10 / 30
10話 変化
人が充実し、仕事の分担や出勤時間がハッキリされると、今度はサザンカとクレパスの悪い箇所が目立った。いや、浮き彫りにされた、の言い方が正しいかな?今までは、人数不足を言い訳に、『遅れた』や、『出来ない』がまかり通ったが、人材が充実した今、彼女達のそれは、ただの遅刻であり、サボりになった。
「いいわよビオラ。サザンカは今まで頑張って来たんだし、人が増えたから気が抜けちゃったのよね」
私はフォローすると、サザンカに仕事に入るように声を掛けた。
一礼し、慌てたように持ち場に行くサザンカ。
「奥様はお優しいですね」
「あはは……そうかな?」
そんなつもりは無いんだけど、私がいない時代から、ここでアレン様に尽くして来てくれた人達だから、無下に出来ないんですよね。
「奥様、アレン様は本日、仕事が早く終わり、もうすぐお戻りになられます」
「え、本当?ならーー」
「夕食をご一緒出来るよう、料理人には話を通しております」
おお…!やっぱりスマルトも優秀ね!
今やクレパスを抜いて、皆の頼れるリーダー化してます。アレン様も、スマルトに補佐を任したりしているし……素晴らしいですね。
やっぱり、私の心を読む力は本物です。
***
「……大分、屋敷の雰囲気が変わったな」
夕食時、アレン様はダイニングルームを見渡しながら、そう呟いた。
「お陰様で好きにさせて頂いております」
嫁いだ当初に比べれば、あのホラー映画に出てくる屋敷と違って、薄汚れた外壁は全て塗り直し、割れた窓ガラスも修繕して、お庭のボーボーに生えた草木もお手入れし、屋敷の中も全て清掃!壊れていた物品はラドリエル公爵家の財力を使って一掃し、比べ物にならないくらい!素敵なお家に生まれ変わりました!
ダイニングルームだって、ボロボロの机と椅子から全て一新したんですよ。
「あ、でも……調子に乗って、結構お金使っちゃったんですけど……」
折角なので良い物をと、高額な買い物をしてしまった。
「……好きにすればいい」
渡した領収書に目もくれず、アレン様は食事を進めた。
それは、私が無駄な買い物をしないって、信頼してくれてるってこと?
「お金は腐るほどある」
……言ってみたーい、そんな台詞。
あ、そっか。私、そんな方の妻になったんでした!
「ふふ」
「何がおかしい?」
「いえ。アレン様とこうして食事をとるのが初めてなので、とても嬉しいんです」
「……」
無表情で黙り込む旦那様。でも、それは照れているだけなんだって、何となく分かるようになりました。
「…………仕事が少し落ち着いたから、明日からは暫く、夕食は一緒にとれるーーと、思う」
「!本当ですか?嬉しいです!」
こんな広いダイニングルームで一人で食事をするのは寂しいし、アレン様と親睦を深めるチャンスです!
「……僕と一緒に食事して喜ぶなんて、君以外いないよ」
「そーーーうでしょうね」
そんな事ありませんよ。と言いたかったんだけど、それは嘘だとバレるなと思い、正直に肯定した。
「……」
何故か、傍で待機している執事やメイドの皆さんの方が、ピリッと空気が張り詰めた気がします。
悪魔の公爵相手にそんな事言っていいのか?怒り狂った旦那様に、奥様が殺されてしまうじゃないか?とか、考えている人がいるのかもしれない。
今までアレン様にこうして話しかける相手なんて、いなかったでしょうしね。
「……そうか」
無表情で頷くアレン様。
あれ?何故でしょう?いつも通りの無表情なのに、私の目には凄い凹んでいるように見えます。
私は口元をナプキンで拭くと、椅子から立ち上がり、アレン様の近くまで歩いた。
「アレン様」
隣の席に座り、そっと手に触れる。
《やっぱり……僕は皆に嫌われているんだな……》
凄い凹んでる…!いや、嫌われてると言うよりかは、怖がられているって言い方の方が正しい気がしますけどーーて、そうじゃなくて!
「アレン様、お願いがあるんです」
「……お願い?君はお願いばかりだな」
私を睨み付けるように言うアレン様のお姿は、まるで私のお願いに嫌気がさしているように見える。が、実際はーーー
《何でも言って欲しい。カリアの願いなら、僕は何でも叶えるよ》
ーーーうん、どうして本心と、表の言葉と態度にこんなに違いがあるのでしょう?不思議ですね。
「ほんの少しでもいいんです……アレン様が思ったことを、素直に、素直に(大切なので二回目)口に出してみて欲しいんです」
「…………素直に?」
心底不思議そうな顔するの、止めてもらえます?
自分が素直じゃない言葉を発してるの、分かって無いんですか?
アレン様はもう少し、素直に言葉を言えるようになれば、嫌われなくて済むんです!
「アレン様、私が好きですか?」
「ーーー」
《好きに決まってる。僕のお嫁さんなんだから、大切だし、可愛いし、綺麗だし、愛してる!何故急にそんなことを聞くんだ?》
「……言う必要は無い」
《結婚式で誓いの言葉を言い合ったばかりなのに……まさか、もう僕の事を嫌いになったのか?!だから、僕に確認を?!》
違いますし発想が斜め上ですし、そんな心の声と正反対の突き放す言葉を口にする意味もわかんないですけど!駄目だこの人……!私がしっかり、教育していかなくちゃ!
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです
阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」
そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。
社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。
そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。
過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。
そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。
「君が隣にいない宮廷は退屈だ」
これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。