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第2章 聖獣妃
5.目覚め 聖獣、吼える①
ビリビリとした雷電のような痺れと、圧倒されるまでの力の奔流を感じ、体が一瞬固まる。
瞬間詰まった息を吐き、治まったそれに言葉が出ない。
問答無用の制圧と屈服。
言い表すとしたらそれだ。
「す、ごいね……聖獣妃の力を目の当たりにしたのは初めて、だけど…これほどとは」
「リステア様!大事ありませんか?」
「大丈夫だ。それより……」
がくりと、ソファに手をつく皇太子に歩み寄り声を掛けた。
離れている俺たちですらコレなら、間近に見れば……
「兄上は馬鹿な真似をなさった。聖獣妃の怒りは神の怒りに匹敵する。最悪な事にならなければ良いけど……」
「マヒロが殺めるとは思いませんが、力が制御できねばそれに近い事も起こりうるかと…」
「マヒロが真の聖獣妃なら全てが許されるよ」
「なれど、マヒロは……あの性格と気質では…」
溜め息をつく俺に、皇太子が苦笑のみ浮かべた。
そうなれば、傷つく。
マヒロは気が強い。思った事もズケズケ言う。
が、心根が素直で優しいから、おそらく傷つきやすい。たとえ、自分を害そうとした相手であろうと、怪我を負わせたり、ましてや殺めたりなどすれば、あとで必ず傷つき泣くだろう事は、想像に難くない。
いや、むしろ…今も既に、、、
「さて、と…兄上が動いて、先程の力の解放とくれば、マヒロは間違いなくあちら側にいるわけだが。問題は今、どこに居るのか、だね」
屋敷の警備と監視は強固だ。マヒロを浚うのはまず無理。となれば、マヒロが自ら動いた、としか思えない。
が、マヒロが向かう先の検討がつかない以上、闇雲に動くわけにもいかない。
「手、貸そうか?」
「ジオ⁉︎」
するりと、不意に聞こえた声に振り返る。
壁にもたれるようにして、ジオフェスが腕組みしこちらを見ている。
「入室を許可した覚えはないよ?ここは、私の執務室なのだから、弁えて欲しいな」
「失礼を。隷属しているとはいえ、育ちが悪いものでして」
悪びれなく答えるジオフェスに、皇太子がやれやれとばかりに肩を竦める。
「ジオ。手を貸すとはなんだ?」
「う~、ん…まぁ、その~、、先に謝っとくけど、マヒロに手を貸したのは俺でさぁ。まさか、こんな事になるとは思わなかったし?」
ジオフェスを睨みつける。肩を竦め、ペロと舌を出すのを、益々、剣呑に睨むと溜め息をつき観念する。
「分かったよ、ごめん!だから、手、貸しに来たんだよ」
「貸す?当然だろう?」
「はいはい……なんだよ………じゃないか」
「なんだ?」
ぶつぶつ言うが聞こえず問うと、何でないと、再度肩を竦めた。
「マヒロが聖獣妃なのは間違いようもないみたいだね?力が完全なのかどうかは分からないけど、現に、先程の力の余波だけで、私たちの聖獣が出せなくなってる」
皇太子の言葉で、その事に今更ながら気づく。
シュラインもイライザーも、存在を消したかのように無反応。本来なら皇太子を守る為に現れるはずの聖獣も出てない。
小さく溜め息が漏れる。
そんな不測の事態が起きているのに、主君に指摘されるまで気付かなかった。
そのくらい、マヒロがあちら側の手に堕ちた事態が、俺の中で動揺を誘っていたらしい。
自分でもその事に愕然となる。
「おい…もし、そうなら、お前の聖獣もだろう?手を貸すのは無理じゃないのか?」
ジオの聖獣の力は知っている。
が、聖獣が聖獣妃の力で制圧を受けているのなら、出すのは無理で……
「いや、まぁ、ルーウェンもかなり影響されてるよ?ただ、ルーウェンは魔物の性もあるから、まだ、かろうじて出せる。長くは保たないし、転送も一人が限界だけどね」
力の余波が今尚強くなる。かろうじて抵抗できてるジオの聖獣も、その内、制圧の内に入る。そうなれば、マヒロを探し出すのは困難に……今なら、まだ間に合う!!
「俺が行く!ジオ、マヒロの所へ俺を転送しろ」
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