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第4章 白花の聖女
5.黒と白④
しおりを挟む「何回も申し訳ないね?」
部屋に入るなり、リステアに謝られる。
毎回思うが、思ってもいない事を、この皇太子様はいけしゃあしゃあとよくも……
「悪いとは思っているんだよ?これでもね」
「ッッッ⁈」
まるで、心の中を見透かされたように言われ、思わずギョッとなった。
マジマジと見てしまう俺に、リステアが無害(見た目だけ!)な笑みを浮かべてみせる。
この皇太子サマの前では、たとえ心の中だろうと”言わざる”を徹底した方が良さそうだ。
「座って話そうか」
俺の警戒心を察したかどうか、リステアがクスクスと笑いながら席を促す。
「殿下…マヒロをお揶揄いなさるのは程々に。そういう事に慣れておりませんので」
「そう?ある程度は慣れてくれなきゃ大変だよ?まぁ、もっとも、誰かさんは慣れすぎて面白くないんだけどね?」
「面白くなくて結構です。マヒロにはお構い過ぎないよう願います」
「過保護だなぁ。まぁ、いいけど。親密過ぎほど、私の望み、だしね」
リステアの意味深な発言に対し、カイザーが顔を顰めて溜め息をつく。
1人、会話についてけない俺はちんぷんかんぷんだ。
「さて、と。冗談はさておきで、本題だね」
本当に冗談かと疑いたくなる。
胡乱な目を向けたが、綺麗にスルーだ。
一癖どころじゃないこの腹黒に所詮勝てるわけがない。反論は早々に諦め口を噤む。
「使者の話をしたと思うけど、どうやら思ったより早く到着したらしい」
「存じています……」
「そうなの?」
「先程、ジークレイド……ワドワーズの使者には会いました」
苦々しい顔でカイザーが報告。
「そう。会ったのならいいよ。白の聖女にも?」
「いえ……フィオリナも来ているのですか?」
「ワドワーズとほぼ同着したようだね」
「そう、ですか……」
受け応えるカイザーの表情が暗い。暗いというか……
「黒の、さっきの誰?あと、白の聖女って?」
「マヒロ……」
問いかける俺に、カイザーが口籠もる。
使者が来ると聞いてからのカイザーの様子がおかしい。
いつもなら、ちゃんと説明してくれた。それなのに、まるでこの話題を避けるかのように、一切、何も言ってくれない。さっきの嫌味な黒の男には、訳も分からず噛みつかれるし、紹介も話も何もない。1人、蚊帳の外に置かれていい加減に限界だ。
「おや?話していないの?」
「そ、れは………」
「何も聞いてない。誰も何も言ってくんないから、俺1人訳分かんないんだけど?」
「マヒロ……」
リステアの問いに、少し当てつけたように応えると、カイザーが若干の戸惑いが含まれた声で名前を呼んできた。
俺が悪い訳じゃない。
なのに、話題に触れたのが良くないような空気だ。
「仕様がないね、カイザーは…大丈夫と言っておきながら、全然、大丈夫じゃないじゃないか」
「……………………」
「存在が在り方を変えるも善し悪しだな…」
「殿下…」
口を開きかけたカイザーを、リステアが手で制して黙らせる。
2人にしか分からない会話。
問おうとした俺より早く、リステアが向き直った。
「黒の聖騎士と白の聖女は、カイザーの昔馴染みだよ。そして、白の聖女はカイザーの……ーーーーーーーーーーーーーーー婚約者だ」
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