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第4章 白花の聖女
1.どこまでいっても……①
うん、いい朝だ。
窓にかかる薄い紗のカーテンから差し込む光がきらきらしい。
本当にいい朝だ。
まったくいい朝だ。
…………………………………………朝、なんだな。
清々しさとは裏腹に、俺の気分がどんどん下降線を辿る。
ず~んと暗く沈む。
ない。これは本気で……
「いや、ないわ~!マジで、ない!!」
カイザーに対して、致してる最中でフリーズがどうのと思ったが、俺自身腕に抱き込まれて、挙句、温かさに負けて寝落ちとか……
「人の事言えない……」
別にどうでもしたかったわけじゃない。
が、やはり、同じ男としては、相手に寝られてしまったら立場がなくなるというのは分かる。分かるから凹む。もし、俺だったら立ち直れないかも。
謝り倒そうにも、起きたらカイザーは居らず、俺だけが、カイザーのベッド(運ばれた……)に寝ていた有様。
昨日はお互いその気になり、途中で気が削がれたとは言え、相手を置いてけぼりで寝こけるとか……
一体、どんな顔して会えばいいのか。
穴があったら入りたい。
「わっ⁉︎な、なん?ぁ、シュライン??」
ぐるぐる考えに没頭していたら、不意に後ろから服の裾を引っ張られ慌てて振り向くと、炎帝と呼ばれる赤を帯びた聖獣。振り向く俺に、服の裾を咥えたシュラインが、こちらを見上げてちょこんと座っていた。
クルルと喉奥で鳴くと小首を傾げて見つめてくる。
うぅ、可愛い。
可愛いが、ワンコ(正確には違うけど)に慰められてちょい情けない。
「そうだな。そうだよ!まぁ、やっちまったもんは仕様がないよな?うん、仕様がない仕様がない」
自分に言い聞かせて無理くり納得。
そうだ。やってしまったものは仕様がない。どのみち、気まずかろうとなんだろうと、この世界においては、俺が居るのはここしかないし、カイザーと顔を合わせないわけにはいかない。
「とりあえず着替えよ」
起きたばかりだが、いつまでもグダグダできない。
昨日の事がどうなったのかも気になるし、気持ちを切り替えよう。
ともすれば、萎えそうになる気分を叱咤しつつ、着替えるべく衣装室へと向かった。
*
*
*
*
*
「助かった…………の、か?いや、まぁ…助かった、かな?」
「マヒロ?」
「聖下は何を仰っておいでか?」
「ぅ、、あ~……、、何でもない」
着替えを済ませ、神妙な面持ちでソファの置かれた部屋へやってきたが、些か拍子抜けというか何というかだ。
無理くり納得はさせたがやはり、顔、合わせ辛!って思っていたから、ちょっとだけほっとしたのは内緒だ。
部屋にはカイザー、ジディとキリアンがいた。
ジディもキリアンも、昨日俺の護衛として屋敷には来てたから、居ても別に疑問はない。
まぁ、あるとすれば……
「何で3人まで?っていうか、ジオフェスとシャイアはともかく……」
思わず胡乱に見遣る俺に、問題の男、エルシアがニコと微笑みかけてきた。
うん。物凄いイケメンだ。
まっっっっったく!興味ねぇけど!!
むしろ、俺の内心、戦々恐々だけどな!
美形はカイザーや、その他色々、とにかく、この世界に来てから目にした者たちで見慣れたが、エルシアは……
知る前ならこの美形に騙されポーッとなったかもだけど、生憎と知ってしまっているし、受けた仕打ちが仕打ちなだけに、俺がこの男に抱くのは警戒心のみ。
昨日の記憶もまだ生々しい。
眉を顰めるのに、エルシアが何が楽しいのかニコニコ笑いだす。
見た目によらず、神経図太いってぇか、面の皮厚いってぇか……
「聖下、すっごい顰めっつらだね?嫌われたかなぁ」
「嫌われるような事をしたからだろ?あんな事をしといて、嫌われないと思える方が、むしろ、頭がよっぽどおかしいぞ?」
俺以上に、カイザーが苦々しい顔でエルシアを睨め付けた。
昨日、エルシアと話をしたであろうカイザーが、手放しで歓迎しているとは言えない態度ながら、エルシアが居る事を容認しているようだ。
俺としては、できれば関わり合いになりたくないNo.1!な男だが、屋敷の主人たるカイザーがこうなら、どうこう言えない。とりあえず、距離だけとっておこう。
警戒を滲ませつつ、カイザーの隣に腰をおろした。
ふっと柔らかな笑みを向けられ、赤くなりそうな顔を誤魔化すように視線を逸らせた。
無意識に、極々自然に隣に座ってしまった。
狼狽えて、そわつく俺を知ってか知らずか……
「あ~あ、ざんね~ん!とうとう、カイザーとそうなっちゃったかぁ」
「マヒロちゃん、可愛い。隊長ってば、ちょくちょく違うでしょってな態度と言葉使ってたから心配してたんだよなぁ~」
「あなたが心配するような事じゃありませんわ、キリアン。むしろ、あなたの心配など必要なしです!」
「んだと!この鉄女!!」
「何ですの!!」
「ジディとキリアン仲良しだね?付き合っているの?」
「「仲良くありません(わ)ッ!!付き合ってません(わ)ッ!!!」」
ジオフェス・キリアン・ジディ・エルシアで遣り取りが始まり、ぎゃいぎゃいわぁーわぁーの大騒ぎだ。
どうでもいいが、人の事で話始めて、途中で放っぽらかしてとっ散らけるのやめてくれない?すんげぇ、居た堪れないんですけど?
スンとした目を向ける俺。カイザーは若干青スジ立てつつ、関わるのも面倒だとばかりに無視。
こいつら、何しに来たんだよ?
「お前たち、どうでもいいがお茶が冷めるぞ?」
掛け合い漫才(?)とは異質な声がのんびりかかり、ハッと意識が引き戻された。
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