シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察②

#3

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でも、どうしたら悪いイメージを改善できるのか。新しい課題に頭を悩ませながら、秋は屋外の渡り廊下へ向かった。柵を乗り越え、小さな非常用の梯子を使うと屋上へと上がることができる。当然普段は誰もいないので、昼寝するのに最高だった。

でもこういうことしてる辺りが避けられる要因なのか……。

登ってから気付いて戦慄する。教室の賑やかな雰囲気では休めなくて校内をウロウロしてた頃、サボりがちな生徒に教えてもらったことがキッカケだった。
いつの間にかその生徒も見なくなったし、環境は変わっていくものだ。

何だかんだ、普通に生活してたらもう六月。
ゲイを見つける事がこんなに大変だとは……。

勿論自分がゲイだと公言してる人間がいたら大事件だ。たちまち噂になるから、皆必死に隠してるんだろう。
とはいえ、ゲイの『可能性』程度の噂すら耳に入らない。
これはきっと普通のやり方じゃ見つからないな。なにか新しい方法を見つけないと。 
購買で買ったタラコのおにぎりと唐揚げを口に詰め込み、コーラで流し込んだ。
   
そんでやっぱ、何としても印象の改善だな。

目立つことが好きなのは認める。でも怖がられるのは本意じゃないし、できれば好印象でいきたい。
あと可愛い後輩に追いかけられてみたい。変な意味じゃなくて。

「……屋上は危険だから立ち入り禁止のはずだぞ」

響く靴音と、今はもう聞き慣れた声。
視線を向けると、そこには担任の矢代が立っていた。
「お前はいつも屋上で何かやらかすんだな。目標の期限、もう少し短縮しようか?」
「うえ……すみません、もう来ません」
しかし彼の言ったことをふと思い返す。
確かに、全ての始まりはここ。彼に取り引きの現場を抑えられたのは屋上だった。
今なら二ヶ月前の自分に言えるのに。
もう少しだけ、性欲を抑えろと。そうすればこんな目には合わなかったのに……。

「今度はお前が梯子を登ってるところが見えてな。俺以外の先生が見つけたら大事になるから本当によせ」
「はーい。担任の矢代先生も被害被っちゃうもんね」
「そうじゃなくて。もし足が滑って落ちたりしたらどうする」

かつてなく強い語調と、鋭い目つきで問われる。
そんな真面目に注意されるとは思わなくて、視線を外してしまった。最終的にまた謝ったが、意識的に話題を逸らそうとした。 

「それはそうと、さ。先生、俺って柄悪い?」
「何だ急に。誰かにそう言われたのか?」

う、さすがに鋭い。
秋は頷いた。矢代も、それに対し頷いて返す。
「柄は悪いが、それ以上に素行が悪いな。今回のことも含め自覚がなかったことに驚きだよ。ひとりで昼休みを過ごしてるから寂しくなったのか?」
矢代の容赦ない言葉に、秋はムッとして言い返した。

「ご心配なく、これはいつものことですよ。俺はひとりが好きなんだ」
「強がりに聞こえるんだよな、それが。高校なんて青春の時期なんだから、もっと友達を作ったらどうだ」
「それはそのとおりだけど、野郎のカップルを捜せなんて命令する人間がそんなこと言える立場かな?」
秋は唐揚げを食べようとしたが、矢代はその瞬間に彼から奪い、唐揚げを一口で食べた。

「おい……」
「ごめんごめん、今度奢るから大目に見てくれよ。今日は忙しくて昼食べてないんだ」




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