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第1話
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もうすっかり目は冴えていたが、私はベッドに寝転んだままぼーっとゆかりの寝顔を眺め続けていた。
カーテンの隙間から朝の陽光がちらちらと部屋に射し込み、その光に呼応するかのように白さの際だつ顔がぼんやりと浮かび上がっている。
鼻筋がすうっと通っていて、うっとりするほどまつげが長い。眼をつむっているから余計にそう感じるのかもしれない。それに、何故かは知らないけど、彼女からはほんのりと甘い香りが漂ってくる。
無防備な寝姿というものは、普段よりもその人を幼く見せるものだが、彼女の場合は特にその傾向が強く現れていた。同学年の子たちと比べると、素の顔立ちが少し大人びているせいだろうか。
「んん……」
そうこうしている内に外も段々明るくなってきた。部屋に侵入してくる朝日の眩しさに、彼女は小動物のように体を丸めて抵抗しようとしている。
この寮部屋には三人で生活しているが、私以外の二人はどちらも朝が苦手なタイプだ。だから起こしてやるとしたら自分しかいない。朝食の時間は差し迫っている。手早くやってしまおう。
まずは隣の彼女から攻略を始めることにし、肩と腰の辺りに手を当てて前後に揺さぶる。
「ゆかり、朝ー」
「ん……んんー……」
微かに反応はあったが、ゆかりは寝返りを打ちつつ、ハリネズミのようにさらに丸まってしまった。
仕方がないので少し意地の悪い起こし方に切り替える。奥の手を使うしかないようだ。
丸まっているとは言え脇の辺りはがら空きなので、私はそこに指先を這わせてもぞもぞと動かした。
くすぐり始めてから三秒くらいは無反応だったが、じきに我慢できなくなったと見え、唐突にゆかりの体が地上の魚のように暴れ始める。
「や、やめっ、くすぐったいっ」
「はい、おはよう、ゆかり」
否応なく覚醒させられたゆかりは、まだ眠そうに潤んだ瞳を恨みがましく向けてくる。
「も、もう、恭佳ちゃん……普通に起こしてくれればいいのに」
「だって、普通のやり方だと全然起きないからさー」
私は悪びれもせず言い返す。事実なので彼女も反論できない様子だった。
「ま、今度はもう少しましな起こし方を考えとくよ」
肩を二度ぽんぽんと叩き、いい加減な感じで話を打ち切った。あまりぐずぐずしていられないのだ。
二段ベッドの梯子を降り、下の段の様子を窺うと、幸いなことに市佳はもう起き出していた。まだ半分夢の中といった表情だが、私の顔を認識できる程度には頭が働いているようだった。
「おねーちゃん、おはよー……」
「おはよう、市佳」
そう声を掛けると市佳は自力でのそのそとベッドから這い出てきたので、放っておいても問題は無さそうだった。いつもより手間が掛からなくて助かる。
総じて、今日は八十五点くらいの朝かな、と勝手に評価を下しつつ、私はのんびりと制服に着替えることにした。
カーテンの隙間から朝の陽光がちらちらと部屋に射し込み、その光に呼応するかのように白さの際だつ顔がぼんやりと浮かび上がっている。
鼻筋がすうっと通っていて、うっとりするほどまつげが長い。眼をつむっているから余計にそう感じるのかもしれない。それに、何故かは知らないけど、彼女からはほんのりと甘い香りが漂ってくる。
無防備な寝姿というものは、普段よりもその人を幼く見せるものだが、彼女の場合は特にその傾向が強く現れていた。同学年の子たちと比べると、素の顔立ちが少し大人びているせいだろうか。
「んん……」
そうこうしている内に外も段々明るくなってきた。部屋に侵入してくる朝日の眩しさに、彼女は小動物のように体を丸めて抵抗しようとしている。
この寮部屋には三人で生活しているが、私以外の二人はどちらも朝が苦手なタイプだ。だから起こしてやるとしたら自分しかいない。朝食の時間は差し迫っている。手早くやってしまおう。
まずは隣の彼女から攻略を始めることにし、肩と腰の辺りに手を当てて前後に揺さぶる。
「ゆかり、朝ー」
「ん……んんー……」
微かに反応はあったが、ゆかりは寝返りを打ちつつ、ハリネズミのようにさらに丸まってしまった。
仕方がないので少し意地の悪い起こし方に切り替える。奥の手を使うしかないようだ。
丸まっているとは言え脇の辺りはがら空きなので、私はそこに指先を這わせてもぞもぞと動かした。
くすぐり始めてから三秒くらいは無反応だったが、じきに我慢できなくなったと見え、唐突にゆかりの体が地上の魚のように暴れ始める。
「や、やめっ、くすぐったいっ」
「はい、おはよう、ゆかり」
否応なく覚醒させられたゆかりは、まだ眠そうに潤んだ瞳を恨みがましく向けてくる。
「も、もう、恭佳ちゃん……普通に起こしてくれればいいのに」
「だって、普通のやり方だと全然起きないからさー」
私は悪びれもせず言い返す。事実なので彼女も反論できない様子だった。
「ま、今度はもう少しましな起こし方を考えとくよ」
肩を二度ぽんぽんと叩き、いい加減な感じで話を打ち切った。あまりぐずぐずしていられないのだ。
二段ベッドの梯子を降り、下の段の様子を窺うと、幸いなことに市佳はもう起き出していた。まだ半分夢の中といった表情だが、私の顔を認識できる程度には頭が働いているようだった。
「おねーちゃん、おはよー……」
「おはよう、市佳」
そう声を掛けると市佳は自力でのそのそとベッドから這い出てきたので、放っておいても問題は無さそうだった。いつもより手間が掛からなくて助かる。
総じて、今日は八十五点くらいの朝かな、と勝手に評価を下しつつ、私はのんびりと制服に着替えることにした。
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