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第4章 白花の聖女
5.黒と白⑦
しおりを挟む「た、隊長ッ!!」
手首を掴まれ引き寄せられる。
俺とカイザーの視線が至近距離から睨みつけるように交わされると同時に、切羽詰まったような呼び声がかかった。
ちらっと見ると、近衛騎士の隊服に身を包んだ青年が、若干、オロオロしたようにこちらを見ている。
「何の用だ⁉︎今は取り込み中だ。火急でないなら、後にしろ!!」
「も、申し訳ありません!で、ですが、急ぎお伝えした方が良い件にて…」
ほとんど怒鳴られように言われ、何事かを伝えに来た近衛騎士の青年が吃りながらも応える。
俺もカイザーも気が立っている。ほとんど八つ当たりのようにされて申し訳なくは思うが、気遣う余裕がない。
掴まれた手首を離そうともがくがビクともしない。
鍛えあげられたカイザーの腕を簡単に振り解けるとは思っていない。
それでも、こうも見せつけられと、負けん気が湧き足掻いてしまうのは無理からぬことで……
青年に意識を向けつつ、俺が暴れる為、カイザーが視線を寄越して小さく舌打ちする。
俺が悪いみたいな態度だが、知ったこっちゃない!
「用件を言え!!」
「御使者の方々に使っていただいておりました、し、城の貴賓室の壁が崩落を……」
「修繕士に直させろ!それまでは、別棟の貴族用の部屋を用意したらいい」
訴える青年に、カイザーが苛々と返す。
火急と言う割には、別にカイザーへの報告云々要らないような気がしないでもない件だ。
俺が感じるくらいだから、カイザーは言わずもがなだろう。思いっきり顔を顰めている。
「そ、それが……貴族用の部屋は長らく使っていなかった為、老朽化が激しく使える状態ではなく……」
「だったら!見合う身分の貴族に、屋敷の借り入れを提示しろ!!」
「た、た、隊長です!!」
「「は???????」」
聞き入っていた俺とカイザーの声が思わずハモる。
隊長?カイザー??
「どういうこ……」
「た、隊長のお屋敷に、ご、御使者の方々全員移られました!!!!!」
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