神様でごめんなさい。

桜ノ音音

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二・神様に家ができた?

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繋がれた手をひかれて数分。
女……香は立ち止まった。

「ここが、私の家です」

下に向けていた顔を上げる。
予想以上だった。
こいつ…金持ちなのか?
まあ、豪邸だったわけで。
広い庭には沢山の花が植えてあった。
一輪一輪きちんと手入れされていて、枯れているところはない。

「さあ、入ってください」

口を開けて観察していると、いきなり声をかけられてビクッとなってしまった。
「あ、びっくりしました?」と、香は悪戯な笑みを見せると、ドアを開けてくれる。
恐る恐る入ってみたが、やはりすごかった。
玄関は広く、天井が物凄く高い。

「さあ、今日からここがあなたの家ですよ」

え…っと、この大きな家が…?
目を真ん丸にしながら、香を見る。
香はニコッと笑むと、部屋の紹介をし始めた。

「ここがお風呂でー、あっ、あなたの部屋は…」
「俺に…部屋をくれるのか?」

疑問を溢すと、「当たり前でしょ」と言う言葉が返ってきた。
そのまま、部屋を指差す。
当たり前なのか?
てか…俺の部屋デカくね?

「そういえば…お前親は…」

ふと思ったことを口にだす。
人間には「親」がいるはず。
さっきから見当たらないが、出掛けているのだろうか?

香は、考え込む俺を横目に見て、どうでも良さそうに口を開いた。

「そうそう帰ってきませんよ。
母も父も、仕事でいっぱいいっぱいなんです」

ということは…

「お前も独りだったのか?」

香は肩を揺らすと小さく頷いた。
気に触れてしまっただろうか、少し震えている。

「お前も俺も、もう独りじゃねえよ」

慰めたわけじゃなくて、本当の気持ちが口にでてきた。
「え?」と、びっくりして見開かれた香の目がこちらに向けられる。

「お前が俺を助けてくれたから、これからは『二人』だ」

香の目が潤んでいた。
なぜだ…?嫌だったのか?

「あ、その…傷つけたか?」
「ううん」

震えた声が返ってくる。

「嬉しいから、泣いてるの」

嬉し泣き?俺の言葉が嬉しかったのか?
泣いている香を放ってはおけず、自分の服を少し千切って、差し出した。
涙を拭くものは、俺が持っているものでこれ以外ない。

「ありがとう…」

香は、変な女だ。
得もしないのに、俺を助けて、俺の言葉で涙を流して。
でも、ほんの少し、嬉しかった。












香が落ち着き、涙も止まった頃。
閉じていた口をやっと開き、香はニコッと笑った。

「明日は早いから、もう寝ましょう」

寝室を指差す香。
寝室が3つあるってどういうことだ。

「明日が早いとはどういうことだ?」
「学校ですよ?高校!!!」

学校…?
俺に関係あるか?
俺の疑問を察してか、香は呆れたような顔をした。
おい、なんだよその顔は。

「あなたも行くんですよ、学校!!」

は?
…おい、まてまて!!
神だぞ!?人間じゃねえぞ!?

「俺、高校生じゃねぇよ?」
「え、同い年にしか見えないんですけど」

なんだと…?
高校生の何倍生きてると思ってんだよ。

「俺、800歳なんだけど」

一瞬、空気が固まった。
直後、香はヘラッとすると「またまたぁ」と笑って見せる。
いや、マジなんだけど…

「だから、俺神様なんだよ」
「な、何言ってるんですか?とりあえず頭冷やしましょ!
お、おやすみなさい」

香は引きつった顔を見せると、ドアノブに手をかけ、寝室に行ってしまった。
頭を冷やす?いや、冷えてんだけど。

やっぱ信じてくれないかぁ、と諦めながら、もう一つの寝室に足を運ぶ。


てか、学校って何すんだ?
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