けのソファに、ゆったりと足を組んで座り、不遜に俺を見やる人物。
「第一皇子?」
相手はあのいけ好かない第一皇子。
相変わらず、傲岸不遜を盛大に滲ませた残念な皇子だ。
会っていたのはまさかこいつか?
一瞬考え、それを打ち消した。
疑うべくもないし、まず、百パーない!
そもそも、あの一件以来、まったく顔も見てなかった相手だ。
「何であんたがここに?そもそも、ここ何処だよ」
「相変わらず無礼な奴め!!皇子たる俺に、きちんと話す事はできんのか⁉︎」
「……………………」
じゃあ、皇子らしく敬いたくなるよう振る舞えよ、とは思ったが言うのをやめる。
言ったが最後、ギャアギャア騒ぎ立てるだろう。面倒くさい事はしたくない。
目の前の皇子に一旦聞くのは諦め、周りをそっと伺う。
置かれた調度品は華やかかつ豪華な物ばかり。やはり見覚えもないそれに、ここが何処かは伺い知れない。
それに………
寝かせられていた寝台から起き上がった自分を見下ろし、毎度ながらゲンナリして溜め息をついた。
「ふっ!感動せずとも良い!そのような設えの衣装など、俺にかかれば用意させるは造作もない事だからな。些か地味ではあるが、まぁ、所詮は作り売りの物だ。仕立てでない事だけがやや不満ではあるが………」
うんたらかんたら…一人でベラベラ喋る第一皇子は完全無視!
煌びやかな衣装に着替えさせられた自分を再度見やり、頭痛と目眩を起こしそうで、思わず額に手を当てて俯く。
何で誰も彼も、人を……言うのやめよ。
盛大に溜め息をつき、言葉を飲んだ。
「そんな事より、俺はどうしてこんな場所に?何で、あんたがいるんだ?そもそもここ何処?俺をどうする気?」
さっきも言った台詞に、新たな質問を織り交ぜ問う俺に、やや鼻白んだように一瞬顔をしかめてから、第一皇子がフッと小馬鹿にしたように笑う。
「ここが何処かなど貴様には関係なかろう?貴様…聖獣妃は俺のものとなるのだ。そのような質疑は無意味だろう」
「は?」
言われた意味が分からない。
何故、俺がこいつのものになるのか?それもそうだが、一番困惑するのは……
「聖獣妃って……なんで、それ?」
「知ってるのか、か?言う必要があるか?知る必要もあるまい?」
ニヤリと笑うその笑みに、ゾッとした寒気が襲う。
マズい。ヤバい。絶対、面倒ごとだ。
頭の奥で危険だと警鐘が鳴る。
慌てて飛び起きようとするが、体が上手く動かない。手足に力が入らず、痺れたように小刻みに震える。
「俺に何した⁉︎」
「せっかく捕まえたのだ。逃げられては元も子もない。少しばかり、体の自由を奪う薬をな」
「ッッ!!」
ククッと笑うその笑みに、怖気と怒りが込み上げる。
残念な上に見下げた根性。ロクな奴じゃない!
「最低野郎ッッ!俺に何しようってんだ⁈」
「言ったであろう?聖獣妃は俺の物、というより、聖獣妃は現れた国の皇族のものになるのが慣例だ。それ以外では財力と権力が足りず、他国へ奪われかねん」
「なっ……⁉︎う、そだ!」
「嘘ではないぞ?実際、皇族以外の手を取った歴代聖獣妃の末路は悲惨なものだ。まぁ、誰の手も取らず逃げた者も多々いるが…よって、貴様は皇族たる俺のもの。まぁ、俺としては、美女を希望としたがな。無礼さと口の悪さは頂けんが、貴様の見てくれはまぁまぁだ。その気の強さも、無理やり捩じ伏せて征服したくなるものがある」
ニヤニヤと笑う笑みに、頭のてっぺんから足の先まで、一気に鳥肌が立った。
無理ッッ!!百パーどころか、千も万もこんな奴無理だ!
上手く動かせない体を必死に捩り、寝台の上を後退る俺を追い詰めるように、第一皇子がにじり寄る。
「来んなよ!!あんたなんか願い下げだ!」
「その気の強さがいつまで保つかな?一度抱いてしまえば俺のもの。用はなくなるが。従順にしていれば可愛がってやらんこともないぞ?」
「だ、れがッッ!!や、めろ!来んな、触んなッッ!!」
足首を掴まれ引っ張られる。
蹴り上げようとした片足は、のしかかる体に押さえ込まれてしまい動けない。
振り回した両手首を掴まれて、いよいよ抵抗が防がれる。俺だって男だ。本気で抵抗している。
が、大人の男の力がここまでなんて知る由もない。
自分がこんな扱いを受けるなんてのも………
「触るなッ、離せっ!!俺は聖獣妃なんかじゃ……たとえそうだって、俺をどうこうする必要ないだろ⁈」
「必要はある。精を結ばねば、血に刻むことができないからな。俺も男相手は初めてだが、まぁ、女と変わりなかろう」
片手で両手を抑えられ寝台へ押し倒された。
襟元にかかった手が勢いよく引かれ、ビッと布が裂ける音が響く。
「や、だ!嫌だッッ!!」
「諦めろ。貴様に思う相手がいたとして、皇族でなければ所詮無駄な思いだ」
言われた言葉にガンと殴られたような衝撃を受け、一瞬、真っ白になる。
脳裏に浮かんだ姿に、胃の奥と頭の中が一気に熱くなった。
何か来る!!
止められない!!
「い、や……や、だ……カ…………」
喉から出かかった名前を覚えた瞬間、体の中の何かが爆ぜた。
『カイザーーーーーーーーーーッッッッ!!!!』
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