彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~

utsuro

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中辻 2

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 「君達には残酷なことのように聞こえるかもしれないが、オロシの餌食にされるものは、決して無駄に命を終えているわけではない。オロシは彼らの中で特に大きな個体だけを襲う。小さくすばしっこい個体が選りすぐられ生き延びる事で、子孫にはより強くその特徴が受け継がれていくことができるし、それに・・・」

 ゆいは少し間を空けてから口にした。

 「身体が小さく力こそ強くはないが、実は彼らの妖力は低くはないんだ。彼らを喰らえばオロシの力は上がり、より強固な卵の守り手となってくれる。粗末になる命など一つもない。だから・・・」

 「そんなに哀しそうな顔をしないで」と光弘みつひろの耳元に優しくささやくと、ゆいは柔らかな身体を滑らかな光弘みつひろの首筋にすり寄せた。

 ゆいの言葉を胸に、真也しんやたちは光の明滅する水面に再び静かに視線を落とす。

 「共にあらずとも、実を結ぶものはあるのだろうが・・・・・・」

 意図せず口に出してしまったのだろう。
 海神わだつみはわずかに顔を上げると、それきり口を閉じてしまった。

 海神わだつみの言葉は静かなものであったが、不思議と哀しく耳に残るものがあった。

 ふいに、真也しんやの脳裏を、例の不思議な景色がかすめていく。

 細く高い真っ白な塔のある情景が頭をよぎったのは、刹那といえるほど儚い間のことであった。
 だが、迫るその情景はあまりにも鮮やかで、ヒヤリとするほど生々しい。

 大切なことをどうしても思い出せず失ったままでいるようなもどかしい喪失感と、こめかみの鈍い痛みが、真也しんやの背にじわりとした居心地の悪い汗を冷たくにじませた。

 「真也しんや

 都古みやこに名を呼ばれ、真也しんやは我に返る。
 さきほどまでの頭痛は跡形も残さず、まるで逃げるかのようにさっさと消え去ってしまった。

 知らぬ間に、都古みやこを支えていた手に力がこもってしまっていたのだろう。

 頭の奥がぼんやりと霞み、何か触れそうであったものが勢いよく指のすきまをすり抜けていく虚しさに密かに襲われながら、真也しんやは慌てて都古の肩に置いていた手を離した。
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感想 8

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みんなの感想(8件)

志賀雅基
2023.02.12 志賀雅基

utsuroさん、志賀です。

書かれるくらいに快復されたことを御慶び申し上げます。そして自分もその場にいるかの如く繊細に、そして想像力を掻き立てられる奇麗な光景の描写。今回も見事に酔わせて貰えました。更には無駄な生命は無いのだと光弘を慰める癒の言葉が、思わず落涙するほど優しく、でも鋭く刺さりました。

なんて愛おしい物語でしょうね。
堪らなく好きです。ありがとうございます。

2023.02.14 utsuro

志賀さん。

いつもご心配いただき、本当にありがとうございます(*^▽^*)
さらには、この身に余るお褒めの言葉。
本当に嬉しいです。
胸に染みました(´;ω;`)

今後ともよろしくお願いします。

解除
志賀雅基
2022.11.08 志賀雅基

utsuroさん、お邪魔致します。志賀です。

愉しみと不安を交互によぎらせながら、筆がのるまで待っておりました。お加減はいかがでしょうか。久しぶりに繊細かつ完成された心地良い闇(?)の世界を味わえて嬉しく幸せです。
ありがとうございます。

2022.11.08 utsuro

ぅわぁあああ(≧▽≦)志賀さん!

そのようにおっしゃっていただけて、凄く凄く嬉しいです!
音が耳の奥で飛び散ってしまってどうも言葉が上手く浮いてこなくて( ̄▽ ̄;)大分時間がかかってしまいました。

志賀さんはお加減いかがですか(#^^#)
朝晩は大分冷え込むようになってきたので、お身体大事にしてくださいね!

解除
志賀雅基
2022.10.22 志賀雅基

お身体の具合はどうでしょうか。志賀です。
ご無理はされないで下さいね、いつまでだって愉しみに待っております故。
もしお読みになれそうなら、ご自身の「近況ボード」を覗いて下さると助かります。

2022.10.24 utsuro

志賀さん。

いつも嬉しいコメントをありがとうございます(*^▽^*)

現在強烈なスイマーが不定期に襲ってきていて、まともな生活が送れていないので、起きていられている時にちょびちょび進めている次第です(;´Д`)
へなちょこですみません。

そして、こちらの近況ボードのチェックをすっかり忘れておりましたm(__)m←土下座
本当にごめんなさいです。

解除

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