聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
89 / 120
第3章 翡翠の剣姫

4.求める結果がそれだけだとは限らない!⑥

しおりを挟む



「あれ、さ……いいのか?」

言い募るシャイアの声が扉の向こうへ消えた。
カイザーに腕を引かれたまま、気になり何度も振り返るが、扉が開く事はなかった。

「キリアンとジディが宥めるから放っておけばいい。第一、俺が同行を拒否した。たとえ、非常識シャイアでも、皇族に連なる者の言葉には逆らえん」

なんか、今、変な変換しなかったか?
まぁ……いいけど。
確かに、シャイアのには参ったが、なんか袖にされすぎてちょっと可哀想に思える。
甘いと言われるかもしれないが、基本、女の子にはあまり酷くなれないからなぁ、、俺……
言うと、目の前の男が今以上に不機嫌になるのは目に見えてるから言わないが……

「話、してくれんの?屋敷に帰るのか?」
「いや…城に、俺用の部屋が一室設けられているから、そちらへ行く」
「分かった……」

何やら色々行き違い思い違いがあって、わけ分かんなくなってるから、早く聞きたい。
しばらく無言で回廊を歩き、部屋の扉の前に着いた。
重厚過ぎず、簡素過ぎない、それなりに美麗な扉を開けて中へと促された。
すでに使う事が前提されていたようで、部屋は綺麗に整えられていた。
ちょっと疲れたなぁ…喉乾いたし、お茶飲みたい。
ちらっとテーブルを見るが、茶器などの類はなかった。
どうやら、飲みたい場合は、侍女を呼ぶしかないらしい。

「カイザー。喉乾かな……ッ⁈」

ソファに歩み寄りながら問いかけ、、ようとした俺の体が、腕を掴まれて後ろへ引っ張られた。
視界が回り、思わずギュッと目を閉じる。そのままの勢いでカイザーの胸元に抱きしめられた。
騎士らしく、引き締まった筋肉に、赤くなると同時に複雑にもなる。
本当に初めの頃とえらい違いだ。臆面おくめんなくこういう接触をよくしてくるようになった。
カイザーへの思いは、恋人へのそれだ。それはもう、認めてる。が、同じ男としては、まだ中々受けきれないものもあるわけで……
はぁ~………恵まれた体格だ。マジ、うらやま!!
恋人に劣等感れっとうかん抱かせんなよなぁ…って言っても、無理な話か?
元々、体の資質自体違うし、俺がきたえたからといって、カイザーみたいになれるわけじゃない。
所詮しょせん、無い物ねだりだ。
ふ、と力を抜いてしがみつくように体を預けた。

「お前に惹かれてから、色々根回ししてきたのに台無しになった……挙げ句、仲違いまでしかかって…さすがに焦ったぞ」
「王権、、だっけ?そんなもの、手に入れてまで俺を……そこまでするとは思わなかった」
批判ひはんされるのが俺だけならそこまでせん。だが、アウランゼは身分制度が厳しい」

そういえば、キリアンも前にそんな事言ってたな。

「近衛騎士隊長は決して高い地位じゃない。俺とお前が無理矢理結べば、この国の重鎮じゅうちんたちが黙ってない。いずれどこかで必ず陰謀いんぼうを仕掛けられて離れ離れになる」
「そ、そこまで?いや、さすがにそこまでは……」
「しないと思うか?」
「……………………」

…………………………………………するだろうな。
すでに、この世界に、この国に来て、結構な目に遭ってる。
改めて、異世界こえぇわ!!

「シャイアは?」
「アレの事は忘れろ!居なかったものと思え!」
「……………………」

さすがに、そういうわけにはいかない。
常に沈着冷静なイメージのカイザーなだけに、シャイアに対して冷たい、、、というか乱暴?な言い方に、少し戸惑う。

「聞かないわけにいかないだろ?俺、まったくわけ分かんなくて、めちゃくちゃ不安だったんだぞ?」

苦笑いしながら、胸元に擦り寄る。
ギュッと抱きすくめられ、ゆっくりと落ち着いた吐息が漏れた。

「不安にさせる気はなかった。シャイアがアウランゼに来たのも、本当に急な事だからな」
「婚約……」
「しないと言ったはずだ。それに……」
「それに?」
「いや……婚約はそもそも成立するはずがない。シャイアは、婚約を望んでいるわけではないからな」
「ど、ゆ事?」

婚約を望んでない?カイザーを好きだから婚約を申し込みに来たんじゃ?
じゃあ、シャイアの目的って?

「落ち着いたら話せ。しばらく離れておけば、あいつの頭も少しは冷えるはずだ。今は、頭に血が昇り過ぎて話にならん!」

話をする余地はくれるようだ。
なんだかんだ言って、自分の感情だけで終わらせてしまわないのは凄いと思う。
見た目も精神的にもイケメンってずる過ぎるだろ!
こんなの見せつけられたら、誰だって惚れてしまう。
まぁ、それは俺………………………も、だけど。

「シャイアの件は、お前が心配するような事は一切ない。言ったはずだ。俺にはお前だけだ。お前だけ居れば良い」
「ぁ、、、う」

真剣な、強い瞳でまっすぐ見つめて言われ、言葉が返せずどもりながら俯いた。
だから、無駄にイケメン過ぎンだってば!
こんな甘々な事言うようになるとは想像もしてなかった。どんな顔で、どんな言葉を返せばいいのか分からない。
顔………あっつい!!
絶対、真っ赤になっているであろう顔が恥ずくて、カイザーの胸元から上げられない。
クッと上から笑い声が聞こえ、次いで、頭のてっぺんに、温かくて柔らかい感触を感じる。
何かは分かるが、考えないようにする。気づいてしまえば、おそらく、羞恥しゅうちに耐えられなくなる。

「マヒロ……」
「へ?あ………ッ、?」

そっと呼ばれて、両頬にかかった手でやんわりと上向かされた。
変わらず真剣で強く、それでいて熱のこもった瞳に両目を射抜かれ動けなくなった。

「ぁ……………………」

唇が震えて、それ以上言葉が出ない。
ゆっくりと近づく整った顔に、瞼が自然に閉じた。









しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...