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滅びた文明
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私達の居る教室は階段のように後ろから前に降る形になっていて、十列目の最後尾でも前が良く見える。考古学の授業は一番人気だから教室は満員になっていた。
「あの人、あの都市を発見した人だ」
入室してきた教授を見て、誰かがそう言った。――確かにそうだ。ニュースで毎日のように写真が出ていたから覚えている。今日の講義は教授が不明だったけどまさかこんなに凄い人が来るなんてなんて幸運なんだろう!
私はとても嬉しくなって、他のみんなも同じ気持ちなのか室内がざわついている。でも教授は気にする事無く出席者の人数を確認し、授業を始めた。
「皆さんおはようございます。本日の講師を務めます、松山です。さっそくですが今日は最近発見された都市についてわかったことを発表していきます」
教授が議題を出すと室内は静まり返り、みんなは手持ちの電子ボードに釘付けになった。ここに情報が表示されるから楽しみだ。
「以前国から発表された通り、このオアシスの東にある山脈の麓で崩落したトンネルが見つかりました。距離にして3.8kmほどの長いトンネルです。私達はそれを掘り進め、修繕しながら先に進んだ結果、トンネルを抜けた先に高度な電子技術を持つ都市を発見しました。その調査結果を、全てではありませんが発表しても良いとの許可が政府から出ましたので、まず一通り聞いてください」
これはまだメディアから発表されていない情報だ。発表されてたら私の電子ボードは朝から通知が鳴りやまなかっただろう。
こんな機会に恵まれるなんて、なんて幸運なんだろう!
「その都市……わかりやすいようここでは電子都市と言いますが、はっきり申し上げて、調査は難航しています。理由ですが、まず電子都市では全ての電子・通信機器が停止しています。それらの機器には目立った損傷は無く、回路も正常であることから当初、調査は簡単なものかと思われていました。ですが実際はいくら電力を供給しても街頭の灯り一つ灯せない状況です。電子都市の調査開始から三ヶ月ほど経ちますが、何の進展もありません。このオアシスで使われている技術とそう変わらない都市のはずですが……。では今から電子都市の映像を送りますので各自確認をして下さい」
文字でいっぱいだった電子ボードに画像が送られてきたので急いで表示させた。
そこに写っていたのは見た事もない高い建物の密集地だった。道にも建物の壁にも超巨大な電子ボードのようなものがあったり、初めて見るものや、何に使うのか分からないものばかりで興奮する。
機械ばかりじゃなくてちゃんと街路樹もあって、その街路樹にも不思議な機械が付いていて使用方法を考えるだけでとても楽しくて仕方がない。
もっとこの都市の事が知りたい。実際に見てみたい。実物を前にして使用方法を考えたり、住んでいた人がどんな景色を見ていたのかとか、どんな生活をしていたのかとか、もっともっと沢山知りたい。この場所に自分が居て歩く想像をするだけでこんなに胸が高鳴るのだから、実際に行ったらどれだけはしゃいでしまうだろう。
教授は実際にここに行ったんだ。ここを発見して、この中に入ったときに何を思ったんだろう。やっぱり興奮と感動かな。凄く淡々と話しをする人だけどその時だけは大はしゃぎだったに違いないよね。
「次の画像です」
送られてきた画像を急いで見て、驚いた。室内も一気にざわついて私もつい声を出してしまう。
「人間!」
「人が大勢倒れてるぞ。オアシスの人なのか?」
「服が違うだろ。それにこの容姿の特徴はオアシスでは珍しいぞ」
「じゃあ生き残りだっていうのか?」
「まさかそんなわけないだろ。ここは百年以上も前に滅びた文明の都市だぞ」
各机で議論が始まり、もちろん私も参加する。
「でもこの人様子がおかしいです。なんか、心ここに在らずっていうか……」
「確かにそうだな。呆然としていて気味が悪いぞ」
「もしこれが死体ならこんなに原型を留めているのはおかしいよな。この都市が滅びたのはオアシ
