あの夏の日に起きたことは幻ではなかった

劉竜

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幻と奇跡と別れ

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翌日、仕事から帰ってくると、永莉の姿がまた見えるようになってきた。朝出勤前に見たときはぼんやりとしていたが、今は上半身はほぼぼやけないて見えている。永莉の方も「上半身が軽い」と言っていたので、この調子なら姿が見えるようになるのはそう先の事ではないだろう。そして食事をしていると、「私、何で姿が見えなくなっちゃったんだろう?」と言ってきたので、自分が知っている範囲であの日聞かされたことを話す。永莉は心臓の発作で死んだこと、その後自分が一度だけ永莉を見たことを。
 話が終わると永莉が「私、死んじゃってたんだ」と呟いていた。そのあとに「死んじゃってたんだなら、姿なんて見えないし、お腹も減らないよね」と続いたので、思わずどこにいたのか聞いてみた。すると、「ずっと和也の近くにいた」と返ってくる。あの日、私が永莉を見たときは消えてしまったが、そのあとずっと私にくっついていたらしい。そして一度私を見失ってさまよっていると、偶然私が家に帰って来るところを見つけ、再びついてきたらしい。そんなことを話していると、段々永莉の下半身も見えるようになってくる。食事後には全身がハッキリとわかるようになっていた。
「やっと体全体が動かせるようになった」
永莉はそう言いながら屈伸したり軽く駆け足している。音がでないのは彼女が霊と同じだからだろう。「ありがとう、和也!」そう言いながら永莉が抱きついてくる。はたから見たら父親と娘同然だった。いや、段々永莉の方も大きくなってきている。このままだと明日の朝には見た目が五十代の人と変わらないくらいになりそうだ。「あとは、私の初恋を叶えるだけ」そう呟き、私の方を向いてきた。彼女は緊張しているようだった。私は「こんな時間にその人のところに行くのは迷惑じゃないか?」と言ったが彼女は「大丈夫、私は初恋の人のところにもういるもん」なんて言ってくる。私はその言葉の意味を理解するのに少しばかり時間がかかった。そして理解した。いっそのことそのまま理解出来なかったらと思ったほどだった。なにせ年甲斐もなく顔を真っ赤っかにしてしまったからだ。
「和也、私ね、ずっと貴方のことが気になっていたの。それでね、今回偶然にも会えたんだけど、やっぱり貴方が好きなんだってことがわかったの。だから、貴方の返事を聞かせて?」
と少し顔を赤くしながら聞いてくる。彼女もそれなりの場所に行ったことがあるのだろう。もしくはテレビをどこかで見ていたのかもしれない。とにかく私はこれが彼女の告白だと思い、こう答えた。
「永莉、僕も君のことはあの日の前から好きだったよ。今、君に会えて、思いを伝えられて本当に嬉しい。永莉が生きていないのが残念だけど、ずっと一緒にいたい」
この答えを聞いた永莉は予想外の答えが帰ってきたみたいで、「本当?」と繰り返していた。私はそのたびに「本当さ」と答えていた。
 永莉はそのあと成仏した。成仏する前に「やっと成仏出来るよ。和也、私、和也に思いを伝えられて良かった。きっともう会うことは無いけど、忘れないでね。私はずっと和也と一緒にいるから!さようならなんて言わないから!またねも言わないから!だけど、これだけ言いたいの。…和也、頑張って!」とだけいっていった。言われなくても、永莉の事は忘れない。この日あったことも忘れない。永莉はずっと一緒にいる。肉体は無くても、魂は無くても、永莉との思い出っていうものが私の心にあるかぎり永莉はずっと一緒にいる。
 私もさようならは言わない。かわりに絶対、また会おうと言う。聞く人は誰もいないが。
 
 こうして私の夏と初恋は終わった。今私は会社を立て直すために奮闘している。永莉との会話で得た方法を参考に試行錯誤している最中だ。きっと最後は会社を立て直すことができる。そのあとは余生を過ごそう。そして、永莉に会いに行こう。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

関谷俊博
2016.08.16 関谷俊博

初恋の人との出会いですか。いいなあ。しかし、相手は◯◯。続き、待ってます。

2016.08.16 劉竜

感想、ありがとうございます。今回、初めて恋愛物を書いてみたのですが、次は一発ものではなく、少し長めの話を書いてみようと思います。

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