124 / 324
双凶の蒼と黒 2
しおりを挟む
「ずいぶんと・・・怖い顔をするじゃないか。」
「冗談。なぜ僕が怖い顔をする必要が?」
蒼の言葉を黒は鼻で笑った。
滑る様にイスの背に指を走らせると、音もなくそこに座る。
無造作に横で束ねられた漆黒の長い髪が彼の後を追い、ひじ掛けに頬杖をついた彼の肩をトロリと流れる様は、ただそれだけのことなのに雅やかで・・・見る者の目を惹きつけた。
神妖や妖鬼はその能力が高いほど、見た目にある種の磨きがかかる。
剛健を誉とするものは禍々しい姿をなしていたし、そうでない者は玉を磨き込むようにその内面を反映させ、秀麗さを増していく。
上位の神妖である白妙は、妖艶な美しさ。
加具土命は、健康的に磨きこまれた美しさ。
海神は、静謐とした美しさ。
妖鬼である蒼は、煌びやかで縛られることのない美しさがある。
蒼は、初めて間近で目にする黒に、孤高の美しさを感じていた。
「言葉にされるのは嫌か。君が誰をつがいとしているかはどうでもいい。ボクには関係がないからね。ただ、言ってみたかっただけだ。同じ道をたどる者として・・・・・。」
蒼は張り詰めた空気を感じて神経を尖らせている海神に「大丈夫だ。」と声をかけると、彼の手を掴み指先をもみ始めた。
黒がわずかに放った殺気を感じた海神の指先が、緊張で凍えていることに気づいたらしい。
海神はわずかに眉間に皺をよせたが、表情とは裏腹に蒼の手を自分の指に絡めると、そっと上衣の影に隠してしまった。
「はははっ・・・。少し、お前に興味が沸いた。話がしたい。」
黒は軽く噴き出すようにして笑うと、海神にさりげなく視線を送ったように見えた。
蒼の背筋をわずかな戦慄が走り、彼はほんの一瞬、黒を恐ろしいほど殺気のこもった目で睨みつけると、すかさず自分の背に海神を隠した。
「蒼・・・?」
「黒。一度結界を解け。三毛に海神を預けたい。」
不安そうに名を呼ぶ海神を更に腕で自分の後ろへ押しやりながら、蒼は、堅い声音で黒に告げた。
黒は興味深そうに目を輝かせながら、すぐに結界を解いた。
蒼の呼びかけに応え、三毛が時を待たずして現れる。
「海神・・・ごめん。少し2人だけで話をさせて。三毛・・・海神を頼む。」
「謝る必要はない。必要があればすぐ呼べ。」
扉から出る直前まで指先を触れ合わせたまま、海神は部屋を後にした。
三毛が扉を閉め黒が再び結界を乗せると、蒼はため息をつき、黒が座っているイスのひじ掛けによりかかった。
そのまま黒の顔に息がかかりそうな距離まで自らの顔を寄せていく。
孤高の美しさを誇る黒と煌びやかな美しさで心を奪う蒼・・・・窓辺に揺れる白い花でさえ、ほのかに紅に染まるのではないかと思えてしまえるほど、2人の姿はあまりにも美しすぎた。
だが・・・・・。
「海神に、手を出そうとするな。ボクと2人きりで話がしたいのなら、そう言え。・・・・次はない。」
蒼の口から紡がれたのは、一切の甘さを感じさせない殺伐とした言葉だった。
その言葉は、喉元に切れ味の良い刃をスラリと当てるような殺気を帯び、静かに黒に放たれた。
黒は鼻から小さく吐息をもらし少し顎をそらすと、間近にある蒼の海色の瞳を覗いた。
「・・・随分余裕がないな。・・・そんなに、海神が大事か。」
「・・・・全てだ。ボクは他を、望まない。」
「あけすけだな。」
「悪いか。」
どちらも動こうとはせず、今にも触れ合いそうな距離のまま、重苦しい沈黙に身を委ねている。
先に目をそらしたのは、黒だった。
「いや。少し、うらやましい。・・・・謝罪する。もうしないよ。」
黒曜のような瞳をわずかにそらし、腕で蒼の身体を遠ざけながらこぼれ落ちるように紡がれた黒の言葉に、微かな愁いを感じ、蒼は目を細めた。
「冗談。なぜ僕が怖い顔をする必要が?」
蒼の言葉を黒は鼻で笑った。
滑る様にイスの背に指を走らせると、音もなくそこに座る。
無造作に横で束ねられた漆黒の長い髪が彼の後を追い、ひじ掛けに頬杖をついた彼の肩をトロリと流れる様は、ただそれだけのことなのに雅やかで・・・見る者の目を惹きつけた。
神妖や妖鬼はその能力が高いほど、見た目にある種の磨きがかかる。
剛健を誉とするものは禍々しい姿をなしていたし、そうでない者は玉を磨き込むようにその内面を反映させ、秀麗さを増していく。
上位の神妖である白妙は、妖艶な美しさ。
加具土命は、健康的に磨きこまれた美しさ。
海神は、静謐とした美しさ。
