聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
118 / 120
第4章 白花の聖女

5.黒と白⑪




ムカつく。

何がって、全部だ。
訳も分からず、こんな所に居るのもムカつくし。
妙な立場を俺につけた奴らもムカつく。
望んでもないそれに、分不相応だと責めるジークレイドの事もムカつく。
まるで何も出来ない者かのように庇うカイザーや、フィオリナを始めとした周りの者みな、全てにムカついて……
何より、、、、、

何も出来ない、言い返す事さえ出来ない、出来る何かすら持たない。そんな俺が俺自身に一番腹が立つ!
何も持たないと考えたところでふと、我に返った。
ここへ、この世界へ来る前の事だ。
確か、家の蔵に居て……
蔵に居て、何してたっけ?記憶が妙に曖昧あいまいになっている。
必至に記憶を探り、何かを手にしたようなとまで思いだし……

「カイザー」

シャイアのカイザーを呼ぶ声で、再びハッとなった。
腕組みしたまま歩み寄るシャイアに、カイザーが渋面で応じた。

「カイザー。確かにあれの言動は到底許されるものではないが、一部言っている事はもっともだぞ?マヒロは聖獣妃。それはここにいる者皆認めている。だが、あれの言う通り、万人を納得させ認めさせるにもっとも必要な物が欠けているのも事実だ」

理路整然りろせいぜんに語るシャイアに、カイザーがいつも以上に厳しい顔で対峙たいじ
誰だろうと認める物。それがおそらく(というか絶対?)ずっと言われ続けている聖獣石とやらなのだろう。
そもそも俺が聖獣妃なら、その聖獣石とやらを持っていないというのは何故なのか……
持っていない俺を、何の疑いもなく認めてくれているのにも困惑だ。
疑われたいわけじゃない。わけじゃないが、手放しに信頼されても困る。
結局は、どう扱われようとも、俺自身が自分の立場を納得できてないのが一番の理由で……
そうなると、証とやらが必要というのも理解できる話だ。

「マヒロに最初に会った時に何故確認しなかったのだ?」
「無茶を言うな。初見でマヒロが聖獣妃だなどと思うわけがない」

シャイアの問いに、カイザーが苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。
もっともだ。
俺自身そんな者のつもりはなかった。あの時点で、聖獣妃かなどと聞かれた上、丁重に扱われでもしたら新手の詐欺か何かかと、状況が状況なだけに冷静じゃいられなかっただろう。
第一、会ったのはいきなり森の中で……
そこまで思い立ち、ふと気付いた。
鎮寂ちんじゃくの森。
よくよく考えたら、俺とカイザーが出会った最初の場所だ。
蔵に居たはずの自分が、いきなり居たのがその場所。
薄ぼんやりと思い浮かぶのは、蔵で何かを手にした事。あの時、手にした何かがそうなのだとしたらあの森に?
今のままじゃ、俺の立場は宙ぶらりんのまま。
だったら、いっそのこと行ってみるべきでは?

「カ……………………」

「イザー」と続きかけた言葉を途中で止める。

『ふん!結局、自分では何もできないわけか?聖獣妃と呼ばれし者が、周りに庇護されるばかりで成り立つとはな。情けないとは思わないのか?男のクセに!!』

思いだしたのは先程ジークレイドから向けられた言葉。
思い返せば思い返すほど、イラっとした。

ムカつく!

ムカつく、、、が、確かにあいつが言うことももっともだ。
聖獣妃なんぞと呼ばれてはいるが、俺は間違いなく男。
守られてばっかはしゃくに障るし、自尊心プライドが傷つく。
それに、こんな言い方はしたくないが、守って欲しいなんて言った覚えはない。
まぁ、一方的に責められるいわれもないけどな!
ちらっと、カイザー達を見るが、まだ難しい顔で話し合ってる。
ここに来たばかりは頼るしかなかった。
でも、今は状況が違う。
グッと唇を噛みしめるごとに、自分の中でムクムクと湧く負けん気が感じられる。
自分で言うのもなんだが、元来、大人しい方じゃないのだ。
やられっぱなしの言われっぱなしは我慢ならない!
自分の中でやるべき事、やらなきゃならない事が決まる。

絶対、、、やる。

静かに決めたそれを内に秘め、ギュッと硬く拳を握りしめた。










感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。