曖昧なままで

ヒラタメイ

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第十一話

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「俺とお試しで付き合ってみない?」
 そう言われた瞬間、僕はすぐにどうやって断ろうかを考え始めていた。これ以上飯塚くんにダメージを与えたくない。でもここで流されるのも後で彼を傷付けることにならないか?
 どう言おうか悩み口を噤んでいると、彼は焦れたように言葉を重ね始めた。
「和泉くんの嫌なことはしないし、俺のことが嫌になったらすぐに離れていい。今まで通り一緒に授業受けたり、ご飯行ったり、たまにちょっと出かけたり。それだけでいいから」
 いつになく必死な様子で飯塚くんは僕に懇願した。
 気付けば僕は首を縦に振っていた。


 彼の言う通り、僕の飯塚くんの関係は一見何も変わらなかった。しかし、僕の方はそうもいかなかった。
 どうやら僕は彼といると緊張するようになってしまったようだ。彼からの好意を匂わせるような言動を受け取るたびに、僕はどう応えたらいいのか分からず、ただただ言葉を詰まらせるばかりであった。
 そしてもう一つ問題があった。例の夢をたびたび見るようになってしまったのだ。内容は何一つ変わらない。誰もいない街を手を繋いで歩く。そして路地に連れ込まれ、彼の顔が近付いて——。夢はいつもそこで終わる。
 いつの間にか、彼のことを考えない日の方が少なくなっていた。それに気付いたとき、僕は本当にもうどうしたらいいのか分からなくなっていた。
 分からないことをいくら考えても分からないものは分からない。そう結論付けた僕は有識者に助言を求めることにした。
「……っていうことがあったんだけどさ、もう何をどうしたらいいのか分かんなくて」
 ぼやく僕の目の前には呆れた表情をした桜子の姿が。
「なんだよ、その顔」
 ムッとしてそう言うと彼女は深くため息をついた。
「こんな顔にもなるわよ。健はさ、流されやすい性格ではあるけど、なんでもかんでも受け入れられるほど度量の大きな人間でもないじゃん」
「うん、まあそうだね」
 彼女の言葉に僕は複雑な気分になったが、事実であることに間違いはないので大人しく同意することにした。
「飯塚くんだっけ? その子の行動が嫌なわけじゃないんでしょ? じゃあもう健が覚悟決めるだけでしょ」
「……他人事だからそんな簡単に言えるんだよ」
「簡単なことでしょ。彼は健に気があって、健は彼を意識してる。それだけの話でしょ?」
「そう、なのかな」
 本当にそれだけでいいのか? もっと考えるべきことがあるのではないか? そもそも飯塚くんと僕では釣り合わないのでは?
「そうなの。健は余計なこと考えすぎなんだよ。中学のときだってさ……」
 そこから先はいかに僕が事を複雑に考えてきたかを小一時間ほど説明され、言いたいことを言うだけ言った彼女は満足そうに帰って行ってしまった。
 残された僕は頭を抱えるばかりであった。
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