スに俺達の先祖が移住する前だし」
「じゃあこれは何なんだよ。否定じゃなくて意見を言えよ」
「否定じゃないだろ。お前こそもっと考えて物を言えよ」
「おい止めろって。喧嘩腰になんなよ」
「こいつがつっかかってきてんだろ」
「つっかかってきてんのはお前だろ!」
……口論が始まってしまった。大人のくせに大人気なさすぎだよ。せっかくワクワクしてたのに雰囲気ぶち壊し……でも怖くて止められないし、どうしよう。誰か止めてくれないかな……。
「しず……」
教授の声を遮って、聞き慣れた声が大きく聞こえる。亮介だ。
「静かにしろよ。議論じゃなくて口論なら外でやれってさ」
『!』
「はぁ? なんでお前に……あ!」
「そうでしょ? 教授」
教授にそう問いかけたあと、亮介は肘を突いたまま、とても不機嫌な顔で騒いでいた大人達を睨みつけた。
……あれ? さっきの事で怒ってるのかな。いつもの亮介じゃない感じがして、なんだか少し怖い。
「……彼の言う通りです。口論ならどうぞ外で」
教授は冷静そう伝えるけれど、少し動揺しているように見えた。多分だけど、教授が言おうとしていたことをずばりそのまま亮介が予知して言っちゃったんだろうな。たまたま発言が被ることもあるかもしれないけれど、相手が亮介だもん。……自分の事を予知されるって、ぞっとするよね。私も最初は凄く嫌だったよ。もちろん今も嫌だけど。
ということで、残念な事に教室は電子都市より亮介の話でもちきりになってしまった。
「どうしてここにあいつが……」
「神亮介って……あのヤバイ奴じゃん」
「あれ? でもさっき隣の子と普通に話してたよな?」
「え……マジ? ありえなくね? 亮介だろ?」
「なんでここにいるのよ」
「似てるとは思っていたけど本人とは思わねーよな」
さっきまでの口論はなくなったけれど、皆がぼそぼそと小声で耳打ちしながら怯えた目で亮介を見て、隣の私を見てくる。まるで陰口をたたかれている様でとても不安になるし気分も良くないけれど、こんなことは今までにも幾度となくあったことだ。慣れることはないけれど、最初の頃に比べれば私も随分穏やかに皆を観察出来るようになったなと自分に感心する。でも、隣の亮介は違う。奇異の目で見られているのは亮介なのだ。普段は外で遠巻きにされても二人でさっさと離れていけるけど、ここは室内で逃げ場がない。いつものように亮介の腕をひっぱっていけないのだ。
私はどうしたら良い? どうしたら亮介を庇える? どうしたら皆の視線を逸らす事が出来る?
どうしたら……どうしたら……。
冷静を装いつつも次の行動を必死で考えていた。やっぱりここを出て行く他ないのかな。じゃないと亮介が生意気な口を利いて喧嘩になっちゃうかもしれないし、そうじゃなくても亮介が嫌な思いをしてしまう。なら、やっぱりここを出て行こう。と、ようやく結論に達した私は、名残惜しむように教授を見るとばっちりと目が合った。
するとすぐさま教授は声を少し張り上げて自分に注目を促し、そのまま毅然とこう言ってくれた。
「講義に参加されない方々はどうぞ退室して下さい。参加の意思がある方々は言葉を慎み講義に集中して下さい」
教授の言葉に誰も何も言わず、しばらく待つも誰も席を立たなかった。私達に向けられていた視線は教授や電子パッドに戻り、その間私は知らず知らず緊張していたのかな。視線を感じなくなると安心して大きく息を吐き、体から力が抜けた。
ちらりと亮介を見ると、相変わらず肘をついて偉そうに皆を見下している。最後尾の最上段にいるから見下してるように見えるのかもしれないけど、少し顎を上げているのだからやっぱり見下しているのだろう。
不機嫌そうな横顔にすこし不安になるけれど、亮介も席を立たないし何も言わないのだから大丈夫ってことだよね。そう勝手に納得して、教授に感謝しながら講義の続きを聞くことにした。
「では、先ほどの続きから……。電子ボードをご覧下さい。倒れている彼らですが、どなたかがおっしゃっていた通り彼らに心はありません」
教授の言葉に皆が小さく反応する。心が無い……という事は人ではない? じゃあ電子ボードに表示されている人は……?
