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第3章 翡翠の剣姫
6.陰、差す
縋るような瞳に囚われる。
深く激しく、吐息すら奪うように唇を己がそれで塞いだ。
「ん、、ッ、、ぁ、、」
喉の奥で苦しげに呻くマヒロの声音に、閉じていた目を開け伺うと、眉根を寄せ、が、必死に拙いながらも応えようとする様が目に入る。
ギュッと肩を握る手は微かに震えている。
怖いわけではなく、単純に与えられる刺激と息苦しさ故だろうと察し、そっと唇を離す。
ピチュッと粘りを帯びた水音を立てて離れた唇に、口づけの激しさを物語るように銀糸が繋がる。
舌で舐めて切ると、俺の体の下で、マヒロが忙しなく息をつくのが目に入る。
淡く色付く瞼がふるりと震え、薄っすら開いた黒瞳が顕になった。涙に潤み、光を弾くそれに思わず魅入る。
激しい口づけに濡れて光る唇に惹かれるように顔を近づける俺の視界が、突如、真っ暗になった。
「ーーーーーーーーーーー⁉︎」
上げかけた声は、だが、口から発せられない。
ギョッとなった後、自分で自分を見下ろし、ゆっくりと気を鎮める。
周りは全て真っ暗。深淵とも言える闇。
が、自分自身は見える。
奇妙な感覚だが、意識だけがどうやら切り取られ、この空間へと移ったらしい。
自分の瞳がどうにかなったのかと焦ったが……
『いずれは、ね』
「ッッ⁉︎」
急に聞こえたそれに、体が思わず反応する。
耳に聞こえたわけじゃない。
頭の中に直接言葉を吹き込まれたような……
『ご名答!さすが、ーーーーーだね』
声の一文に妙な雑音が混じって聞き取れない。
『悪いね~、さすがにそれは今知られるわけにはいかないから、隠させて貰ったよ。まぁ、今度はちゃんと抗ってね?そしたら、嫌でも分かるから』
意味が分からない事をほざく声。
『聖獣妃にも言ったけど、このままだと詰んじゃうよ?』
つむ?何の話だ?
『時がかかり過ぎてる……これ以上は、僕も遊ぶわけにはいかないし、失敗と見なされたなら、従わざるを得なくなる』
人の質問に答えるでもなく、淡々と話を進めていくそれに、段々腹が立ってくる。
意識下を切り離し、人をこの場に呼び込んだ割には何をしたいのかが読めない。
目に見えない相手を睨むが、案の定通用せず、声は言いたい事だけを続けている。
『まぁ、そういう事だから、さっさと完全になってよ?』
待て、の声は声にならず、ここでも突然、目の前が真っ暗になった。
*
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ヒュッと鋭く喉が鳴り、真っ暗だった視界が色を戻す。
パチパチと数回瞬きを繰り返し、ギュッと眉根を寄せてから、開き……かけた口を閉じ息を吐く。
発っしかけた言葉を頭の中で反芻し、緩く首を振る事で振り払う。
言うだけ無意味だ。
そもそも、今の出来事自体意味が分からないのだ。
問うたところで、応える者も最早おらず……
「カイザー……?」
下からの問いかけるような声に、考え事から意識が引き戻される。
視線の先、揺れて光を弾く漆黒の双眸に苦笑し、自分を落ち着けるためやんわりとその身を抱きしめた。
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