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深夜の来訪
#3
しおりを挟む同性の恋人をつくるには今いる場所から一歩踏み出す必要がある。同性愛者の知り合いや繋がりがまるでない以上、自分から動くしかないと確信していた。ゲイが集まる有名な街、店も……興味はあるが、一人で行く勇気はない。創には悪いが、帰ったら別のサイトを探してみよう。
仕事を終え、同僚と軽く呑んだあと、准はひとり誰もいない自宅へ向かった。酔って高揚してるだけかもしれないが、こういう時は特に誰かといたい。
話がしたい。誰でもいいから────。
やばい。俺すごい寂しい人間だ。
クリスマスを一人で過ごすときのような悲しい気持ちに苛まれながら、すっかり住み慣れた自宅のマンションに着いた。見慣れた廊下に壁色、明る過ぎる照明。いつもと変わらない景色。
……のはずだったが、部屋の前には見知らぬスーツ姿の青年が倒れていた。
幻覚だろうか。結構酔っているし、可能性は充分ある。深呼吸の後瞼を擦り、もう一度廊下を見てみる。
「あれ……」
幻覚じゃない。そこにはやはり、青年がいた。
倒れてると言うと語弊があるか。正確には壁に背中をつけて座り込んでいる。そして気持ちよさそうに寝息を立てていた。
いつもの自分ならその場で大きなリアクションをとり、管理人を呼んだだろう。しかしこの時は大して驚かず、その場にしゃがみ込んだ。恐らく酒のせいで舞い上がっている。
「おーい。こんなとこで寝たら凍死するよ」
コートを羽織っていても震えてしまう真冬の夜だ。今日床に転がせておいて、明日家を出たら死体がお出迎え、なんて恐ろしいことにもなりかねない。
そんな想像をしながら肩を揺すると、彼は徐ろに俯いていた顔を上げた。
お……。
そこでようやくわかったことは、彼は思っていたよりも若く、思っていたよりも美形だった。
「う~ん……」
目を擦りながら、眠そうに欠伸する。
努めて冷静に待つ間、もう一つ気が付いたことがあった。
……すごい酒くさい。
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