私の疑問に答えてくれているように、教授は再び淡々と話し始めた。
「彼らは人ではないのです。亡骸でもない。彼らは人類の英知の結晶、『アンドロイド』なのです」
『アンドロイド!?』
室内が驚きの声でまた騒がしくなるけれど当然だ。だってアンドロイドだよ? 存在は文献に残っていたけれど、昔の人が見栄を張って作った嘘だと考えられていたのに……。それが本当に存在していたなんて信じられないよ!
「機械である彼らはこの文明が止まったときに共に動きを止めたのでしょう。何故文明が滅びたのかはまだわかりません。ですが彼らを見ると時だけが止まったかのように……突然彼らの日常が止められたように感じます。電子都市には沢山のアンドロイドが残っていましたが、どのアンドロイドもみな慌てた様子は無く、危害を加えられたわけでもなく、本当にただ停止していました。都市も同じです。この都市は攻撃の跡もなく、ただただ時を止めているだけなのです。人の姿だけが何処にもなく、まるで捨てられた都市のようでした」
……どうしてだろう。とても、悲しい。室内が静かになって、それが余計に悲しい。
「あれだけの文明都市を捨てる決断をするには理由があるはずです。もしかするとこの都市は当時大して発展していない都市だったかもしれません。しかしこの都市を調べ、それを生かすことはオアシスの発展に繋がるでしょう。私はこれからもこの都市を調べ続け、オアシスの更なる繁栄に尽力します」
教授の言葉にみんなは感嘆の声を漏らすけれど私はむしろ不安だよ。だって本当に繁栄するのかな。滅びた文明の文化は、本当に私達を豊かにしてくれるの? 豊かにしてくれる文明なら滅びるはずがないよ。
とても好奇心をくすぐられる都市だけれど、この文明はここに留めておくべきなんじゃないかなって、ふと思った。
それからしばらく写真を見たり教授の話しを聞いたりして、あっと言う間に90分の講義は終わってしまった。教室ではまだみんな興奮冷めやらぬようで至る所で議論が巻き起こっている。
私も参加したいけれど、さっきの事もあるし無理だよね。皆が亮介の事を忘れているうちに帰った方が良いよね。そう思い、席を立つと呼応するように亮介も立ち上がった。
「あの人、あの都市を発見した人だ」
入室してきた教授を見て、誰かがそう言った。――確かにそうだ。ニュースで毎日のように写真が出ていたから覚えている。今日の講義は教授が不明だったけどまさかこんなに凄い人が来るなんてなんて幸運なんだろう!
私はとても嬉しくなって、他のみんなも同じ気持ちなのか室内がざわついている。でも教授は気にする事無く出席者の人数を確認し、授業を始めた。
「皆さんおはようございます。本日の講師を務めます、松山です。さっそくですが今日は最近発見された都市についてわかったことを発表していきます」
教授が議題を出すと室内は静まり返り、みんなは手持ちの電子ボードに釘付けになった。ここに情報が表示されるから楽しみだ。
「以前国から発表された通り、このオアシスの東にある山脈の麓で崩落したトンネルが見つかりました。距離にして3.8kmほどの長いトンネルです。私達はそれを掘り進め、修繕しながら先に進んだ結果、トンネルを抜けた先に高度な電子技術を持つ都市を発見しました。その調査結果を、全てではありませんが発表しても良いとの許可が政府から出ましたので、まず一通り聞いてください」
これはまだメディアから発表されていない情報だ。発表されてたら私の電子ボードは朝から通知が鳴りやまなかっただろう。
こんな機会に恵まれるなんて、なんて幸運なんだろう!
