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第2章 聖獣妃
8.触れる熱②
視界いっぱいに映る端正な顔。
今までに受けたそれとは異なり、強めに深く奪われた口付けは、俺の思考も一気に吹き飛ばす。
腰と背中に回された腕から伝わる熱が熱い。冷え切った肌は暖炉で温まりだしていたが、触れられた熱の方が遥かに熱い。
呆然とされるがままだった意識が我にかえる。
身動ぎ唇を解く。
触れられるのが辛い。辛すぎる。
腕を突っ張り、体を離そうとするが、逆に先程よりも強く引き寄せられる。
「や、だってば!カイザー!!離せよッ」
「マヒロ!」
「あっ、、!!」
振り解こうと無理矢理捩った体がバランスを崩す。後ろ向きに床に倒れ込む。
咄嗟の事で受け身が取れない。
衝撃と痛みを思い、ギュッと目を閉じたが、体が受け止められように支えられ、目を開けた。
背中から倒れ込んだカイザーの体の上に、覆い被さるように乗っていた。
「ッッ…………!」
顔を顰めて目を閉じるカイザーに、慌てて体を起こす。
「ご、ごめ……っ!」
体を離す俺を、カイザーが再度引き止めることはない。
すんなりと今度は体が解放され、安堵の中に落胆が僅か混ざる。
自分でも勝手すぎるのは分かる。
それでも、こんなにあっさり離されてしまうと、やっぱりこの腕は自分のものにはならないんだと言われているようで悲しくなった。
「何がそうさせてる?……」
「え………?」
俯き、押し黙る俺の頬に手が当てられる。伏せていた目を上げると、カイザーのそれと視線が合う。
静かにヒタと見つめられ、言葉がすぐに出ない。
言ってしまえばいい。
それは自分でも分かってる。
ただ、一言で済む。
でも………想いに応えてくれるとは限らない。
カイザーは騎士だ。この国の騎士の最高位にある近衛騎士隊長。なら、この国の為にならない事はしないだろう。カイザーが俺に応えてくれるとは………思えない。
そこまで考えて、内心、溜め息をつく。
俺………いつからこんな弱くなった?
考えが暗すぎて自分で自分が嫌になる。
頬に当てられた手に自分の手を重ね、一度目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
外しかけた手が、頬から外れたカイザーの手に抑え込まれた。
「このままでいいなら俺の手を外せ。だが、外せばそれっきりだ…俺もお前も、お互いが歩みを止める。それ以下になる事はない、、が………それ以上になる事もない」
「ッ…………⁈」
下から挑むように言われた。
言われた内容に目を瞠り、反芻する内に、だんだん腹が立ってくる。
そんな気もないくせに!
まるで気を持たせるかのような言い草に、上に乗った体勢で思いっきり睨みつける。
「どういうつもりだ⁈そんな言い方したら誤解する!俺を…そういう風に思ってるんじゃないだろ?だったら、そんな………」
「そういう風に………な。確かに、思ってなかったな」
「そ、だろ?だったら…………、、、???」
言われた言葉にキズつき、顔を逸らし……かけてハタとなる。
思ってなかった???過去形?????
狼狽える俺を腰の辺りに乗せたまま、カイザーがゆっくりと体を起こした。
そのまま膝に座った形で、カイザーと向き合う。
言われた言葉が上手く処理できない。
「ちょ、まっ、え??な、に?ど、、?」
「確かに、これまではそういう風に思ってなかった…いや、違うか…思わないようにしていた、だ」
「カ、、イザー?」
抑え込まれていた手が外され、手首を撫でさするようにスルリと撫でられ、指を絡めるように手を結ばれた。
正面から見据える紺碧の光に見つめられ、視線が固まったように動けない。逸らしたいのに逸らせない。
「カ、カ、カイザー⁉︎手ッッ、手、外れた…ッ!か、ら」
「俺が外した。お前が外したんじゃない」
「ッッ!!!!!」
確かに外したのはカイザー。俺が外したんならそれっきりとか何とか言ってたが、まさか、こんな揚げ足取られるとは思わない。
っていうか…………
「お、お、ちつけ!カイザー、なんか、ちょ、ちが……」
「お前が落ち着け。違うか?何が?」
「な、にが…ッて!」
何がって全部違う!
今までと、何もかも。そもそも、カイザーは俺の事をなんとも思って、、、、、ない、、ハズ?
「え?あれ?でも……いや、だって!」
一人パニくる俺に、カイザーがフッと小さく笑む。
思わず見惚れそうになるくらいにサマになってるそれに、俺の動揺が激しさを増す。
絡め取られた手が持ち上がり、指先に小さく口付けられた。
「う………」
「う?」
うっきょーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!
指先に口付けたまま、流すように視線を寄越された。
顔が一気に熱くなる。外そうと躍起に動かす手は、がっちり絡められたまま外れない。
「ちょっ、と!な、なんで⁈だって、違うだろ⁈」
「だから何が違うんだ?」
再度問われるが、言葉が出てこない。
触れられたところが熱すぎて……
少し手を伸ばせば触れられるところにカイザーの体がある。
触れたいけど、触れられない。
だって………
「カイザー、は……」
「マヒロ……」
駄目だ。
目の前がだんだん霞んでいく。
カイザーの顔がぼやけて見えなくなってく。
言いたい事は別なのに、俺の口が紡ぐのは違う音。
「俺の、ものにならな……」
目端から溢れたものが零れ落ち、視界が一瞬クリアになる。
目を瞠り、スッと柔らかくカイザーの瞳が緩む。
子どもや女の子じゃあるまいし、自分でも情けないとは思うしみっともない。でも、こんなに感情がぐちゃぐちゃになるくらい……
紺碧と、柔らかな吐息が近い。
不意打ちで幾度か受けたそれを、今度は自分から欲して、ゆっくりと目を閉じたーーーーーーーーーーーー
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