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ため息混じりに答える。

「ずっと言ってなかったんだけど、お前の縁は俺には見えないんだ。そんで、俺も俺の縁が見えない。そういうもんなのかなって自己解釈してたんだけど」

きっと彼は、俺には見えない透明色の縁を持っている。そしてそれは俺と同じく、第三者からすれば鮮やかな色を持った縁かもしれない。

「俺達の縁は、きっと占うまでもないよ」
「へえ。貴方がそう言うなら、そうなのかな」

幸い腑に落ちた様子で、彼はネオンに染まる海を背にする。
「そう。運命だな」
散々周りの恋愛相談に乗ってきたくせに、いざ自分が口にすると胡散臭さが半端ない。
でもこれ以外に相応しい言葉がない。

「嬉しい。ありがとう」

初恋も、新しく踏み出せる恋愛も、運命の人が相手なんて。それは確かに、 お礼も言いたくなる。

「あ~久宜さん、寒いから早く行こう。何か温かいもの食べたい」
「はいはい。じゃ、駅着くまでに食べたいもの考えとけよ。空那そなた

くしゃりと撫でた髪は細い光をまとい、指からすり抜けた。







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