聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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第3章 翡翠の剣姫

1.嵐の予感②




バタバタと騒がしく、『お待ち下さい!』とか『なりません!』だとか、慌てふためく制止の声などが扉の向こうから聞こえてきた。
ややもし、バタンッと、ノックもなしに部屋の扉が開け放たれた。
ハァハァと肩で息をつく青年が、艶やかな黒髪を若干乱れさせて立っている。
走ってきたのか、顔が上気していた。

「マヒロ……」

いきなり部屋に、ノックもなしに飛び込んできた無礼を、名前を呼ぶ事で軽く諌める俺に、青年、マヒロが視線を向けてきた。俺の姿を認めた瞬間、髪以上の漆黒に煌めく瞳がホッとしたように緩まる。
まるで雛鳥が親鳥を見つけて安心したかのようないとけなさに、諌めようとしていた気持ちが危うく萎みかけ、軽く咳を払うことで気を引き締めた。
起きたら着せるよう渡していた服を身につけたマヒロが、軽く早足で部屋へ入ってきた。
傍まで寄り、ハァッと大きく息を吐く。

「起きたらいねぇし…城に呼ばれたって聞いて焦ったじゃん…」
「召し出しがあっただけだ」

何を焦る必要が?
訝しむ俺に、マヒロが胸元に手を当てて寄りかかる。今までと違い、マヒロの俺に対する距離が明らかに近い。手に入ったその距離に、内心、密かに満悦を覚える。

「随分と親しくなったようだね?」

少し苦笑の入った声がかかった。
椅子に座り、両手を組んで肘をついたリステア皇太子が、ふんわりと笑んでこちらを見ている。
イタズラっぽく笑むそれに、俺が口を開く前に、マヒロが前を遮るようにして口火を切った。

「悪いのは俺だ!カイザーは悪くない!!」

            *
            *
            *
            *
            *

部屋の中に沈黙が一瞬。
リステアは目を瞠り、カイザーは呆気にとられた後、顔を手で覆う。

「な、んだよ⁈意味、分かんないわけ?だから、カイザーは悪くねぇんだってば!!」
「マヒロ、、あのな…」

ハァ~ッと、深く溜め息をついたカイザーが口を開き、、かけてリステアに手で制止された。苦虫を噛み潰したような表情で口をつぐむカイザーに、リステアが軽く笑み、俺へと向き直る。

「カイザーが悪くないとは?いきなりやってきて、部屋へ飛び込むほどの重大事かな?」
「だって!聖獣妃って、リステアたち皇族のモンになるのが普通なんだろ?だけど、俺とカイザーがくっついたから、だから、駄目だって言う為にカイザーを呼び出したんだろ⁈」
「ふむ?なるほど……で?」
「で!だから、リステアはカイザーが俺を誘惑したとか、なんとか誤解して、カイザーを罰しようとしてるんじゃないかと思ったんだ!!だからッ、、」
「マヒロ………」

ふんわりと微笑みながら相槌あいづち打つリステアに対し、カイザーが顔を覆ったまま項垂れてしまう。
やっぱり、怒られたんだ!!
予感的中だとばかりに睨む俺に、リステアがクスクス笑う。

「確かに、聖獣妃は本来、皇族の元に来るのが慣例だな」
「バカ兄……じゃなくて、第一皇子も言ってた。でも、俺はそんなのやだからな!!好きでもないやつと一緒になるなんて真っ平御免だ!」
「うん、まぁ、我がバカ兄なら言うだろうね。だが、言うにしても理由があるのも事実。それは聞いたのでは?」
「聞いた!でも、俺からしたらそんなの知ったことか!」

フン!と吐き捨ててやると、リステアがプッと吹き出す。

「さ、さすがにそういうわけにはいかないんだけどね?まぁ……
「それはそっちの都合だろ?絶対、皇族じゃなきゃ駄目って横暴すぎんだろ⁉︎」
「う~、、、ん?これは…どうしたものかな?」
「別に、リステアの事が嫌いとかそういうんじゃなくてさ…ただ、俺は、その…カイザーの事が、す、好き、だから…カイザーじゃなきゃ、駄目っていうか」

さすがに気恥ずかしいが、言うべきことは言わなきゃならない。困ったように微苦笑するリステアに構わず何とか言い切る。

「お姫様。私の話を聞く気はないのかな?」
「姫って言うな!!話って、どうせ駄目だって言うんだろ⁈聞くだけ無駄じゃん!!」
「聞く前から駄目だと、自分で決めつけるの?」
「聞かなくたって分かる!聖獣妃はどの国も欲しがってるんだろ?個人のものになるのにいいって言うわけないじゃん……!!」

変わらず笑みを浮かべたまま、ふんわりと話すリステアに、だが、俺はむくれたまま噛みつく。

個人のものになるのであれば、歓迎できないね」
「やっぱり!!引き離そうったって無駄だからな!俺とカイザー、もう、やる事やって、身も心もガッチリがっつり結ばれたから!」
「おやおや、それは…」
「殿下、、もうこれ以上は……マヒロももうやめ、、」

愉快そうに笑うリステアを睨みつける。
俺とカイザーぐらいなら、皇太子の権限で簡単に引き離せるとでも思ってるのか?
余裕ぶっこいて、落ち着き払った態度がムカつく!
カイザーがゲンナリしたように止めに入るが、勿論、俺は引くつもりはない。

「やる事ってことは、カイザーと体の関係を?」
「そうだよッ!!」

この世界が貞操ていそう観念かんねんがはたしてあるやら分からないが、少なくとも『お手つき』となれば問題は生じる、、ハズ。
俺がこんなに奮闘ふんとうしてんのに、カイザーは何やら遠い目をしだした。
少しは協力する気はないのかと、詰め寄ろうとした俺を遮るかのように、パンッと乾いた音が響いた。
音の正体は、リステアが両手の平を合わせて打ち鳴らした音。

「素晴らしいね!」
「は??」

ニコニコと上機嫌のリステアとは対照的に、俺の眉間にシワが寄る。
皇族以外のものになるって言ってんのに、素晴らしいとはこれいかに?

「俺、カイザー以外とどうこうならないって言ってんだけど?」
「構わないよ」
「……………………」

それがなんだとばかりに返されて言葉に詰まる。
わけが分からない。

「リステアや、それ以外の皇族が何て言ったってお断りだっつってんだけど?」
「カイザー以外なら、私も反対するね」
「?????」

益々分からない。
頭の中が?だらけになり、そろそろパンクしそうだ。
思ってた答えと違いまくり軽くプチパニックを起こす。

「え~、、っと……ど、ゆこと?」
「殿下。マヒロを弄るのはそろそろおやめ下さい」
「え~、、だんだん楽しくなってきたんだけど、、駄目?」
「話が進みません…」

脱力しきったように返すカイザーに、リステアが残念と小さく呟きながら肩を竦める。
未だ一人、わけが分からず呆然とする俺に、リステアがニーーッコリ、満面の笑みを向けてきた。

「では、いささか残念ではあるけど、早とちり気味な聖獣妃聖下にご説明いたしましょう」













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