103 / 120
第4章 白花の聖女
3.いきなりはやめてほしい……②
「キャ…」
「きゃ?」
紺碧の瞳を見据えたまま、思わず口走る。
訝り、こちらを見やるカイザーを認めた俺の顔が一気に茹る。
「キャラじゃないッ!!」
「………前にも言ってたな、その言葉」
苦笑され、赤く火照る頰を手の甲でやんわり撫でられた。カイザーの触れ方はまるで壊れ物を扱うようで、それが羞恥と面映ゆさに益々、拍車をかける。
完全無欠、鉄壁のストイックさを思わせた出会いの頃と変わり、カイザーの俺に対しての態度が変わり過ぎで、正直、困る。
恋人(い、言い慣れない…!)としての態度というなら、別に困ることはないのだろうが、何せ、そういう関係なりたて。それに加えて、同性の相手はまったくの初めてとくれば、まだまだ慣れるには俺の経験値は地の底で……
「おかしいか?俺がこういう事をしたら…」
「お、かしい…っていうか」
おかしいかおかしくないかで言ったら……
分かんねぇよ!
が、俺の感想。
何度も言いますが、俺の底辺すれすれの経験値じゃ分かんないんだってば!
10代の若造に、この世界の同性間恋愛を当てはめないでくれ……
戸惑い、言葉を泳がす俺に、カイザーがふわりと柔らかな笑みを浮かべて、目尻、頰を指で撫で摩る。
擽ったいそれに、肩を小さく竦める。騎士らしく、少しだけ荒れて硬い指が、俺の肌を辿り、唇を擦るように弄られた。
淫靡ともとれる妖しい動きに、無意識に体が緊張してしまう。
怖いわけじゃない。
ただ、触れ方が優しくて甘くて……
「カ……ィ、、ザ」
自分でもみっともないくらいに震える声。
言葉を発して軽く開いた唇に、カイザーの指が軽く入ってきた。ふるっと震えて思わず逃げかけた体が、腰を抱かれた腕に引き寄せられ動きを阻まれる。
親指は唇を割り、口内に入れられたまま、揃えられた指で顎を軽く持ち上げられ上向かされた。
緩く細められた紺碧の瞳に見つめられ、込められた熱と甘さに益々動けない。
身長差がある為、抱き竦められたまま上向くのは正直かなり辛く、ハッと思わず仰け反った俺の喉から小さく息が漏れた。
その吐息に惹かれるように、カイザーの顔が降りてくる。距離は数センチ。ともすれば、くっ付きそうなくらいに近い。
「俺だとて、ただの人だ……好きな相手を前にすれば、それこそ、生身の男に成り下がる」
「好……き?…………お、、れ」
反らせた喉で必死に言葉を紡ぐ。
フッと小さく微笑い、フワッと吐息が近づいた。
「お前以外いないだろう?」
唇にかかる息を感じ、ギュッと目を閉じた。
柔らかく、少しだけ体温の低いそれが触れ、詰めていた息を吐いた瞬間、深く奪われた。
スルリと入り込んだ甘く濡れた感触が舌先に触れ、ビリリと体に電気のような痺れを感じて、思わず肩に強く縋り付く。
小さく笑い、カイザーの唇が更に深く重なり……かけたところで、不意に部屋の扉がノックされた。
ふと離れた口づけに、忙しなく息を吐く。
肩越しに視線を向け、カイザーが口を開いた。
「誰だ?」
「申し訳ありません、カイザー様。城より御使いが参っております。皇太子殿下よりのお召しにて」
執事さんの声だ。
ボーっとする意識の中、カイザーの胸元に凭れかかり息を整える。
「分かった。少し、待て」
顔を見せず、扉越しに話を進めるカイザーに何事か問うでもなく、かしこまりましたと一言だけ応え、執事さんの気配が遠のく。
優秀だ。優秀だが、悟られてるのが丸わかりでめっちゃ恥ずい。
「い、ぃの、、…か?」
「うん?」
切れ切れに訴える俺に、カイザーが首を傾げて見下ろしてきた。
ゆっくりと息を吐き、だんだん整ってきたそれにハァッと深く一度吐いてから、胸元から顔を上げる。
「城からだろ?リステア…呼んでんのに」
「ただ臣下のままならまずいがな。一応、末席にある今は、多少は殿下が融通して下さる」
「あ、そ」
王族面倒い的な事を言ってたが、便利な時もあるようだ。まぁ、諸々の面倒い的な事を聞いてる限り、なりたいとは思わないし、思えないけど。
第一、俺の場合は聖獣妃も十分面倒いし、訳分かんないし…どっちもどっちといった具合だ。
「早く行けよ?リステア、待ってるし」
「すぐには無理だろう?」
「?」
何か会話が噛み合ってない?
軽く、眉を顰める俺に、カイザーが苦笑し俺の目元を指の背でやんわり撫で摩る。
「俺はともかく、少なくともお前はその顔をどうにかしないとな。殿下に揶揄いの種を与えても構わんのなら、まぁ、止めないが…俺は知らんぞ?」
顔?
はてと若干考えてから、思い至ったそれにカッと顔に朱が上った。
先程までの触れ合いで、俺の顔は……
すでに1人涼しく落ち着きを取り戻している目の前の顔を、恨みがましく睨んでやる。
「カイザーがやったんじゃん!馬鹿ッッ!!…………………ってか、俺も行くのか?」
不貞腐れたように言ってから、ふと気がついた。
話の内容を反芻してから、それに思い至ったからだ。
ハァ~ッ、と深くカイザーが嘆息し、呆れたように目を眇められる。
そんな顔をされる意味が分からない。
盛大に?マークで一杯になる俺に………
「置いていくとでも?お前を置いていけば、良い結果にはならん事は、嫌という程実証済みだ。連れていくに決まっているだろう?」
返ってきたのはそれだった。
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。