シャッターを切るときは

七賀ごふん

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観察③

#1

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多分、俺はこの人を嫌いになりたくないんだ。だからって絶対好きじゃないのに。

どうしてか、この人なら俺をわかってくれる様な気がして……それで何か期待してる。

良い意味でも悪い意味でも、自分は彼に惹かれている。
こんなイかれた思考の人間に出会ったのは生まれて初めてだから。
  
「ふあっ……!!」

矢代は下から強く突き上げると、自身のモノを抜いてしまった。あれほど自分勝手に動いていたのに。何故なのか考えていると、後ろの内腿から膝まで、温かい液体が流れ落ちていた。
「ゴムがないからな。お前がよく見る動画とは違ったか」
「ふざけ……あっ!」
「先にイかせてもらったから、今度はお前の番だよ」
いきなり前を握られて、秋は身を捩る。正直ずっとイきたくて、もどかしかった。
悔しいけれど助かった、という気持ちが浮き立つ。
「敏感で可哀想なぐらいだ。こんなに反応して」
矢代は熱い吐息を秋の耳元に吹きかけながら手を動かす。

「さっき、男が相手なら誰とヤっても気持ちいいだろとか言ってたが……その言葉そっくり返すよ。恋人でもない俺に抱かれて、これだけ喘いでんだから」
「な……」
「女はともかく、本当に嫌だったら男の性機能は働かないものだ。本来、勃起は自分が誰かを抱きたいときにするもんなんだから」

は。
つまり、なにか。

「俺が、アンタに抱かれて喜んでる……って言いたいわけ?」
「喜んではないな。楽しむというのも語弊がある。百歩譲って、興奮というところか?」

矢代は澄まし顔で即答した。即答というか、質問というか。こんな時まで冷静に指摘してくるところも腹立つ。

彼のおめでたい頭の中は今どうなってることやら。俺は多分、便利な性欲処理に認定されたのかもしれない。

怒りで震える。手も、声も。心の中はこれまでにない感情が波打ち、めちゃくちゃに辺りを破壊していた。

「何がそんな気に入らないんだよ。俺はアンタの言う通りにしてきただろ……!」

このまま彼の好き勝手にされたら、悔しくて夜も眠れなそうだ。
撮りたくもないものを撮ったり、知りたくもない関係を知ったり。……彼はどうせ他人事みたいに思ってんだろうけど。

それでも充分、彼の意向に沿って働いた自覚がある。
こんな酷い仕打ちを受けなきゃいけない理由はないはずなのに。




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