五十六さんの異世界紀行譚

たらしゅー放送局

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プロローグ

始まりは晴れた空の上で。

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 空がまだまだ曙ではなく、暁色に染まり始めた頃、少年は家の扉を開けました。
 黒いローブに身を包み、ほうきを担いで、ボサボサというか、手入れのなされていないというか、とにかくそんな感じの黒髪を蓄えていて、目はきりりとしていた。
「う、うーん…ちょっとばかしはやすぎましたかな?」
 なんて少しばかり伸びてみたり。この少年こそ、私こと五十六です。
 チュンチュンと鳥も鳴き始めてきて、やがて暁色から曙に変わっていきました。その光景は、昔見た絵本のようで、思わずおお!と歓声をあげてしまいました。まだ朝方なのに。
「んんー、おい、うるさいぞー」
 家からお父さんとお母さんが出てきました。
「近所の事も考えなさいね」
 ふふふと笑いながらお母さんはコツンと弱く頭をげんこつで殴りました。
「すみません」
「息子の口からそんな言葉が出てくるとはな」
 お父さんは涙ぐんでしまいました。すみませんぐらい、昔から言っていたのに。
「息子の独り立ちはうれしいものなのよ」
 と、お母さんが耳打ちしました。そういうものなのでしょうか。残念ながら、私は若干十五歳の少年です。子供を作る事はおろか、結婚も出来ません。
「まぁ、私もそろそろ行きたい訳ですよ」
 とさりげなく言ってみました。
「おぉ、すまんすまん。つい引き止めてしまったな」
 ケロッと笑顔でいいました。もっと他に言うことがあるでしょうに。
「お金持った?、服は大丈夫?防寒着は…」
「全部あります。何歳だと思ってるんですか」
「十五歳よ。息子の歳を忘れる訳ないじゃない」
 なら、もっと信用してもいい歳だというぐらい、わかってくれてもいいと思うんですが…。
 ともあれ、私は出発するためにほうきにまたがりました。
『浮いて』
 そう唱えると、ふわりとほうきが浮きました。
「いってきます」
 後ろを振り返り、私は家族に一言別れの挨拶をしました。
「いってらっしゃい、たまには帰ってきなさい。なにか作ってあげるから」
「ありがとうございます」
「…死ぬなよ」
「死にません。物騒なこと言わないでください!」
 すまんすまん。と平謝りを繰り返しました。
『飛んで!』
 と唱えた瞬間、力強くほうきが空へと舞い上がりました。軽く旋風が起こって、二人の服がたなびきます。…お母さんのスカートが思いっ切り翻っていたような気がしましたが、気のせいと思いたいです。
 ともあれ、ぐんぐんと上空へと上昇し、やがて雲を突き抜けて蒼天が目の前に広がりました。
「いってきまーす!」
 私は私の街に、国に別れを告げました。

 こうして、私の私による、私のための旅物語が始まりました。これから何が起こり、何が始まり、何が終わるのか。いつ終わるのか。それは誰にもわかりません。
 神のみぞ知る、と言ったところでしょうか?まぁ生憎、神様も仏様も信じちゃいないのですが。
「さて、まずはどこに行きますかね」
 と呟きながら、私は大空を悠々と飛びました。
    
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