「その都市……わかりやすいようここでは電子都市と言いますが、はっきり申し上げて、調査は難航しています。理由ですが、まず電子都市では全ての電子・通信機器が停止しています。それらの機器には目立った損傷は無く、回路も正常であることから当初、調査は簡単なものかと思われていました。ですが実際はいくら電力を供給しても街頭の灯り一つ灯せない状況です。電子都市の調査開始から三ヶ月ほど経ちますが、何の進展もありません。このオアシスで使われている技術とそう変わらない都市のはずですが……。では今から電子都市の映像を送りますので各自確認をして下さい」
文字でいっぱいだった電子ボードに画像が送られてきたので急いで表示させた。
そこに写っていたのは見た事もない高い建物の密集地だった。道にも建物の壁にも超巨大な電子ボードのようなものがあったり、初めて見るものや、何に使うのか分からないものばかりで興奮する。
機械ばかりじゃなくてちゃんと街路樹もあって、その街路樹にも不思議な機械が付いていて使用方法を考えるだけでとても楽しくて仕方がない。
もっとこの都市の事が知りたい。実際に見てみたい。実物を前にして使用方法を考えたり、住んでいた人がどんな景色を見ていたのかとか、どんな生活をしていたのかとか、もっともっと沢山知りたい。この場所に自分が居て歩く想像をするだけでこんなに胸が高鳴るのだから、実際に行ったらどれだけはしゃいでしまうだろう。
教授は実際にここに行ったんだ。ここを発見して、この中に入ったときに何を思ったんだろう。やっぱり興奮と感動かな。凄く淡々と話しをする人だけどその時だけは大はしゃぎだったに違いないよね。
「次の画像です」
送られてきた画像を急いで見て、驚いた。室内も一気にざわついて私もつい声を出してしまう。
「人間!」
「人が大勢倒れてるぞ。オアシスの人なのか?」
「服が違うだろ。それにこの容姿の特徴はオアシスでは珍しいぞ」
「じゃあ生き残りだっていうのか?」
「まさかそんなわけないだろ。ここは百年以上も前に滅びた文明の都市だぞ」
各机で議論が始まり、もちろん私も参加する。
「でもこの人様子がおかしいです。なんか、心ここに在らずっていうか……」
「確かにそうだな。呆然としていて気味が悪いぞ」
「もしこれが死体ならこんなに原型を留めているのはおかしいよな。この都市が滅びたのはオアシ
スに俺達の先祖が移住する前だし」
「じゃあこれは何なんだよ。否定じゃなくて意見を言えよ」
「否定じゃないだろ。お前こそもっと考えて物を言えよ」
「おい止めろって。喧嘩腰になんなよ」
「こいつがつっかかってきてんだろ」
「つっかかってきてんのはお前だろ!」
……口論が始まってしまった。大人のくせに大人気なさすぎだよ。せっかくワクワクしてたのに雰囲気ぶち壊し……でも怖くて止められないし、どうしよう。誰か止めてくれないかな……。
「しず……」
教授の声を遮って、聞き慣れた声が大きく聞こえる。亮介だ。
「静かにしろよ。議論じゃなくて口論なら外でやれってさ」
『!』
「はぁ? なんでお前に……あ!」
「そうでしょ? 教授」
教授にそう問いかけたあと、亮介は肘を突いたまま、とても不機嫌な顔で騒いでいた大人達を睨みつけた。
……あれ? さっきの事で怒ってるのかな。いつもの亮介じゃない感じがして、なんだか少し怖い。
「……彼の言う通りです。口論ならどうぞ外で」
教授は冷静そう伝えるけれど、少し動揺しているように見えた。多分だけど、教授が言おうとしていたことをずばりそのまま亮介が予知して言っちゃったんだろうな。たまたま発言が被ることもあるかもしれないけれど、相手が亮介だもん。……自分の事を予知されるって、ぞっとするよね。私も最初は凄く嫌だったよ。もちろん今も嫌だけど。
ということで、残念な事に教室は電子都市より亮介の話でもちきりになってしまった。
「どうしてここにあいつが……」
「神亮介って……あのヤバイ奴じゃん」
「あれ? でもさっき隣の子と普通に話してたよな?」
「え……マジ? ありえなくね? 亮介だろ?」
「なんでここにいるのよ」
「似てるとは思っていたけど本人とは思わねーよな」
さっきまでの口論はなくなったけれど、皆がぼそぼそと小声で耳打ちしながら怯えた目で亮介を見て、隣の私を見てくる。まるで陰口をたたかれている様でとても不安になるし気分も良くないけれど、こんなことは今までにも幾度となくあったことだ。慣れることはないけれど、最初の頃に比べれば私も随分穏やかに皆を観察出来るようになったなと自分に感心する。でも、隣の亮介は違う。奇異の目で見られているのは亮介なのだ。普段は外で遠巻きにされても二人でさっさと離れていけるけど、ここは室内で逃げ場がない。いつものように亮介の腕をひっぱっていけないのだ。
私はどうしたら良い? どうしたら亮介を庇える? どうしたら皆の視線を逸らす事が出来る?
