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第3章 翡翠の剣姫
5.自分自身を見て欲しい……①
「……ヒロ。マ……ロ」
誰か呼んでる。
屋敷に着くなり、疲労困憊から、ソファに横になりウトウトし、いつの間にか寝てしまったらしい。
意識がゆっくり浮上する。
ぼんやりする目に、部屋が映った。
見慣れつつあるカイザーの屋敷の部屋だ。
「大丈夫か?」
「ん、?カ………イザー?あれ?ぉ、れ」
そんなに寝てた感じはしない。せいぜい、小一時間ほどか?
ハァッと小さく溜め息をつき、些か緩慢に瞬きを繰り返した。
目は覚めたけど、まだ完全覚醒には程遠い。起き上がる気にもなれず、行儀悪いがソファに寝転んだまま会話する。
「ジディとキリアンは?」
「別室にいる。さすがに、あんな事があったばかりだ。引き揚げさせる気にはなれんからな」
屋敷内で待機している旨が伝えられ、フッと息を吐いた。カイザーがいるから、別段、心配はしてないが、カイザーを補佐する腹心2人がいればより安心だ。
「エルシア……俺、殺すって、、…」
「話は聞いた。翠の皇国には改めて抗議はするつもりだ」
「本気、、じゃ、ねと思うけど?」
「嘘か本当かは問題じゃない。実行に移したかどうかが問題だ。行動に移せば、意思ありと見なされる。国の要人……それも、聖獣妃に手を出せば、冗談でしたでは済まされん」
厳しい顔と声のカイザーに何も言えなくなる。
近衛騎士隊長としての顔と言葉だ。
口にしかけた言葉を言いあぐね、結局言えずに口を噤む。
「どうした?何か気になるのか?」
「な、でも……」
「ないって感じではないようだが?それとも、具合が悪いのか?」
「違う、、、から」
ソファ側の床に跪き、カイザーが顔を覗いてきた。
鈍いカイザーにも、ちょっとした事を気にし、尚且つ、意地が邪魔して素直になれない自分にも苛立つ。
「本当……な、んでもね、、ッ、うあっ⁈」
グッと体を急に起こされ、正面から目線を合わせられた。強い真剣な、射抜くような視線に、思わず息を呑む。
「エルシアに、何をされた?」
「へ?」
どこか不機嫌さを含ませる低い声音に、マヌケな声が漏れた。
「何、を……って、何??」
「それを聞いているんだろう⁈言いにくい事なのか?まさかッ……⁉︎」
「ち、違うッッ!違う違う違う!!ない!ないからないから!」
ようやく何を言われてんのか分かった。
言い淀んだのを、まさかそういう風に取られるとは思わなかった。
思わず変な汗が出た。
「だったら、なんで何も言わない?」
「違ッ、、言わないっつうか、なんてぇか……」
「言え!マヒロ。何かされたなら、、、」
「だから!違うっつってんだろ!!カイザー、騎士隊長としての言葉で言ってんじゃん!国とか要人とか。ましてや聖獣妃としか言わねぇからッ、、、だから…」
そこまで一気に捲し立て、物凄い自己嫌悪に陥る。
言ってて恥ずいし、情けない。
あぁ、なんて女々しいんだ………
これじゃ、まるで……
「心配しているのは聖獣妃、要人としてのお前で、お前自身を見ていない、、と?」
「違う…………のかよ?」
半分くらい不貞腐れて言う。
これじゃ、まんま、拗ねた子供だ。今更、言った言葉を撤回もできず、顔を合わせるのも恥ずかしくて俯きかけた体が強く引っ張られた。
「う、わっ⁉︎ちょっ、え??」
目を白黒させる俺の顔が、顎にかかった手で上向かされた。
思いのほか強い目に視線を焼かれ、固まる俺に構わず顔が近づく。
思わずギュッと固く目を閉じた。
目元にフッとかかった吐息に、無意識に肩がピクリと戦慄く。
ふぅ~、っと吐かれた溜め息に、閉じていた目を恐る恐る開けた。やんわりと胸元に抱き込まれ、戸惑いながら上目に伺うが、カイザーからの反応はない。
抱き込まれた胸元に、若干戸惑いながら顔を寄せると、ハァ~~ッと、深~い溜め息が降ってきた。
「どっちなんだ?お前は……」
「どっちって………?」
「………俺が聞いてるんだが?」
言われてる意味が分かんねぇ。
首を傾げる俺に、カイザーが胡乱な目を向けてくる。
「聖獣妃じゃなくマヒロ自身として見ろと言う…その割に、マヒロ自身として扱おうとすれば逃げる。正直……俺には触れられたくないのかと思ってしまうんだがな?」
「違ッッ、、ぁ、、そ、じゃなくて…えっ、と…」
否定すれば、触って欲しいってあからさまに認めた事になる。かと言って、肯定すれば、触られたくねぇって言ったも同然。
言い方、聞き方が狡い。
そんな事言われたら……
「カイザー、、は?」
「うん?」
「触、、り、たいのか?俺……」
うぅ……自分でも、何て事聞いてんだってくらい、憤死レベルの恥ずさなんだけど?
顔と言わず身体中、一気にカーッと熱くなる。
「悪ぃ、やっぱ……なし!今の…」
羞恥に耐えられなくなりそうだ。慌てて手を振り、体を離そうとして、そのまま体が仰向いた。
部屋の天井と、カイザーの顔、体が目に映る。
熱と隠しきれない欲が見える瞳に魅入られ、体がぞくりと震えた。
感じたのは、恐怖か?それとも……
「次…」
「え?」
「触れたら…離してやれないと、俺は言わなかったか?」
「……………………!!!!!!」
ヤブ蛇だったと気づいた瞬間、吐息が深く奪われた。
*次は☆つきま~す!いつもの如く、苦手な方はスルースキル発動!で、お願いします( ̄▽ ̄)ゞ
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