シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察①

#7

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言わずもがな、盗撮は犯罪だ。

どんな理由があっても許されることじゃない。頭では分かってるものの、自己保身の為に動いた。

まずは見つけやすい所からしらみつぶしに押さえにいく。秋は体育館を目指した。
仮にゲイを見つけてもそいつに恋人がいるとは限らないし、恋人がいるなら暴くのに相当な根気と時間が必要だ。
正直テスト勉強でもここまで頑張ったことがない。ゲイカップルを見つける為にここまでやっている自分は、なんというか……滑稽だ。内心へこみながら、暗くなったテニス部の更衣室に潜入する。

これもしかしたら校則違反バレた方が気が楽なんじゃないカナー……?

せいぜい停学程度、退学まではいかないと思う。
しかし人の気配に、秋は考える事を止めた。
無造作に置かれた荷物の影に身を潜める。部屋に入ってきた二人の顔は、秋は見覚えがあった。

去年同じクラスだった、辻村と藤本という少年だ。
まさか。……いや、そんなはずは……。
身を潜めている秋の存在に気付かず、彼らは周りを警戒してからベンチに座る。そして濃厚なキスを始めた。

「……っ!?」

秋はこの二人をよく知っていた。
────特に、辻村という少年のことは。

驚きのあまり、秋はカメラを用意することも忘れていた。
「やっ……」
その時、辻村は藤本の服を脱がせにかかった。
ここで? 本気で、その先までやるつもりだろうか。ハラハラして事態を見守っていたが、彼らは止まらなかった。
チャックだけ下ろして取り出したものに目を見張った。二人とも、勃っている。
彼らは互いの性器を扱き、掠れた声で甘い言葉を囁き合った。
 
この空間は凄まじく居心地が悪い。できる事なら逃げ出したかった。
「藤本、……入れてもいい?」
さらに紡がれる辻村の言葉に、鳥肌が立った。
いやだ。……そんなの、見たくない。
しかし、心とは裏腹に視線を他の場所に移すことができずにいた。
男同士のセックスも、動画では見たことがあるが生で見たことはない。今まで三組のカップルを見てるものの皆キスまで、そこまで進んだ者はいなかった。

なのに、“よりによって”。
初めて見る相手が……彼だなんて。
「ぅあっ!」
下半身を剥き出しにする藤本に、執拗にフェラする辻村。

いやだ……。

一刻も早く、この場から消えたい。
自分を呪って、ひたすらに耳を塞いだ。




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