シャッターを切るときは

七賀ごふん

文字の大きさ
146 / 154
明察

#6

しおりを挟む



平和だ。いつもの通学路を、いつもの様に歩く。
変わったのは……いや、変わるのはこの道を歩くのも後少しってことぐらいか。

「あ、風間先輩おはようございまーす」

数日が経って、周りは少し落ち着いた気がする。すれ違いざまに挨拶した一年に、秋はひらひらと手を振った。
目に見えるほど何かが変わったわけでもないけど、この景色はきっと最後まで変わらないんだろう。
「風間君」
「あ、苅谷先輩。おはようございます」
背後からの呼び掛けに振り返る。そこには苅谷と、一人の少年が立っていた。
「須佐……さん」
「……」
苅谷の斜め後ろで気まずそうに佇むのは、生徒会長の須佐だった。
学校に来ていたのは良かったが、何故ここに。一番接触しちゃいけないやつだろ!
秋は心底迷ったものの、苅谷に向かって引き攣った笑顔を浮かべる。
「お久しぶりです。元気そうですね」
「うん。朝、生徒会の用事があってね。どうしても外せないやつで……」
苅谷は珍しく言葉に迷いながらもごもごしていたが、やがて馬鹿馬鹿しくなったのか須佐を突き飛ばした。

「ほら、お前も早く言えって」
「痛っ」

秋と鼻先が触れそうなほど近い距離に躍り出てしまった為、須佐は慌てて一歩引いた。
何だろ。こわ……。
しかし逃げる様子はなく、咳払いする。マジで何なのかと待っていると、彼はゆっくり頭を下げた。

「今までのこと、本当にごめん。許してもらえるなんて思ってないけど……償いたいんだ。馬鹿な噂を広めたことや、……君に乱暴したこと全部」

二年に頭を下げている生徒会長に、周りを歩く生徒は皆不思議そうに見ていた。
「……」
それでも彼は頭を上げない。
そういえば、先週より近付いてくる奴が格段に減ったのは彼が手を回したからだろうか。

「いや、そんな。まぁ、あの時は大変でしたけど……」

謝られてるのに何か気まずい。しどろもどろに返してると、須佐は少し顔を上げ心配そうに尋ねた。
「あの日の後、誰かに何かされた?」
「え? ……い、いえ」
一瞬ドキッとしたが、秋は反射的に否定した。彼はこの数日休んでいたらしいから、辻村のしたことは何も知らないのかもしれない。
あれはあいつの独断だったんだろうか。

「風間君、許さなくていいよ。てゆうか……」
「?」

苅谷はヘッドホンを外す。
「謝る時は土下座しろっつっただろうが」
苅谷は声のトーンを落とし、低い姿勢を保っている須佐に強烈な蹴りを入れた。
「うあっ……痛そー……!」
通りすがりの誰かが言った。確かに見事な踵落としで……まともに食らった会長は地面に伏してしまった。
「苅谷さん……やり過ぎじゃ」
「いやいや、優しすぎるぐらいでしょ。君もやりな。今がチャンスだよ」
「お、俺は遠慮しときます」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。   【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。  次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。    巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。

髙槻 壬黎
BL
ヤンデレ執着攻め×鈍感強気受け ユハン・イーグラントには、幼い頃から共に過ごしてきた幼馴染みがいる。それは、天使のような美貌を持つミカイル・アイフォスターという男。 彼は公爵家の嫡男として、いつも穏やかな微笑みを浮かべ、凛とした立ち振舞いをしているが、ユハンの前では違う。というのも、ミカイルは実のところ我が儘で、傲慢な一面を併せ持ち、さらには時々様子がおかしくなって頬を赤らめたり、ユハンの行動を制限してこようとするときがあるのだ。 けれども、ユハンにとってミカイルは大切な友達。 だから彼のことを憎らしく思うときがあっても、なんだかんだこれまで許してきた。 だというのに、どうやらミカイルの気持ちはユハンとは違うようで‥‥‥‥? そんな中、偶然出会った第二王子や、学園の生徒達を巻き込んで、ミカイルの想いは暴走していく──── ※旧題「執着系幼馴染みの、絶対に叶えたい6つの願い事。」

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

処理中です...