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第3章 翡翠の剣姫
4.求める結果がそれだけだとは限らない!⑥
「あれ、さ……いいのか?」
言い募るシャイアの声が扉の向こうへ消えた。
カイザーに腕を引かれたまま、気になり何度も振り返るが、扉が開く事はなかった。
「キリアンとジディが宥めるから放っておけばいい。第一、俺が同行を拒否した。たとえ、非常識でも、皇族に連なる者の言葉には逆らえん」
なんか、今、変な変換しなかったか?
まぁ……いいけど。
確かに、シャイアのあれには参ったが、なんか袖にされすぎてちょっと可哀想に思える。
甘いと言われるかもしれないが、基本、女の子にはあまり酷くなれないからなぁ、、俺……
言うと、目の前の男が今以上に不機嫌になるのは目に見えてるから言わないが……
「話、してくれんの?屋敷に帰るのか?」
「いや…城に、俺用の部屋が一室設けられているから、そちらへ行く」
「分かった……」
何やら色々行き違い思い違いがあって、わけ分かんなくなってるから、早く聞きたい。
しばらく無言で回廊を歩き、部屋の扉の前に着いた。
重厚過ぎず、簡素過ぎない、それなりに美麗な扉を開けて中へと促された。
すでに使う事が前提されていたようで、部屋は綺麗に整えられていた。
ちょっと疲れたなぁ…喉乾いたし、お茶飲みたい。
ちらっとテーブルを見るが、茶器などの類はなかった。
どうやら、飲みたい場合は、侍女を呼ぶしかないらしい。
「カイザー。喉乾かな……ッ⁈」
ソファに歩み寄りながら問いかけ、、ようとした俺の体が、腕を掴まれて後ろへ引っ張られた。
視界が回り、思わずギュッと目を閉じる。そのままの勢いでカイザーの胸元に抱きしめられた。
騎士らしく、引き締まった筋肉に、赤くなると同時に複雑にもなる。
本当に初めの頃とえらい違いだ。臆面なくこういう接触をよくしてくるようになった。
カイザーへの思いは、恋人へのそれだ。それはもう、認めてる。が、同じ男としては、まだ中々受けきれないものもあるわけで……
はぁ~………恵まれた体格だ。マジ、羨ま!!
恋人に劣等感抱かせんなよなぁ…って言っても、無理な話か?
元々、体の資質自体違うし、俺が鍛えたからといって、カイザーみたいになれるわけじゃない。
所詮、無い物ねだりだ。
ふ、と力を抜いてしがみつくように体を預けた。
「お前に惹かれてから、色々根回ししてきたのに台無しになった……挙げ句、仲違いまでしかかって…さすがに焦ったぞ」
「王権、、だっけ?そんなもの、手に入れてまで俺を……そこまでするとは思わなかった」
「批判されるのが俺だけならそこまでせん。だが、アウランゼは身分制度が厳しい」
そういえば、キリアンも前にそんな事言ってたな。
「近衛騎士隊長は決して高い地位じゃない。俺とお前が無理矢理結べば、この国の重鎮たちが黙ってない。いずれどこかで必ず陰謀を仕掛けられて離れ離れになる」
「そ、そこまで?いや、さすがにそこまでは……」
「しないと思うか?」
「……………………」
…………………………………………するだろうな。
すでに、この世界に、この国に来て、結構な目に遭ってる。
改めて、異世界怖ぇわ!!
「シャイアは?」
「アレの事は忘れろ!居なかったものと思え!」
「……………………」
さすがに、そういうわけにはいかない。
常に沈着冷静なイメージのカイザーなだけに、シャイアに対して冷たい、、、というか乱暴?な言い方に、少し戸惑う。
「聞かないわけにいかないだろ?俺、まったくわけ分かんなくて、めちゃくちゃ不安だったんだぞ?」
苦笑いしながら、胸元に擦り寄る。
ギュッと抱きすくめられ、ゆっくりと落ち着いた吐息が漏れた。
「不安にさせる気はなかった。シャイアがアウランゼに来たのも、本当に急な事だからな」
「婚約……」
「しないと言ったはずだ。それに……」
「それに?」
「いや……婚約はそもそも成立するはずがない。シャイアは、婚約を望んでいるわけではないからな」
「ど、ゆ事?」
婚約を望んでない?カイザーを好きだから婚約を申し込みに来たんじゃ?
じゃあ、シャイアの目的って?
「落ち着いたら話せ。しばらく離れておけば、あいつの頭も少しは冷えるはずだ。今は、頭に血が昇り過ぎて話にならん!」
話をする余地はくれるようだ。
なんだかんだ言って、自分の感情だけで終わらせてしまわないのは凄いと思う。
見た目も精神的にもイケメンってずる過ぎるだろ!
こんなの見せつけられたら、誰だって惚れてしまう。
まぁ、それは俺………………………も、だけど。
「シャイアの件は、お前が心配するような事は一切ない。言ったはずだ。俺にはお前だけだ。お前だけ居れば良い」
「ぁ、、、う」
真剣な、強い瞳でまっすぐ見つめて言われ、言葉が返せず吃りながら俯いた。
だから、無駄にイケメン過ぎンだってば!
こんな甘々な事言うようになるとは想像もしてなかった。どんな顔で、どんな言葉を返せばいいのか分からない。
顔………熱い!!
絶対、真っ赤になっているであろう顔が恥ずくて、カイザーの胸元から上げられない。
クッと上から笑い声が聞こえ、次いで、頭のてっぺんに、温かくて柔らかい感触を感じる。
何かは分かるが、考えないようにする。気づいてしまえば、おそらく、羞恥に耐えられなくなる。
「マヒロ……」
「へ?あ………ッ、?」
そっと呼ばれて、両頬にかかった手でやんわりと上向かされた。
変わらず真剣で強く、それでいて熱のこもった瞳に両目を射抜かれ動けなくなった。
「ぁ……………………」
唇が震えて、それ以上言葉が出ない。
ゆっくりと近づく整った顔に、瞼が自然に閉じた。
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