聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
105 / 120
第4章 白花の聖女

4.使者、来訪②




「白の…………………ーーーーーーーーーー聖女だ」

聞いた瞬間、思考が停止した。
アウランゼ自国が聖獣妃を得た時点で、赤と翠が動いたのだ。当然、その他の国も動く事は、火を見るより明らか。
が、心の隅では、とも思っていた。
つくづく、考えが甘い。
未だ、どこかでこのまま消え去ってしまえばいいと考えていたのか……
そんな、都合のいい話があるはずもない。
ゆっくりと目を閉じ、小さく長く溜め息をつく。

「カイザー……?」

ふと名を呼ばれ、隣に目をやる。
光を弾く、稀有な黒色がこちらを見ている。
出会った頃と、その光は変わらない。
まさか自分が、歳下の、それも同じ性を持つ青年に捉われる事になるとは夢にも思わなかった。

「どうかしたのか?」

若干の戸惑いを含むマヒロの言葉に、小さく首を振り、頰へと伸ばした手の甲でやんわり撫でてやる。
目を瞠り、次いで、マヒロの目元がカッと朱を履き染まった。

「な、な、何ッ⁈急、に!」

羞恥を誤魔化すよう慌てて言い募るが、どもっていては台無しだ。
このまま、慌てる様子を愛で楽しみたいところだが……

「仲睦まじいのは喜ばしいけど、そういうたわむれは、屋敷へ戻ってからしてくれるかな?ここは、一応、私の部屋なわけだしね」

皇太子の苦笑交じりの言葉に、マヒロの顔が一気に茹る。場所を考えず、触れてしまったのは俺の落ち度だ。
マヒロにも恨みがましく拗ねたようにじっとり睨まれた。ここは素直に、自分が全て悪いという態度に出るのが得策。軽く肩を竦め、大人しく手を引っ込める。
短い遣り取りの間で、胸の騒つきは治まっている。

「使者が到着するのはどのくらいに?」
「明後日だよ。念の為聞くけど、大丈夫かな?」
「どういう意味でおっしゃっているのか分かりませんが、大丈夫、とだけ答えます」
「そ?まぁ、私はアウランゼこちらに不利にならなければ構わないよ」

ニッコリ微笑んで優雅にカップを持ち上げる皇太子に、苦々しい顔しか返せない。
確認したかっただけとしか思えない遣り取りに、呆れるしかない。分かってはいたが、主君ながら喰えない皇太子だ。
これ以上は話はなさそうだ。

「それだけでしたら、もう、辞しても?」
「うん。どうぞ。呼び立てて悪かったね?」
「……………………いえ」

不満ありありに答えるが、クスクス笑われるだけだ。
主従にあった頃には許されない受け答えだが、今は立場も違う。多少の反抗は許されるし、意趣返いしゅがえしできると思ったが、リステアこの人には毛ほどにも感じなかったらしい。
せめてもと、あからさまに溜め息をつくに留め、礼をとる。

「では、これにて御前、失礼します」
「うん。次はもう少し砕けてくれたら嬉しいかな。一応、皇室に連なる者になったんだし。同じ血の繋がり同士なわけだし?」
「……………………努力、します」

得るものの為の苦肉の策だ。取りたくて、取り戻したわけじゃない。
マヒロの為でなければ、誰が好き好んで……
感情が面に出ていたらしい。
堪え切れないとばかりに皇太子が吹き出した。

「ふはっ!!カ、カイザーにそんな顔ができるなんてね。結構結構!どうやら、マヒロの存在は、聖獣妃以上らしいね?素晴らしいよ!」

涙を滲ませながら笑う皇太子。
これ以上居れば要らぬ腹を探られ墓穴を掘るだけだ。揶揄いの種を与えるのも御免だとばかり、自分でも、騎士隊長としては取ったこともない不調法さだと自覚しながらも、1人わけが分からず困惑気味なマヒロの手を掴み、足早に部屋を辞した。








感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。