シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察②

#1

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この間はとんでもない事を担任にされてしまった。
思い出しただけで死にたくなる。憂鬱だし恥ずかしいけど、諦めていつも通り登校し、今日も自分の教室へ足を踏み入れる。
……だけど一つ、どうしても分からないことがある。

「アキ、おはよー!」

何故矢代は、ゲイのカップルを見つけたいのか。
「アキ頼む、英語の宿題見せてくれ!」
以前気になって訊いたことがあるけど、適当にはぐらかして答えてくれなかった。
「なぁアキ、今度の体育祭の学年リレー出ようぜ! お前なら優勝できるよ、遅刻してきた時の走りっぷりは陸上部なみガッ」
クラスメイトがあまりにうるさいので、秋は彼の首に水平チョップを入れた。でも言われてみればもう体育祭の季節だ。

「アキ~、どうしたんだよ。機嫌わりーの?」
「全然。ちょっとボーッとしてた」
「ボーッとしてて友人に水平チョップを……」

秋は青ざめているクラスメイト、小塚正司に笑いかけた。
「ま、まあいいや。話戻るけど、リレーは自由参加。脚に自信ある奴だけが出て競うやつ。去年も見たろ?」
「あぁ。あの暑苦しい」
「暑苦しくないよ! だから出ようぜ、なっ?」
小塚は手を合わせて、必死に懇願した。しかし素直に頷けないのは理由がある。
「何でそんなに出たいんだよ。お前運動嫌いじゃん」
「や、そうなんだけどさ。もし一位になったら部活の先輩がライブのチケットくれるって言ってたから。もし協力してくれたら、今年の昼飯代は持つ! ただし一日の上限二百円まで!!」
なるほど、やはりそういう魂胆か。
「そんな上手くいくと思えないけど。わかったよ」
秋は基本、学校でも独りで過ごす時間が多かった。
誰かとつるむのが嫌いなわけじゃないが、独りの方が気が楽だし、自由だ。
けど小塚は去年からクラスが同じで、一番気を許してる相手でもある。いつも明るく裏表のない彼なら、多少の無理は聞いてやっても良かった。

「へぇ、お前らリレー出んの?」

小塚の声が大きかったからか、周りのクラスメイト達が二人の元へ寄ってきた。
「おう、一位取るぜ。な、アキ」
「いやいや、言い切るなって……」
張り切ってる小塚と対照的に秋は気まずかった。
「でも楽しみだな、風間がそういうのに参加するのを見んの初めてだから」
クラスメイト達は、小塚よりも秋の方に興味津々だ。彼らの言う通り、学校の催しは巧みに避け続けてきた。それが本当に気楽だったので、期待の眼差しを向けられることは慣れてない。こそばゆい感じがして反応に困る。

「良かったなアキ。みんなお前に期待してるぜ」

秋は心の中で不本意だと唱えた。

「よーし、絶対一位取るぞ!」
「取れなかったらどうする?」
「うおぉぉ!! ライブ!!」
「聞けよ人の話……」




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