妖鬼である蒼は、煌びやかで縛られることのない美しさがある。
蒼は、初めて間近で目にする黒に、孤高の美しさを感じていた。
「言葉にされるのは嫌か。君が誰をつがいとしているかはどうでもいい。ボクには関係がないからね。ただ、言ってみたかっただけだ。同じ道をたどる者として・・・・・。」
蒼は張り詰めた空気を感じて神経を尖らせている海神に「大丈夫だ。」と声をかけると、彼の手を掴み指先をもみ始めた。
黒がわずかに放った殺気を感じた海神の指先が、緊張で凍えていることに気づいたらしい。
海神はわずかに眉間に皺をよせたが、表情とは裏腹に蒼の手を自分の指に絡めると、そっと上衣の影に隠してしまった。
「はははっ・・・。少し、お前に興味が沸いた。話がしたい。」
黒は軽く噴き出すようにして笑うと、海神にさりげなく視線を送ったように見えた。
蒼の背筋をわずかな戦慄が走り、彼はほんの一瞬、黒を恐ろしいほど殺気のこもった目で睨みつけると、すかさず自分の背に海神を隠した。
「蒼・・・?」
「黒。一度結界を解け。三毛に海神を預けたい。」
不安そうに名を呼ぶ海神を更に腕で自分の後ろへ押しやりながら、蒼は、堅い声音で黒に告げた。
黒は興味深そうに目を輝かせながら、すぐに結界を解いた。
蒼の呼びかけに応え、三毛が時を待たずして現れる。
「海神・・・ごめん。少し2人だけで話をさせて。三毛・・・海神を頼む。」
「謝る必要はない。必要があればすぐ呼べ。」
扉から出る直前まで指先を触れ合わせたまま、海神は部屋を後にした。
三毛が扉を閉め黒が再び結界を乗せると、蒼はため息をつき、黒が座っているイスのひじ掛けによりかかった。
そのまま黒の顔に息がかかりそうな距離まで自らの顔を寄せていく。
孤高の美しさを誇る黒と煌びやかな美しさで心を奪う蒼・・・・窓辺に揺れる白い花でさえ、ほのかに紅に染まるのではないかと思えてしまえるほど、2人の姿はあまりにも美しすぎた。
だが・・・・・。
「海神に、手を出そうとするな。ボクと2人きりで話がしたいのなら、そう言え。・・・・次はない。」
蒼の口から紡がれたのは、一切の甘さを感じさせない殺伐とした言葉だった。
その言葉は、喉元に切れ味の良い刃をスラリと当てるような殺気を帯び、静かに黒に放たれた。
黒は鼻から小さく吐息をもらし少し顎をそらすと、間近にある蒼の海色の瞳を覗いた。
「・・・随分余裕がないな。・・・そんなに、海神が大事か。」
「・・・・全てだ。ボクは他を、望まない。」
「あけすけだな。」
「悪いか。」
どちらも動こうとはせず、今にも触れ合いそうな距離のまま、重苦しい沈黙に身を委ねている。
先に目をそらしたのは、黒だった。
「いや。少し、うらやましい。・・・・謝罪する。もうしないよ。」
黒曜のような瞳をわずかにそらし、腕で蒼の身体を遠ざけながらこぼれ落ちるように紡がれた黒の言葉に、微かな愁いを感じ、蒼は目を細めた。
0
あなたにおすすめの小説
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
王都一番の魔導修理屋
あめとおと
ファンタジー
魔法と魔導具が当たり前の世界。
だが、それらを扱えるのはほとんどが貴族だけだった。
王都の片隅で暮らす平民の青年 リクト は、魔力量が少なく魔法もろくに使えない。
そのせいで魔導学院を落第し、いまは貧乏な魔導具店の雑用係。
だがリクトには、誰も気づいていない才能があった。
それは――
「魔導具の構造が、なぜか全部わかる」
壊れた魔導具を直し、
効率を上げ、
誰も作れなかった道具を作る。
やがてその技術は、王都の貴族社会や魔導師団を巻き込み、
世界の魔導理論さえ揺るがしていく。
これは――
魔法が使えない平民が、魔導の常識を塗り替える物語。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
私は私で幸せになりますので
あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。
ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。
それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。
最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる