彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~

utsuro

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華辻 1

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 先ほど出会ったいかにもめずらしい生き物たちの話で真也しんやたちが盛り上がっていると、小男が再び船室の戸を開けた。

 「さぁ。いよいよ街の華辻はなつじに入りますよ。入ってしまえば危険な生き物はいない。もう外に身体を出していただいても大丈夫です」

 その言葉に、真也しんやたちが船の進行方向を見ると、暗闇に浮かぶ温かな光で作られた巨大な島のようなものが目に飛び込んできた。

 そびえたつ黒い門をくぐり、細かく枝分かれしている水路の一つに進むと船は走る速度をずいぶんと緩やかなものに変えた。

 手を伸ばせば触れられるほど建物に近いすれすれの位置を進みながら、何艘もの小舟がぶつかることなく器用に行き交っている。

 ほとんど目の高さに岸をみながら、真也しんやたちは色とりどりの情景に目を輝かせた。

 いくらも進まないうちに、華やかな女の声がそこかしこから船目掛けて降り注いでくる。

 どうやら狭い水路の両側に立ち並ぶ建物は全て屋台のような店で溢れているようだ。
 女たちが我先にと、しきりに自慢の店の品を売り込んでくる。

 「ここは随分ときらびやかだね。それ、3つもらおう。・・・ありがとう。釣りはいらないよ」

 色とりどりの花がぎっしり詰まった小さな花籠をひと籠、艶やかな鱗を持つ細腕の女から受け取り、銀子を袋から豪快に掴んで惜しげなく振る舞っているあおはとても楽し気だ。

 思いがけず大金を受け取った女は、白目のない真っ黒な目を喜びでキラリと輝かせた。

 「なんて気前のいい兄さんなんだ。みんな礼を言いな」
 
 こんな調子であおが数件の店からいろいろな物を買い込むものだから、船内に備え付けられた卓の上はあっという間にいっぱいになってしまった。

 「お客人。そんなに豪快に振る舞われていては変に人目を引いてしまいますぞ」

 少し不安げに耳打ちする小男に、あおは少し首をかたむけた。

 「心配してくれるの?随分と優しいじゃないか。ほら、きみも食えよ」

 言いながら、ほわりといい香りの湯気を立てている汁物の器を渡してきたあおに、男は戸惑いから眉間にしわをよせた。

 「私は・・・」

 「余計な口は利くなよ。ボクは今、君のおかげで凄く気分がいいんだ。気に入った者と旨い物を食えるなんて、ボクにとっては最高に贅沢なことなんだから。つき合えよ」

 男は戸惑いながらも素直にそれを受け取る。

 「君達も腹が減ったろう。熱いうちに食おう」
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