聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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第3章 翡翠の剣姫

4.求める結果がそれだけだとは限らない!⑨




「ッ、、、…、…」

動けない。
俺の首すじに当てられた刃先が、視界の隅でギラリと光る。
よく手入れされたそれは、切れたら痛そうだ。というか、絶対痛いし、下手したら痛いだけじゃ済まなくて……
まぁ、実際。エルシアは俺に死ねと言ったわけだし、余計に体が萎縮いしゅくしてしまう。
そう考えたら、俺の背中を冷たい汗が伝った。
キュッと唇を噛み締め、目を伏せる俺の耳に、フゥッと少し呆れを含んだ溜め息が聞こえる。

「貴方は……なんとも判断しづらい方だ」
「何……?」

伏せていた目を薄っすら開ける。
剣を突きつけたまま、エルシアが眉を顰めて俺を見ていた。

「魔導も、聖獣から貴方へ向けられる波動も文句なしのそれなのに……当たり前にやる事をしない。さて……どうしたものでしょうね」

困ったような複雑そうな顔をし、エルシアが呟く。
何を言ってるのか分からない。
少し、頭が冴えてきた。
エルシアのは、殺そうとしてるというより……

「俺……計ろうと、して、る?」

そうとしか思えない。
本気で俺に死ねと思い殺すつもりなら、城の部屋からここへ繋げた時点で、剣でいきなりバッサリやれば済む事だ。
恐る恐る聞いた俺に、エルシアが目を瞠る。

「なるほど……これは、中々かな。さて、あとは…」
「ッ、、ぅあ!!」

首すじにあった剣が引かれ、そのまま突き下ろすように振りかざされた。
迫る鋭い切っ先に、が、体が恐怖で動けない。

「キシャーーーーーーーッッッ!!!」
「っと⁈」
「わっ⁉︎こ、コハ⁈」

甲高い鳴き声が肩から発せられる。
毛を逆立て、瞳を金色に変化させた琥珀こはくが、エルシアを威嚇いかくし牙を剥く。
俺とエルシアとの間に、琥珀の目と同じく、金色の丸い円盤状の板のような壁ができた。
振り下ろしかけた剣が引かれ、エルシアがそのまま後ろ跳びに後退る。

「パラライズウォール……聖獣はキュア・ウィーズル、でと……呼び出したわけじゃないんだなぁ、、うん?封架印がない?命約や魔具なしに聖獣を使役してるのかなぁ?ここまでくれば間違いはないんだろうけど……」

何やらブツブツ言い、エルシアが思案気に顎下に手をやり腕を組む。
この男…マジで何がしたいんだ??
毛が逆立ったまま、フーフーうなる毛玉状の琥珀を宥めてやる。
なんとかこの場を逃げられないか視線を巡らせるが、開けた場所ではあっても、四方八方木に囲まれて、一体、どっちへ向かえばいいか見当もつかない。

「あぁ、まだ逃げないで下さいね?ので」

ニッコリと、ただこの場面だけ見たなら柔らかく優し気な笑みをエルシアが浮かべた。
手にした剣先を、真っ直ぐにこちらへ突きつける光景だけが、表情にそぐわない。
再び、警戒から俺の体が硬くなる。

「いっそどちらかなら良かったのに…まぁ、このぐらいで判断するしかないのかなぁ、、っと!!『プロー・ブレイク』」

フゥッと溜め息をついた後、左腕を真っ直ぐ真横に、手の平を立てて向けたエルシアの動きに、その方向から飛んできた無数の氷のつぶてが弾かれた。

「うわぁ、、片手でいなすとか、相変わらずだな。シャイア、お前の兄貴どうなってんの?」
「言ったであろう?聖獣単体での攻撃ごときでは、エルには通用せん!」

聞こえた声に、緊張に強張っていた体から力が抜けた。
現れたのは……

「ジオフェス!シャイア!」

(元)赤の皇国のジオフェスに、翠の皇国の破天荒はてんこう娘シャイアの2人。
でも、この2人じゃない。
ジオフェスはニッコリ笑い手をひらひら振ってくる。シャイアはエルシアを見た後、視線を外らせた。

「思ったより見つけるのが早かったね?」

礫を受けた手を軽く振り、エルシアがふんわりと笑む。

「見つけたっていうか、誘き出した?」
「ふん?なるほど………私は疑われていたわけだ?」
「婚約が目的なら、シャイアだけ来ればいいだろ?兄貴まで付いてくる必要はないはずだ」
「哀しいなぁ。シャイアは私より、そちらを信じたの?」
「むぅ?エルが一緒にというから、ならばと思っただけで、私は深く考えておらんぞ」

難しい顔でむむっと眉を顰めるシャイア。

「マヒロ様ッ!!」

駆け寄ってきたのはジディとキリアンの2人。
カイザーの腹心で、優秀な近衛騎士の2人も来てくれた事に、ようやく全部力が抜ける。

「私1人に4人掛り?随分ずいぶん大仰おおぎょう過ぎない?」
「俺ら4人で掛かったって、お前には勝てない。だろ?剣聖けんせいエルシア」
「そうかな?そうでもないと思うよ?」

フワリと微笑んで、が、一瞬でエルシアが俺の目の前に来る。
中庭園で一度見た動きだ。
完全に油断していた為動けない。
ギュッと目を閉じる。

「もう少し確認したかったんだけどなぁ……うん、、残念」

エルシアの呟きが耳に入ると同時に、力強い腕に体が抱き込まれる。
もはや、体に馴染みつつあるその感触に、思わずしがみつき、安堵あんどの息をついた。

「私の相手をまともにできるとしたら、貴方だけだよね?ーーーーーーーーーーーーーーーーカイザー」











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