どうしたら……どうしたら……。
冷静を装いつつも次の行動を必死で考えていた。やっぱりここを出て行く他ないのかな。じゃないと亮介が生意気な口を利いて喧嘩になっちゃうかもしれないし、そうじゃなくても亮介が嫌な思いをしてしまう。なら、やっぱりここを出て行こう。と、ようやく結論に達した私は、名残惜しむように教授を見るとばっちりと目が合った。
するとすぐさま教授は声を少し張り上げて自分に注目を促し、そのまま毅然とこう言ってくれた。
「講義に参加されない方々はどうぞ退室して下さい。参加の意思がある方々は言葉を慎み講義に集中して下さい」
教授の言葉に誰も何も言わず、しばらく待つも誰も席を立たなかった。私達に向けられていた視線は教授や電子パッドに戻り、その間私は知らず知らず緊張していたのかな。視線を感じなくなると安心して大きく息を吐き、体から力が抜けた。
ちらりと亮介を見ると、相変わらず肘をついて偉そうに皆を見下している。最後尾の最上段にいるから見下してるように見えるのかもしれないけど、少し顎を上げているのだからやっぱり見下しているのだろう。
不機嫌そうな横顔にすこし不安になるけれど、亮介も席を立たないし何も言わないのだから大丈夫ってことだよね。そう勝手に納得して、教授に感謝しながら講義の続きを聞くことにした。
「では、先ほどの続きから……。電子ボードをご覧下さい。倒れている彼らですが、どなたかがおっしゃっていた通り彼らに心はありません」
教授の言葉に皆が小さく反応する。心が無い……という事は人ではない? じゃあ電子ボードに表示されている人は……?
私の疑問に答えてくれているように、教授は再び淡々と話し始めた。
「彼らは人ではないのです。亡骸でもない。彼らは人類の英知の結晶、『アンドロイド』なのです」
『アンドロイド!?』
室内が驚きの声でまた騒がしくなるけれど当然だ。だってアンドロイドだよ? 存在は文献に残っていたけれど、昔の人が見栄を張って作った嘘だと考えられていたのに……。それが本当に存在していたなんて信じられないよ!
「機械である彼らはこの文明が止まったときに共に動きを止めたのでしょう。何故文明が滅びたのかはまだわかりません。ですが彼らを見ると時だけが止まったかのように……突然彼らの日常が止められたように感じます。電子都市には沢山のアンドロイドが残っていましたが、どのアンドロイドもみな慌てた様子は無く、危害を加えられたわけでもなく、本当にただ停止していました。都市も同じです。この都市は攻撃の跡もなく、ただただ時を止めているだけなのです。人の姿だけが何処にもなく、まるで捨てられた都市のようでした」
……どうしてだろう。とても、悲しい。室内が静かになって、それが余計に悲しい。
「あれだけの文明都市を捨てる決断をするには理由があるはずです。もしかするとこの都市は当時大して発展していない都市だったかもしれません。しかしこの都市を調べ、それを生かすことはオアシスの発展に繋がるでしょう。私はこれからもこの都市を調べ続け、オアシスの更なる繁栄に尽力します」
教授の言葉にみんなは感嘆の声を漏らすけれど私はむしろ不安だよ。だって本当に繁栄するのかな。滅びた文明の文化は、本当に私達を豊かにしてくれるの? 豊かにしてくれる文明なら滅びるはずがないよ。
とても好奇心をくすぐられる都市だけれど、この文明はここに留めておくべきなんじゃないかなって、ふと思った。
それからしばらく写真を見たり教授の話しを聞いたりして、あっと言う間に90分の講義は終わってしまった。教室ではまだみんな興奮冷めやらぬようで至る所で議論が巻き起こっている。
私も参加したいけれど、さっきの事もあるし無理だよね。皆が亮介の事を忘れているうちに帰った方が良いよね。そう思い、席を立つと呼応するように亮介も立ち上がった。
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