2 / 2
幻と奇跡と別れ
しおりを挟む
翌日、仕事から帰ってくると、永莉の姿がまた見えるようになってきた。朝出勤前に見たときはぼんやりとしていたが、今は上半身はほぼぼやけないて見えている。永莉の方も「上半身が軽い」と言っていたので、この調子なら姿が見えるようになるのはそう先の事ではないだろう。そして食事をしていると、「私、何で姿が見えなくなっちゃったんだろう?」と言ってきたので、自分が知っている範囲であの日聞かされたことを話す。永莉は心臓の発作で死んだこと、その後自分が一度だけ永莉を見たことを。
話が終わると永莉が「私、死んじゃってたんだ」と呟いていた。そのあとに「死んじゃってたんだなら、姿なんて見えないし、お腹も減らないよね」と続いたので、思わずどこにいたのか聞いてみた。すると、「ずっと和也の近くにいた」と返ってくる。あの日、私が永莉を見たときは消えてしまったが、そのあとずっと私にくっついていたらしい。そして一度私を見失ってさまよっていると、偶然私が家に帰って来るところを見つけ、再びついてきたらしい。そんなことを話していると、段々永莉の下半身も見えるようになってくる。食事後には全身がハッキリとわかるようになっていた。
「やっと体全体が動かせるようになった」
永莉はそう言いながら屈伸したり軽く駆け足している。音がでないのは彼女が霊と同じだからだろう。「ありがとう、和也!」そう言いながら永莉が抱きついてくる。はたから見たら父親と娘同然だった。いや、段々永莉の方も大きくなってきている。このままだと明日の朝には見た目が五十代の人と変わらないくらいになりそうだ。「あとは、私の初恋を叶えるだけ」そう呟き、私の方を向いてきた。彼女は緊張しているようだった。私は「こんな時間にその人のところに行くのは迷惑じゃないか?」と言ったが彼女は「大丈夫、私は初恋の人のところにもういるもん」なんて言ってくる。私はその言葉の意味を理解するのに少しばかり時間がかかった。そして理解した。いっそのことそのまま理解出来なかったらと思ったほどだった。なにせ年甲斐もなく顔を真っ赤っかにしてしまったからだ。
「和也、私ね、ずっと貴方のことが気になっていたの。それでね、今回偶然にも会えたんだけど、やっぱり貴方が好きなんだってことがわかったの。だから、貴方の返事を聞かせて?」
と少し顔を赤くしながら聞いてくる。彼女もそれなりの場所に行ったことがあるのだろう。もしくはテレビをどこかで見ていたのかもしれない。とにかく私はこれが彼女の告白だと思い、こう答えた。
「永莉、僕も君のことはあの日の前から好きだったよ。今、君に会えて、思いを伝えられて本当に嬉しい。永莉が生きていないのが残念だけど、ずっと一緒にいたい」
この答えを聞いた永莉は予想外の答えが帰ってきたみたいで、「本当?」と繰り返していた。私はそのたびに「本当さ」と答えていた。
永莉はそのあと成仏した。成仏する前に「やっと成仏出来るよ。和也、私、和也に思いを伝えられて良かった。きっともう会うことは無いけど、忘れないでね。私はずっと和也と一緒にいるから!さようならなんて言わないから!またねも言わないから!だけど、これだけ言いたいの。…和也、頑張って!」とだけいっていった。言われなくても、永莉の事は忘れない。この日あったことも忘れない。永莉はずっと一緒にいる。肉体は無くても、魂は無くても、永莉との思い出っていうものが私の心にあるかぎり永莉はずっと一緒にいる。
私もさようならは言わない。かわりに絶対、また会おうと言う。聞く人は誰もいないが。
こうして私の夏と初恋は終わった。今私は会社を立て直すために奮闘している。永莉との会話で得た方法を参考に試行錯誤している最中だ。きっと最後は会社を立て直すことができる。そのあとは余生を過ごそう。そして、永莉に会いに行こう。
話が終わると永莉が「私、死んじゃってたんだ」と呟いていた。そのあとに「死んじゃってたんだなら、姿なんて見えないし、お腹も減らないよね」と続いたので、思わずどこにいたのか聞いてみた。すると、「ずっと和也の近くにいた」と返ってくる。あの日、私が永莉を見たときは消えてしまったが、そのあとずっと私にくっついていたらしい。そして一度私を見失ってさまよっていると、偶然私が家に帰って来るところを見つけ、再びついてきたらしい。そんなことを話していると、段々永莉の下半身も見えるようになってくる。食事後には全身がハッキリとわかるようになっていた。
「やっと体全体が動かせるようになった」
永莉はそう言いながら屈伸したり軽く駆け足している。音がでないのは彼女が霊と同じだからだろう。「ありがとう、和也!」そう言いながら永莉が抱きついてくる。はたから見たら父親と娘同然だった。いや、段々永莉の方も大きくなってきている。このままだと明日の朝には見た目が五十代の人と変わらないくらいになりそうだ。「あとは、私の初恋を叶えるだけ」そう呟き、私の方を向いてきた。彼女は緊張しているようだった。私は「こんな時間にその人のところに行くのは迷惑じゃないか?」と言ったが彼女は「大丈夫、私は初恋の人のところにもういるもん」なんて言ってくる。私はその言葉の意味を理解するのに少しばかり時間がかかった。そして理解した。いっそのことそのまま理解出来なかったらと思ったほどだった。なにせ年甲斐もなく顔を真っ赤っかにしてしまったからだ。
「和也、私ね、ずっと貴方のことが気になっていたの。それでね、今回偶然にも会えたんだけど、やっぱり貴方が好きなんだってことがわかったの。だから、貴方の返事を聞かせて?」
と少し顔を赤くしながら聞いてくる。彼女もそれなりの場所に行ったことがあるのだろう。もしくはテレビをどこかで見ていたのかもしれない。とにかく私はこれが彼女の告白だと思い、こう答えた。
「永莉、僕も君のことはあの日の前から好きだったよ。今、君に会えて、思いを伝えられて本当に嬉しい。永莉が生きていないのが残念だけど、ずっと一緒にいたい」
この答えを聞いた永莉は予想外の答えが帰ってきたみたいで、「本当?」と繰り返していた。私はそのたびに「本当さ」と答えていた。
永莉はそのあと成仏した。成仏する前に「やっと成仏出来るよ。和也、私、和也に思いを伝えられて良かった。きっともう会うことは無いけど、忘れないでね。私はずっと和也と一緒にいるから!さようならなんて言わないから!またねも言わないから!だけど、これだけ言いたいの。…和也、頑張って!」とだけいっていった。言われなくても、永莉の事は忘れない。この日あったことも忘れない。永莉はずっと一緒にいる。肉体は無くても、魂は無くても、永莉との思い出っていうものが私の心にあるかぎり永莉はずっと一緒にいる。
私もさようならは言わない。かわりに絶対、また会おうと言う。聞く人は誰もいないが。
こうして私の夏と初恋は終わった。今私は会社を立て直すために奮闘している。永莉との会話で得た方法を参考に試行錯誤している最中だ。きっと最後は会社を立て直すことができる。そのあとは余生を過ごそう。そして、永莉に会いに行こう。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
初恋の人との出会いですか。いいなあ。しかし、相手は◯◯。続き、待ってます。
感想、ありがとうございます。今回、初めて恋愛物を書いてみたのですが、次は一発ものではなく、少し長めの話を書いてみようと思います。